ゲストのご経歴
三菱UFJイノベーション・パートナーズ
代表取締役社長
鈴木 伸武 様
[経歴]
1991年に三和銀行入行、ニューヨーク等での産業調査業務等を経験後、2002年に独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインに参画し国内外のスタートアップ投資とKDDI等のCVCファンド運営に携わる。2018年に三菱UFJ銀行に入行し2019年に当社代表取締役就任。
インタビュアー
株式会社コトラ エグゼクティブコンサルタント
枝松 健志
東北大学経済学部卒。日本長期信用銀行(現・新生銀行)に入行。大企業および中堅企業向け融資、審査業務に従事。長銀破綻時には会長秘書を務める。その後ベンチャーキャピタルに転じ、ソフトバンク系VC及び伊藤忠商事系VCにてベンチャー企業への投資と成長支援に注力、複数の投資先でマネジメントを経験する。「企業の成長を人材面からサポートする」ことを目指し人材コンサルタントに転身。 [ 担当業界 ]
経営幹部人材(CXO / 事業推進責任者等)、バイアウトファンド、ベンチャーキャピタル
ゲストの経歴紹介と三菱UFJイノベーション・パートナーズ設立の経緯
枝松:
これまでのキャリアについてお話いただけますでしょうか。
鈴木社長:
1991年に三和銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行して2年半の支店勤務後、事業調査部に異動し主に機械や家電・IT業界を担当していました。
その後、ニューヨークの事業調査部に異動し、TMT(テクノロジー・メディア・テレコム)をカバーすることになりました。特に西海岸のソフトウェア、インターネット、半導体など様々なベンチャー企業を訪問する中で、アメリカの新しいビジネスはベンチャーキャピタルが後押ししているということを目の当たりにし、銀行よりもベンチャーキャピタルの方がよりダイレクトに産業育成に貢献できると感じ、興味を持つようになりました。
2001年に東京本部に異動し、インターネット関連ビジネスを担当する部門に配属になりました。今で言うフィンテック関連のサービス開発を1年ほど担当しましたが、同僚がまだ創業期のベンチャーキャピタルであったグローバル・ブレインに転職し、その同僚に誘われたこともあり2002年に転職を決断しました。グローバル・ブレインでは16年ほど働き、キャピタリストとして国内投資から始め、ファーム初の海外投資を契機として、米国、東南アジア、韓国等のスタートアップへの投資と大手企業のCVCファンド運営等に関する幅広い経験を積ませて頂きました。
その後、2017年頃に三菱UFJ銀行から声がかかり、CVCを立ち上げるから責任者として来ないかとお誘いを頂きました。自分のバックグラウンドである銀行とVCでの業務経験を活かせることに魅力を感じ、2018年に再度転職しました。いわゆる「出戻り社員」ですがMUFGではかなり稀なケースのようです。半年間の準備期間を経て2019年に三菱UFJイノベーション・パートナーズ(以降MUIP)を設立し社長に就任し現在に至ります。
枝松:
MUFGには、三菱UFJキャピタルというベンチャーキャピタルの子会社がありますが、子会社を活用せず新しくCVCを立ち上げたのはなぜでしょうか?
鈴木社長:
もちろん、子会社の三菱UFJキャピタルでCVCもやればいいじゃないかという議論もありましたが、オープン・イノベーションなど協業推進のための仕組みが社内に無く経験者もいないといった問題がありました。
また三菱UFJキャピタルは国内投資がメインである一方、MUFGの武器となる技術をCVCとして発掘するとなると海外フィンテック企業への投資が中心になるだろうという結論になり、新組織を一から立ち上げたという経緯があります。
三菱UFJイノベーション・パートナーズの強みや特徴
枝松:
MUIPの強みや特徴はどのような点にあるとお考えでしょうか。
鈴木社長:
MUFGの持つネットワークや信用力をフル活用できることです。
MUFGは、日本国内だけでなくグローバルに事業展開をしています。そのため、スタートアップがMUFGと関係を作ることで、日本だけでなく東南アジアやアメリカといった地域でも協業できる可能性があるというメリットがあります。また業態としても商業銀行だけでなく、信託、証券、カード、消費者金融、リース等、幅広く展開していることから、スタートアップとの協業においては間口の広さと地理的な広がりということで懐が深いというのは強みですね。
ディールソーシングの観点からは、MUFGのブランド力もアドバンテージがあります。グローバルに事業展開をしていることもあり、世界中のスタートアップと初めて面談してもMUFGのことは皆さんご存じです。
またMUIP設立以前からMUFGはフィンテック・スタートアップ向けのアクセラレーター・プログラムを開催したり、銀行本体でもフィンテック・スタートアップに十数社出資するなどスタートアップとの協業に熱心であったと思います。さらに、MUIPではCVCファンド運営経験者も多く、スタートアップと大企業が協業する際の一般的な課題についてもMUIPが間に入ることで解決できる可能性が高いと思います。
枝松:
投資を受けた会社にとってMUFGグループと連携し、どういった案件で成果がでたなど具体例はありますか。
鈴木社長:
Grabへの出資事例ですね。当社は東南アジア全域でライドシェアリング事業、フードデリバリー事業を展開していますが、出資を契機として当社のプラットフォームへMUFG子会社の東南アジアの現地銀行4行が金融サービスを提供し、例えばGrabのドライバーが新しくバイクを買うときにローンを借りることが出来ます。
