コンサルティングの始まり
1874年 アメリカのフレデリック・テイラーが「科学的管理法」と呼ばれる科学的な効率方法を考え出す。これが世界最古のコンサルティングと言われている。※1
1886年 世界初のコンサルティングファーム、アーサー・D・リトル設立。
1920年〜1950年頃 「戦略」視点によるコンサルティングが登場。戦略ファームの誕生。※2
1926年 マッキンゼー、A.T.カーニー設立。
※1・当時、技術者として工場で働いていたテイラーが、マネジメントについて本格的に分析し、仮説を立て、検証するという方法を用いたことが、コンサルティングの始まりと言われています。「作業単位の分割」と「単位ごとの時間」という考えを作業に取り入れることで、見事に工場の経営を復活させました。
コンサルティング業界の初期は、効率化と最適化によってクライアントの結果につなげるものが中心でした。また、現在のコンサルティングファームに相当する組織はなく、コンサルタントの多くは個人で活動していました。
※2・黎明期のコンサルティングは業務効率化や業務改革に近いものがほとんどであったが、次第に経営責任者に助言を行う戦略系コンサルティングファームも姿を現すようになります。
20世紀初頭には「ジェームズ・O・マッキンゼー」が「マッキンゼー・アンド・カンパニー」を、「A・トム・カーニー」が「A・T・カーニー」を設立。現在も続く、名門の戦略コンサルティングファームが続々と誕生しました。
日本での台頭
1966年 ボストンコンサルティンググループ日本オフィスを開設。外資系コンサルファーム初の日本支社となる。
1970年代 マッキンゼー、A.T.カーニー、アーサー・D・リトルなど次々と日本へ進出。※3
1980年代 会計系コンサルティングファームの台頭。業務・ITコンサルの始まり。※4
1990年代〜2000年代 バブル崩壊。企業はさらなる効率化を目指し、ERPパッケージを導入。ERPコンサルティングが台頭する。※5
※3・1960年代、BCGの上陸に伴って日本でのコンサルティング市場が盛り上がり始めます。71年にマッキンゼー、72年にA.T.カーニー、78年にアーサー・D・リトルと続々と外資系ファームが日本へ進出してきました。当初、経営の方針を第三者に相談するということは日本ではあまり馴染みのない文化でした。
今でこそ、優秀な人材が集まり転職市場の人気業界として認知されているが、当時ファームに就職する人は稀で、特別な思いを持って入社する人が多かったといいます。そんな中、1975年に大前研一が発表した「企業参謀」、1980年にマイケル・ポーターが出版した「競争の戦略」などの影響もあり、経営者たちがコンサルティング業界を認知し始めます。
※4・1980年代、コンピューター性能の向上によりコンサル業界は大きな変革を迎えます。多くの企業が会計、在庫、販売、生産、人事といった様々な分野でコンピューターを取り入れ業務の効率化を図るようになった。「業務・ITコンサルティング」概念の誕生です。この領域のコンサルティングを積極的に行ったのが、会計事務所です。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)、トーマツトウシュロスコンサルティング(現アビームコンサルティング)など会計事務所に流れを汲む会計事務所系ファームが誕生し始めたのもこの時期です。
戦略領域のみならず、システムの導入までがコンサルティングの領域であるという認識はこの時期に広まりました。バブルの好景気も相まって、コンサルティング業界は大きく飛躍し多くの企業をクライアントに持つようになりました。
※5・コンサルティング業界が急成長を遂げた80年代であったが、バブル崩壊によって90年代は苦難の期間となってしまいました。コンサルティングは企業運営に必要不可欠はものではないため、不景気には真っ先に契約を切られるという業界の弱点が露見、新規の案件を受注することができずに、コンサルティング市場は一気に縮小します。しかし、苦難の時代であっても発展遂げる分野が現れました。ERPパッケージの導入です。ERPとはEnterprise Resource Planning(企業資源計画)の略で、日本語では統合基幹業務システムのことを表します。
ERPは企業活動における「会計」「人事」「生産」「物流」「販売」などこれまで個別に行われていた管理処理を統合し、それぞれのデータを効率よく運用していくためのシステムとして開発されましたパッケージの導入は大型のプロジェクトであれば、コンサルフィーは数十〜数百億円にも上り、ERPパッケージの導入ラッシュがコンサル業界をバブルの不況から救う結果となります。
ファームの細分化
2002年 エンロン事件勃発。会計監査業務とコンサルティングが同時に行えないようになる。会計系ファームは事業再編を余儀なくされる。※6
2000〜10年代 コンサルティングファームに求められる役割の増加。ビジネスが複雑になることに伴ってコンサルティング領域も細分化され、多種多様なファームが登場する。※7
※6・1985年にエネルギー会社として発足したエンロン。エネルギー取引に積極的にデリバティブを取り入れるなどして急成長を遂げます。2000年度年間売上高1,110億ドル(全米第7位)、2001年の社員数21,000名という、全米でも有数の大企業となりました。
特別目的会社(SPC)を利用して架空の利益を計上し続けた結果、不正経理・不正取引による粉飾決済が明るみに出ます。160億ドル以上と言われる巨額の負債を抱え、2001年12月2日に米連邦破産法第11条の適用を申請し破綻しました。一連の粉飾決済に大手監査法人のアーサー・アンダーセンが関与していたとされ、エンロン同様解散に追い込まれました。
この事件をきっかけに、アメリカにおいてコーポレートガバナンスが強く問われることとなります。結果、2002年に「サーベンス・オクスレー法(通称SOX法)」が制定され、米証券取引委員会は株主保護の観点から、会計事務所の監査業務とコンサルティングなど監査以外の業務を分離する規制を導入しました。これにより、多くの会計事務所系コンサルティングファームは再編を余儀なくされ、各ファームは会計事務所から離れることになります。
※7・エンロン事件後、コンサルティングファームは総合化を目指すようになりました。グループ内に会計事務所、監査法人、法務、ファイナンシャルアドバイザリーなどの設立し、各社で連携を取りつつ、サービスを提供しています。
大手監査法人BIG4やアーサー・アンダーセンをルーツに持つアクセンチュアは「会計系コンサルティングファーム」から「総合系コンサルティングファーム」と呼ばれるようになり規模を拡大しています。近年は「戦略」「IT」「業務」のコンサルティングにとどまらず、「M&A」や「組織人事」、「事業再生」など、専門分野を持ったコンサルティングファームも登場しています。特に日本のコンサルティング業界は、この傾向が強いです。
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