戦略コンサル業界の現状
かつては、欧米で開発された問題解決の手法をセールスポイントとしていた戦略コンサルティングファームですが、近年は、顧客企業側に戦略コンサルティングファームに仕事を依頼する経験が蓄積されてきて、上手に戦略コンサルティングファームを使いこなすノウハウが付いてきています。
また、コンサルティングスキルを指導するビジネススクールが人気を博したり、関連するビジネス書籍が容易に入手できるようになったことで、多くのビジネスマンが『MECE』『ロジックツリー』『フレームワーク』『ゼロベース思考』など戦略コンサルティングの基本的な知識や概念を習得するようになっています。
さらに、戦略コンサルティングファームを経たコンサルタントOBが、顧客側である事業法人やファンドなどの経営層・中枢本部のスタッフポジションに転職したり、独立・起業して小規模なブティック型のコンサルティングファームを設立することも増えてきており、顧客側の要求水準は以前よりも高くなっています。
したがって、以前のようなゼネラルな問題解決手法などのみをセールスポイントとしても、ビジネスにはなりにくくなってきており、コンサルティングプロジェクトの結果、実際にどんな成果をもたらすのかがより厳しく問われるようになっています。
この結果、結果が数字として見えるようなプロジェクト、あるいは自社では全く未経験で外部に頼るしかないプロジェクトなど、難易度が高くかつ特殊な局面で選択的にコンサルティング会社が使い分けられるようになってきています。
◆成果が直接的に数字に表れやすいコスト削減やBPRといったプロジェクト
◆現在は少ないですが、数年前には多く見られた投資ファンドによる企業買収などの際のビジネスデューデリジェンスや事業再生系のプロジェクト
◆(特にグローバルファームでは)グローバル化に伴う市場調査・提携先候補探し・進出プラン策定・実行支援・組織作り等のプロジェクト
などが、昨今多いプロジェクトと言えるでしょう。
戦略コンサルタントになることで何が得られるか?
一般に戦略コンサルタントは激務と言われており、ハードワークでプレッシャーも強い職業ですが、コンサルタントたちは何を目指しているのでしょうか?何を得ようとしているのでしょうか?モチベーションの源は何なのでしょうか?
◆顧客指向を徹底し、感謝されることでの自己実現
- コンサルティング会社では、あらゆる場面で顧客指向を徹底することが求められており、顧客の利益に反するときにはたとえ顧客側のキーパーソンの意思であっても、反対意見を述べることが奨励されます。
- また、コンサルタントは自分の提供する付加価値によって顧客から感謝され、それが次のより高い付加価値への糧になる、というプロセスにやりがいを持っています。この高いレベルで自己実現が、モチベーションの源泉となっています。
◆ビジネスで求められる人材であり続ける能力が身に付く
- グローバルな視野や経験が得られます。
- ハイプレッシャーな激務をこなす中で、自分の成長ポテンシャルを最大限に試し、伸ばす機会が得られます。
- どのような分野でも通用するビジネススキル(論理的な思考能力、発想力、着眼点、プレゼンテーションスキル、ネゴシエーションスキルなど)を磨くことが出来ます。
- 多種多様なクライアントのプロジェクトに携わることで、横断的な知識や経験が得られ、未知の分野や業界であっても適応して価値を発揮出来るようになります。
- ファームの同僚や先輩・後輩が様々な業界に「卒業」したり、起業する人材も多いため、他業界にはない広がりのある人脈が得られます。
戦略コンサルティングファームの組織の特徴
戦略コンサルティングファームは数十人~最大でも二百人程度と、少数精鋭の組織体制です。一般的な企業のように営業部署は存在せず、パートナーやプリンシパルと呼ばれるポジションがクライアント開拓を行います。 クライアントからプロジェクトの依頼を受けたパートナーは、社内のコンサルタントを集めてチームを編成し、プロジェクトを遂行します。プロジェクトチームは、フルタイムでプロジェクトにアラインするマネージャーとコンサルタント、アナリストが4-5名入ることが通常で、クライアント企業の側からメンバーが加わることもあります。