実はGrabのドライバーとして働き始める方は以前は安定収入を得ていた方が少なくクレジットヒストリーも無いケースがほとんどであり、そのような方々にお金を貸すことは困難でした。今回の資本・業務提携を契機として、MUFGの子会社銀行がGrabのデータにアクセスできるようになり、バイク購入希望者の1日あたりの稼ぎや、顧客からの評価などのデータを基にして個別にきちんとお金を貸す判断ができるようになりました。
その他にも、イスラエルのLiquidity Capitalへの出資・協業事例も大成功を収めています。当社は、recurring buisness model(継続課金型)の新興企業に特化した機械学習ベースの与信モデルに強みを持っています。2019年にMUIPから出資し、2020年には三菱UFJ銀行と共にJVをシンガポールに設立し、当社の与信モデルを活用してアジアの新興企業にgrowth debtを提供していますが、この協業が飛躍的に拡大しています。MUFGの中でも既存のコーポレート与信手法とは一線を画す次世代の与信技術であるとして高い注目を集めています。
枝松:
御社から投資を受けられる会社はビジネス面でのアライアンスが期待できるわけですね。
鈴木社長:
投資はあくまでスタート地点で、最終ゴールはMUFGとの協業の実現を目指しています。まさにこの点が我々のビジネスの醍醐味だと思います。
一般的なVCではバリューアップの手段は限られています。しかし、我々はCVCならではのレバレッジを効かせることができます。MUFGと投資先の協業が上手く行けば投資先にとっても大きな収益を獲得できる可能性があります。
弊社の社員数は18名と少ないですが、MUFGのグローバルのネットワークや組織力・資金力をうまく活用できるのが私達の仕事の醍醐味です。
枝松:
グローバルに展開しているとのことですが、地域別の投資先数を教えてください。
鈴木社長:
投資先数は30社程度です。内訳は、アメリカ・イスラエルで15社、東南アジアで7社、インド2社、アフリカ1社、オーストラリア1社、日本に4社です。
特に最近はインド、アフリカ等新興国での投資に注力しています。
枝松:
インドやアフリカにも目を引くようなベンチャー企業が多くあるのですね。
鈴木社長:
これらの地域にも巨大ヘッジファンドやクロスオーバー・ファンド等が参入しており優良投資案件をめぐる競争は熾烈になってきています。MUIPとしてインドやアフリカに注目している理由としては、経済や人口の規模や成長性から考えて純粋にファイナンシャルリターンの期待値が高いことに加え、さらに協業という観点でMUFGに加えて現地の日系企業と投資先との協業をアレンジすることでMUFGの顧客大企業の課題解決に貢献できること、さらに当該地域外でも通用する技術を持つグローバルなテック企業が増えてきたからです。
三菱UFJイノベーション・パートナーズのこれからの展望
枝松:
2019年の設立から、ものすごいスピードで成長されてますが、現状組織の状況やこれからの展望などはございますか?
鈴木社長:
現在2つのファンド合計で400億円を運営しており、社員数は18名の規模ですが、ファンドについては約3年毎に新ファンドを立ち上げるペースを維持したいと考えています。
有望スタートアップが次々と世界中に生まれているため、スタートアップの調達金額も拡大傾向にあります。日本でも私がキャピタリストのキャリアを歩み始めた頃は年間1000億円程度でしたが現在は8000億円規模になっており、隔世の感があります。さらにアメリカでは30兆円規模になっており、我々としてもファンドの規模を拡大していく必要があると考えています。
また、我々の組織自体も質と量を拡充していくつもりです。案件のソーシングを担うキャピタリストや協業を担当する事業開発担当、デューデリジェンスや投資先のモニタリング、経営管理業務も含めて、人員増強を計画しています。5年後の姿としては、先ほどお話ししたペースでのファンドの立ち上げに応じて、社員数も大きく増える事を見込んでいます。
またMUFGの顧客大企業の経営課題をオープン・イノベーションにより解決するための取り組みも開始しています。MUIPの投資先を上手く活用し、大企業との協業を提案し顧客の経営課題の解決のお役に立てればと考えています。
枝松:
MUFG以外との大企業との連携というと、大企業からLP投資を受けて連携するという流れでしょうか。
鈴木社長:
大企業のお客様からCVCについての相談はよくあり、当社のポートフォリオ企業をお繋ぎすることもあれば、また、他社のニーズに応じて連携を深める機会も増えています。
枝松:
大企業とMUIP投資先との協業事例等はございますか。
鈴木社長:
大企業・MUIP投資先スタートアップ・MUFGの「三方良し」を実現するための「3Wins(トリプル・ウインズ)」という施策を推進しています。
例えば、新興国で機械を販売したい日本企業があるとします。しかし、機械を購入したいと検討している現地企業には当座の購入資金がなく、日本企業としても現地企業の信用リスクが取れないといった状況で、MUFGにも現地に支店が無いか、有ったとしても現地企業の信用リスクは取れないといったシチュエーションです。
しかし、新興国の中小企業向けに融資しているフィンテック企業にMUIPが出資することで、その企業から日系企業に販売金融を提供できる可能性があります。さらにMUFGからバックファイナンスを当該フィンテック企業に提供すれば理想的です。
三菱UFJイノベーション・パートナーズが求める人材像
枝松:
御社にご入社された方のバックグラウンドを教えてください。
鈴木社長:
フロント部門の戦略投資部ではベンチャー・キャピタリストが現在4名在籍していますが、全員経験者です。事業開発チームは2名在籍し、1名はMUFGからの転籍者で、もう1名はコンサルティング・ファームからの転職者となります。ファンド管理部門は、投資案件のデューデリジェンスや投資後のモニタリング等を担っていますが、概ね会計士やCPAの資格を保有していますね。
枝松:
御社に転職された方の決め手はどういったところにあるのでしょうか?
