IT領域の成長は目覚ましく、各業務領域の高度なサービスを提供するSaaSベンダーの台頭、ITインフラのクラウド化等の様々な要因により、事業会社におけるITベンダー(SIer)の役割が変化してきています。
一方、スクラッチ開発のシステムとパッケージ製品が複雑に混在する状況、M&Aの加速によるシステム統合の必要性の高まり、IoT/AI等の新技術活用に代表される情報システム部門が求められる役割の多角化等、ユーザー企業の情報システム担当を取り巻く環境は目まぐるしく変化を続けています。
今回は、環境が激変する、製造業を取り巻くIT領域の簡単な解説と、そこで求められるスキルの変化の説明を通して、ユーザー企業側で増大するキャリア機会についてお伝えします。
変化するSIerの役割
製造業にとってのSIerの立ち位置が、「スクラッチ開発で大規模に儲ける」というスタイルから変わりつつあります。
これまでは各業務領域に強いSIerが、大規模システムをスクラッチで開発してきました。大規模システム開発に対応できるSIerがそもそも限られており、ユーザー企業にとっての選択肢が少なかったため、既存システムをどうカスタマイズして提供するかという付加価値において競争するべき市場が長く続いていたためです。
しかし現在は、財務・会計、人事、給与、CRM、SCMなど多くの業務領域にて各SaaSベンダーが頭角を表し始めています。また、顧客システムのインフラがクラウドに移行することによりクラウド上でのアプリケーション利用が可能にもなっています。実際に、AWS上で稼働するアプリケーションは、200近くのサービスラインを展開しており、ますますスクラッチ開発により構築されたシステムの置かれる環境は厳しくなりつつあります。
そこで各SIerは海外製のパッケージベンダーとアライアンスを組むことにより、スクラッチ開発から、パッケージ提供のビジネスに移行しています。SIerの役割が、システム提供から、より複雑なシステム環境における課題解決へと変化しつつあるということです。
複雑化する製造業でのDX企画
一方で、事業会社から見た自社システム環境も、複雑化の一途を辿っています。スクラッチ開発のシステムとパッケージ製品が複雑に絡み合う中で、システムアーキテクチャの重要性が増しています。各システムをつなぎこむ中間システムの開発はもちろん、実運用を進める上で問題の無い形で全体の整合性をとることは、ベテランでも難しいことです。また、2025年のERPサポート切れや、海外拠点/M&A買収先とのシステム統合、などによってもスコープの大きいプロジェクトは増えています。
また、最近ではIoT/AIを使用したビジネス企画のプロジェクトも複数走っており、情報システム部門としての知見が求められることも多くなっています。加えて工場IoTなど、ビジネス部門とのやり取りだけでなく、現場エンジニアと折衝が増えるようなプロジェクトも組成されており、ユーザー企業でのDX企画を取り巻く環境は目まぐるしく変化を続けています。
事業会社のSIer離れ、人材ニーズの変化
事業会社のSIer離れ
こういった環境の中で、製造業の情報システム部門に対しても、求められるスキルが変化しつつあります。
システム開発の内製化を図っている製造業はもとより、システムアーキテクチャ設計業務、乱立するSaaSのPoCおよびパッケージセレクション、高度化するビジネス課題に対するシステム部門としての知見提供。SIerに頼らない、もしくはSIerに発注する前段階の検討作業に重きが置かれる中で、製造業は徐々にSIerへの依存体質から脱却しつつあります。
事業会社での人材ニーズの変化
製造業の情報システム部門に求められるスキルが高度化する中で、SIer出身者がユーザー企業側で活躍出来る機会が増えています。製造業のシステムに要求水準が高まっており、これまでの情報システム部門の体制では対応しきれなくなっている為です。それがユーザー企業側での人材ニーズの変化に繋がっており、以下のような方々の事例がございます。
・30代前半、メーカー系SIerにてERP導入における上流SEを担当⇒グローバルメーカーにてERP導入PM
・30代中盤、外資系SIerにて人事系システムの開発/PM⇒国内大手ネットワークベンダーにてクラウドサービス企画
・30代後半、国内大手SIerにて会計システム開発⇒中堅メーカーに転職。親会社の社内SEを経て、子会社に出向し情報システム本部長。
上記で分かるように、メーカーでは積極的にSIerに勤務されているPMクラスの方を採用しようとしています。
要求スキルが高まることにより提示年収も年々上がってきており、かつビジネス/業務企画の上流に携われることから、製造業の情報システム部門にご転職される方が増えてきています。新規ポジションもどんどんと出てきており、「採用枠は1名」というような限定ポジションの、椅子取りゲーム状態となっています。
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