優秀なビジネスパーソンになるためには、どのようなスキルが必要となるでしょうか。
きちんと論理立てて考え、そして導いた結論を分かりやすく説明できること。これは一人前のビジネスパーソンとしてバリューを出せるようになるためには”必須のエンジン”であることには違いありません。しかし、それだけではまだ不十分なのです。
例えば、コンサルタントの仕事。「個人」の圧倒的な地頭で成立しているように思われているかもしれませんが、実は「チームで成果を出しにいく」ことが強く求められる職業です。自社メンバーだけでなく、クライアントも含めた「チーム」で仕事を進めていることへの意識が重要で、平たくいうと「段取り力」が常に求められています。
業界を熟知、数多くのご紹介実績のあるコンサルタントに転職相談する(無料)>
「段取り力」が足りなかった事例
普段の仕事において、以下のようなシーンに近い経験をしたことはありませんか?
上司A:「明後日の昼の打合せまでに、競合サービスの情報収集をお願いしてもいいかな?」
部下B:「わかりました!」
(作業中)
上司A:(次の日の朝)「で、どこまで進んでる? ちょっとやろうとしていること見せて!」
部下B:(明後日と言っていたのに・・・と思いながら) 「あ、いや、Webで情報収集していただけなので、ドキュメントにはまだ落とし込めていません」
上司A:(不安、不満・・。)「何をどうしようとしているのか説明してくれるかな?」
部下B:「A社とB社とC社、そして僕なりに気になっているD社のサービスを、Webで徹底的に調べて特徴をまとめようと思ってます!」
上司A:「4社だけ? しかも、特徴って何をまとめるの? ちょっとさ、、こまめに報告してくれる?」
上司A:「来週の月曜夕刻の打合せまでに各部署の見解を持っていきたいので、営業部と情報システム部、法務部のそれぞれと打合せをセットしてくれる?」
部下B:「分かりました!」
(打合せセット中)
部下B:「打合せのセット完了しました! 営業部が明日朝イチで、情報システム部は明日夕刻。法務部は来週月曜のランチタイムとなりました!」
上司A:「え? 明日朝イチまでに資料準備できる? しかも、法務部との打合せは来週月曜まで出来ないの??」
部下B:「あ、いや・・。 法務の方の都合がいいときにAさんのスケジュールが入ってまして、最速で全員の予定が合う日が来週だったのです・・。」
極端な例のように思えますが、実際の現場でも上記のようなシーンは起こっているのです。部下のB君は、一体何をどうすればよかったのでしょうか?
「段取り力」を実践するための手順
ここでは、「段取り力」を実践する上でケアすべき重要なポイントを3つご紹介します。
自分一人で全ての仕事を進めるわけではなく、相手(上司やクライアント)と共に進めていくわけですから、自身がボトルネックにならないように心掛ける必要があります。
1.作業の目的・期待されている内容を事前に理解すること=ゴール感を把握し、期待値を調整する
2.作業完了までの細かなチェックポイントの設計=ゴールまでのステップを組み立てる
3.作業順序・優先順位の設計=ひとつひとつの作業に意味づけをする
上記の3つのポイントを踏まえて、先ほどの例1ではどうすればよかったのか考えてみましょう。
ゴール感を把握し、期待値を調整する
上司に「競合サービスの情報交換」を依頼された際に、どのようなことをイメージできていればゴール感を把握できたのでしょうか。
・どういう場で、どのような目的で活用しようとしているのか?
・その「場」で必要な情報として、どんな要素が最低限必要なのか?
・「競合」として最低限押さえるべき対象はどこと考えているのか?
⇒どういう観点でピックアップすれば良いかも聞けるとよいですね。
・情報収集のレベル感はどの程度を期待しているのか?