鈴木社長:
大きく2つあると思います。1つは、グローバルでトップティアの素晴らしい技術・ビジネスモデルと起業家を擁するスタートアップへの投資経験が積めること。もう1つは、MUFGという巨大金融機関の信用力を背景に投資先との協業をドライブし投資先の事業を大きく成長させることができるということですね。
また、弊社ではファンドのパフォーマンスに応じたキャリーも設けており、他のVCファンド以上に長期的なアップサイドが期待できます。MUIP設立に際してとても重視した点でもあり、MUFGのトップマネジメントに何度も説明して理解頂きました。
枝松:
求める人材像について、経験や知見、スキルに関して教えて下さい。
鈴木社長:
投資先の大半が海外であるため、英語で実務ができることが望ましいです。ただ弊社メンバーも全員が海外での業務経験があるわけではなく、TOEIC600点台から努力して今は英語で海外起業家と交渉ができるレベルになった人もいますし、入社後に会社で英語教育支援も行っています。
その上で、スタートアップ投資やファンドマネジメントの経験、事業会社や金融機関で与信業務や企業評価をしたことがある方などを求めております。
枝松:
パーソナリティの部分ではどのような方を求めていますか。
鈴木社長:
知的好奇心が旺盛な方に是非来て欲しいと考えています。
フィンテックの世界は狭いようで奥深く、また弊社でもESG関連や業務系クラウドサービスと金融サービスの連携を狙ってSaaS系スタートアップへの投資も力を入れています。また、グローバル市場をターゲットにしていることから、関連するスタートアップや技術、ビジネスに関する情報の量も膨大ですので、新しいことに敏感でわくわくするような人が望ましいです。
枝松:
御社の社風について教えて下さい。
鈴木社長:
まだ企業規模も小さいので、MUFGの子会社というよりはスタートアップに近い社風です。服装も自由ですし、コロナ禍ではグループ内でもいち早く全面的な在宅勤務に移行するなど働きやすい環境が整っています。
また外国人メンバーも3名在籍しており、異なるバックグラウンドを持つメンバーが集まりお互いの能力や背景を尊重しチームワーク重視で働いています。
候補者へのメッセージ
枝松:
最後に候補者様へのメッセージをお願いします。
鈴木社長:
MUIPは世界中の素晴らしい起業家と一緒に仕事ができる希有な経験と最先端のテクノロジーに触れることが出来る舞台を提供しています。投資はあくまでもきっかけであり、スタートアップ企業とMUFGの協業を創り上げていくことが最終的な目標です。
MUFGのネットワークをフルに活用し、新しい事業を作っていく非常にチャレンジングな仕事ですので、知的好奇心に溢れた方にはとても魅力的な職場だと思います。皆様のご応募お待ちしています。
三菱UFJイノベーションパートナーズ様に
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・財務分析力またはデューデリジェンス経験(経理財務・監査法人・コンサル等で財務分析/事業分析等について数年以上の経験があり、能動的に対応可能なレベルの方)
・英語力(英文財務諸表が理解でき、デューデリジェンスのQA等も英語で実施可能。投資契約等を読んで理解して吸収していただく必要あり。簡潔な議事録を取れる以上のリスニング力。Speakingは一定水準以上の会話ができるレベルを期待。)
【歓迎】
■クロスボーダーM&A等のTAXデューデリジェンス経験。
■事業会社またはファンド監査経験、USGAAP監査やクロスボーダーM&Aなどの経験。
■監査法人もしくはコンサル等においてクロスボーダーM&A等のデューデリジェンス経験。■事業評価・株式価値算定等の経験。
■金融機関での実務経験
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