このようにプロジェクト単位で業務を行うという性質上、一般企業のように固定の部署で固定の業務を続けることはなく、あるプロジェクトが終了した後は、また別のプロジェクトへアサインされるといった就業形態を取ります。 ITコンサルのように、担当する業界によって明確に部署が分かれているわけではありませんが、アサインメントによって得意とする業界が定まってくることがほとんどです。
戦略コンサルの仕事の内容
企業の全社戦略や、組織、事業開発、M&A、マーケティングなど、企業経営のトップレベルに関わるコンサルティングが戦略コンサルティングファームの主な業務です。金融、通信、製造業、医療、商社、サービス業など多岐にわたる業種をクライアントとしていますが、基本的には大企業の顧客が多く、またファームによって得意な業界がわかれています。
全社戦略や部門戦略などの戦略立案プロジェクト以外にも、コスト削減プロジェクトの遂行やオペレーションの支援等のプロジェクトを行うこともあり、また、近年ではファンドがクライアントとなって投資先企業のビジネスデューデリジェンスを依頼するようなプロジェクトも見られました。
事例)
◆国内トップの大手小売業がアジアに進出する際の市場ターゲティングと進出プラン、提携先候補選定のプロジェクト
◆大手総合商社がグループ企業の一社を建て直すか売却するかの意思決定をサポートするプロジェクト
戦略コンサルティングファームに転職するには
<求められる人材・選考過程>
戦略コンサルティングファームは新卒採用も行っていますが、経営戦略をコンサルティングするため、事業会社で経営企画等に携わっていた人材を中途で採用しています。採用の基準は主にロジカルシンキング、問題解決力、地頭の良さ、コミュニケーション力、及び過去の実績・経験等です。
戦略コンサルティングファームというと、頭の良さやロジカルシンキングを重視するという面ばかりが強調されますが、クライアントに常駐してプロジェクトを遂行することが多いため、現場と摩擦を起こさずにプロジェクトを進めていくコミュニケーション力が非常に重要です。
海外トップスクールのMBAがあれば書類選考時には有利に働きますが、上述のような能力・スキルをもとに採用の判定が行われるため、トップスクールのMBAが戦略コンサルティングファームへの入社を約束するものではありません。また、東大、京大、東工大、慶応など有名大学卒に偏る傾向もありますが、決して学歴重視というわけではなく、こうした厳しい選考過程を経て、結果としてそのような大学卒の人材が多く集まったというだけです。
選考では、論理力・問題解決スピードなどを求められる筆記試験、ロジカルシンキング・即応力及び総合的な能力を問うケース面接など、独特なステップを乗り越えていく必要があります。ロジカルシンキング力を見られるということだけがフォーカスされがちですが、それと共にコミュニケーションやプレゼンテーションの高さも見られており、どのような状況下においても冷静にコミュニケーションをとり、課題を解決していくという高度な能力が求められています。
<ケース面接において重要なフレームワーク>
- フェルミ推定
- MECE
- ピラミッドストラクチャー
- ロジックツリー
<ケース面接対策に役立つ書籍>
- 考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則(バーバラ ミント (著))
- 考える技術(大前 研一 (著))
- ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル(照屋 華子・岡田 恵子 (著) )
- MBAクリティカル・シンキング(グロービス・マネジメント・インスティチュート (著))
- 経営参謀が明かす論理思考と発想の技術 (知力アップ講座)(後 正武 (著))
- 戦略コンサルティング・ファームの面接試験―難関突破のための傾向と対策(マーク・コゼンティーノ (著))
- 外資系企業がほしがる脳ミソ―採用試験の定番! 問題解決力を試す60問(キラン・スリニヴァス (著))
- 地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」(細谷 功 (著))
- 過去問で鍛える地頭力 外資系コンサルの面接試験問題(大石 哲之 (著))
- 観想力 空気はなぜ透明か(三谷 宏治 (著))
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