⇒色々な手段があるので、コスト・時間を踏まえて目線合わせが出来ると安心です。
作業に着手する前に、どのような要求をされているのかを明確にイメージ出来る状態にしておくことは極めて重要です。
ゴールまでのステップを組み立てる
さて、作業のゴールイメージが明確になった後は、そこに至るまでのマイルストン(=重要な中間目標地点)の設計が大切になります。
・最終的なアウトプットイメージ((例)エクセル整理するのであれば、縦軸・横軸の整理項目)を早い段階で確認
⇒伝えた要件に対して、どういう整理の仕方をしようとしているのか最初に合わせられるとお互い安心ですよね。
・レビュータイミングの設計
⇒一定の作業が出来上がったタイミングで、状況報告は必須です。
書きっぷりが十分か、このレベル感で進めてよいか・・。作業に着手したからこそ見えてきた課題をどうするかなどの確認・相談を行い、フィードバックを反映させていくプロセスが重要です。
どうせやるなら早いタイミングのほうが良いですし、事前にスケジュールをおさえておくと、相手を安心させられます。
ひとつひとつの作業に優先順位をつける
ここまでに、作業のゴールイメージをすり合わせ、途中のチェックポイントを設計することもできました。
あとは作業をすすめるだけですが、ここにも重要なポイントがあります。それは、「作業に優先順位をつけること」です。一概には決められませんが、何も考えずに適当な順番でこなしていくべきではありません。
今回の例でいうと、どのようなことを考えて作業を進めていくべきでしょうか。
・相手が気にしていそうな企業から情報収集を進める
・ピックアップした競合の中でも、情報収集が難しそうな企業から進める
⇒軌道修正の相談など、早めにできたほうが良いですよね。
・一方で、しっかりと情報収集は出来そうだと自信のある企業から進めてみる
⇒しっかり情報収集ができそうな場合、相手の期待レベルに応えられそうか確認をしながら進めましょう。ここで期待値レベルにMeetしなければ、他を進めていくにあたって先行きに不安を感じてしまいます。
以上、「段取り力」について説明してきました。
毎度完璧に対応し続けるのは決して容易なことではありませんが、チームで成果を出すことを強く求められる方においては、常に「段取り力」を意識し、習慣化していくことが重要になります。
業界を熟知、数多くのご紹介実績のあるコンサルタントに転職相談する(無料)>
トレーニング問題
これまで、顧客対面のフィールドセールスのみに頼ってきたXYZ社。新興企業が台頭してくる中、XYZ社の将来を見据えて、営業マンに頼らない「オンライン商品」の企画立案をする重要プロジェクトが社長直下で秘密裏に発足しました。
外部コンサルタントとして、上司AとメンバーB君はそのプロジェクトに参画することとなりました。
関連組織の”役員・部長のみ”が本プロジェクトを認識していますが、現場の詳細を知る課長以下のメンバーはまだプロジェクトの詳細を全く知りません。
やがて新商品の骨格が設計でき始めましたが、以下のような状況になってきました。
- 現状の営業フロー、業績管理の詳細な運用を知る必要性が出てきている。まだまだ見えていない論点がありそうな予感。
- いくつか法的に確認すべきことが出てきている。
- 現状のシステムについても確認すべきことが出てきている。
そのため、一度このタイミングで情報収集をする必要性が出てきました。
ある木曜日の午前の出来事。
上司A 「再来週の月曜夕刻の重要な打合せまでに、各部署のヒアリング結果をもっていきたいので、営業部と法務部、情報システム部の各キーマンと打合せをセットしたい。段取りを考えてもらって会議設計してくれる?」
部下B 「わかりました!」
さて、あなたがコンサルタントB君とした場合、この依頼を受けた後、どのように考えてアクションしていくでしょうか?
解答のポイント
※正解はありません。クライアントとの関係性や、クライアント側のスタンス、周囲からどう認識されているか等の考慮が必要です。
ポイント①:目的や期待されていることの把握
■「場」の目的を事前にイメージ合わせする
・各組織との打合せにおいて、何をどこまで確認する「場」であるとイメージしているのか?
・極秘プロジェクトであることを踏まえ、どのように切り出して、何まで伝えるか?
■「参加者」の把握
・各組織について、誰までを参加者とするのか?
・プロジェクト側は誰までが参加者なのか?
■「段取り」のスコープについて
・各会議の場での持込資料作成を期待されているか?また、ベースになる既存資料があるか?
・実際の「会議招集」は誰がやるのがよいか?
⇒参加者が顔見知りだったり、不自然さが無ければコンサルタント側で会議招集してもよいですが、不自然さや違和感のリスクがあるようであれば、部長アシスタント等にお願いすることも視野に入れてもよいでしょう。メール文面等の原案は支援してもよいかもしれません。
ポイント②:作業完了までのこまめなチェックポイントの設計
チェックポイントとしては、下記のようなものがあるでしょう。
1.持込み資料概要版(何をどの順序で構成するかの骨格レベル)の上司とのイメージ合わせ
2.持込み資料の正式版(原案)の上司とのイメージ合わせ → 話者(=部長)とのイメージ合わせ
3.打合せのターゲット時期
・資料準備も踏まえての初回ターゲット
・ヒアリングまとめ資料(再来週月曜の持込資料)作成期間を踏まえた最終ターゲット
⇒3部署と打合せすることで、新たに確認事項が出てきた際の対応期間も視野に入れるとベスト
4.各会議後の議事録作成 → 上司との認識合わせ・展開
5.ヒアリングまとめ資料(再来週月曜の持込資料)の作成 → 上司との認識合わせ
⇒上司が資料の最終確認をするための時間も視野に入れて対応しましょう。
ポイント③:作業順序・優先順位の設計
■上記チェックポイントを踏まえた作業計画を立てる
■打合せ順序を設定
⇒予定が空いている順序だけで単純に決めないことが重要です。
- 今回の例の場合、全貌が見えていない”営業部”からヒアリングして論点を洗い出すのも1案。その結果、法務部や情報システム部に対して新たに確認すべき事項が出てきた場合に受け身がとれる。
・・営業部を最後にした場合、打合せ済の法務部や情報システム部に改めて確認するタスクが発生する可能性が出てくる。
◎難しいコミュニケーションが必要な場合は、「話しやすくフィードバックも前向きにくれやすい」部署から始めるのも1案。そこでの反応を踏まえて内容のチューニングをすることも可能になります。
まとめ
段取り力は、どの業界においても活かすことのできる重要な要素です。
チームで行動するにあたって、より効率よく、より良い成果を創造するためには欠かせない「段取り力」。あなたの現場でも、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。