日本経済の心臓部である日本取引所グループ(JPX)がスタートアップ投資を始める理由とは?【JPX総研】

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ゲストのご経歴

コトラ原田:
まず初めに、これまでのご経歴についてお伺いできますでしょうか。

平野様:
私は1989年に東京証券取引所に入社後、様々な部署を経験しておりますが、現職との関係が強い1つの経験は、米国のビジネススクールへの留学でした。
当時はインターネットが世界的に黎明期で、留学場所がカリフォルニアということもあり、情報・データといったもので盛り上がり、帰国後は取引所のデータを取り扱う部署を希望し、配属となりました。
日本ではまだインターネットがほとんど活用されていない時期に、インターネットを通じてマーケットのデータを配信する場合のポリシーの策定や、一般向け金融データの提供、ネット証券の立ち上げに伴うデータの提供などの業務に携わった思い出があります。

その部門を離れてから約10年間は、取引の決済に関わる仕事に携わり、特にリーマン・ショックが起こった際には、金融取引全般の安全性を高める制度作りに従事しました。
また2015年には、東京証券取引所などの親会社である日本取引所グループ(JPX )の経営企画担当役員として中期経営計画を策定したり、「取引所の品質管理センター」である自主規制法人の役員として大手上場会社の上場廃止案件等の責任者になったりなど、幅広い経験を経て、昨年、現職に就任いたしました。

2022年に新設された「JPX総研」とは?

コトラ原田:
JPX総研様は、JPXグループの中でどのような役割を担われているのでしょうか?

平野様:
2022年にスタートしたばかりの会社で、基本的にはデジタルやデータ関連の仕事をグループ内の取引所から集約し、一括して取り扱っています。
デジタル関係の業務であるため、最新技術やフィンテックなど新しい動きやサービスと非常に親和性の高い仕事を担当しています。

コトラ原田:
JPX総研設立前にも、JPXグループ内で非常に多くのデータが蓄積されていたと思いますが、どのような背景でJPX総研を分社化して設立されたのでしょうか?

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平野様:
背景の一つとして特有の法規制があります。取引所は安定的な市場運営を求められ、法律上できることが厳密に限定されています。
そこで、取引所ではない会社=JPX総研を設けることで、今後発展可能性の高いデータ・デジタル領域において、市場運営に関連する新しい分野との接点をこれまでより自由に創出しやすい環境を整えました。

データ領域を中心に新サービスを開発・提供

コトラ原田:
平野様は現在フロンティア戦略部をご担当されていますが、フロンティア戦略部の役割についてお聞かせください。

平野様:
フロンティア戦略部の大きな役割の1つは、取引所で提供するシステムやサービスのその先を、先端技術も活用しながら開拓しサービスとして形にしていくことです。
たとえば、AIが普及する中で多様なデータが生まれたり求められたりしていますが、そもそも収集したデータをどのように使用するか、誰と組んで活用していくかなどもJPXグループの中でリードしていく部門です。

コトラ原田:
JPXグループの内部や外部企業、ステークホルダーとのやり取りの機会も多い部門ということでしょうか?

平野様:
そうですね。上場会社や金融機関、個人まで幅広いステークホルダーがいるため、様々な人との接点があります。

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なぜ今スタートアップ投資なのか?

コトラ原田:
既に外部の企業やデータサイエンティストの方々とのやり取りをされていますが、なぜ今、投資チーム、特にスタートアップに投資をするチームを立ち上げられたのでしょうか?

平野様:
金融業界では、AIも含めたデータの活用が非常に広がってきています。
新しい技術を用いてユーザーサイドが進化をしていく中で、取引所としてそれらのニーズに応えていくためには、新しい技術に精通した方々との接点を広げていく必要があります。
現状も最先端の技術をサービスとして利用したり、協業したりしていますが、今後はさらにスタートアップと資本関係を通じ事業やサービスを共に創っていくことで、データ関連領域などを軸に、さらなる金融市場の発展をリードしたいと考えております。

コトラ原田:
投資活動を通じて、JPXグループとして、解決したい課題などございますでしょうか?

平野様:
投資家や発行会社の利便性を向上したり、上場会社と投資家との対話を支援したりするサービスは、新しい技術と親和性が高いと考えています。
たとえば、上場会社のディスクロージャーについてなら、非財務情報といった新しい種類の情報開示を簡便かつ有効なものにするために、新しいテクノロジーやサービスを提供していきたいです。

コトラ原田:
今、特に上場会社に求められる情報開示などが高度化する中で、それを解決するソリューションを提供するということがメインテーマの一つにあるのですね。
投資のターゲットとしては、情報開示や情報整理、データ分析関連の企業が多くなってくるのでしょうか?

平野様:
そうですね、私たちが見えてない世界にも着目していきたいとも思っていますが、当初の探索分野としては、情報開示や整理に関連するスタートアップなどが中心になります。

コトラ原田:
ムーンショット的な投資活動なども想定されていますでしょうか?

平野様:
結果としてあり得るとは思います。
取引の世界はブロックチェーンやAIなどの新しい技術によって変わる可能性があるため、先端領域に対して早めに網を張っていくようなアプローチも必要になると考えています。

コトラ原田:
そうなると、IT技術全般がターゲットになりうるということですね。

平野様:
そうですね。取引所グループとしての業務範囲の制限はありますが、金融取引との関係性がある程度見えるような分野であれば、枠にとらわれることなく投資活動を行っていきたいと思います。

これまでのスタートアップ等との協業事例

コトラ原田:
具体的に投資活動を行っていくにあたって、これまでの事例も含めて投資先との協業のイメージをお聞かせください。

平野様:
これまでいくつかスタートアップの会社と協業をしたり出資をしたりしてきました。
一例として、「SCRIPTS Asia」というスタートアップの買収があります。
海外投資家は言語の壁によりIRイベントに関する情報にアクセスがしづらい状況があり、レベルプレイングフィールド(平等な競争環境)を確保する必要性が指摘されていました。
そこで、決算説明会の書き起こし及びその英訳をタイムリーに作成・配信する同社を買収し、できるだけ早く海外投資家に日本の上場会社の情報をお伝えできるようなサービスを提供しています。

投資家と上場会社との対話支援の観点では、「みんせつ(みんなの説明会)」への出資も代表的な事例です。
みんせつは、投資家と発行会社とのコミュニケーションを改善することを目的とした会社で、投資家が行う発行会社に対してのインタビューや発行会社の説明会を支援するサービスを提供しています。
取引所グループの事業計画においても、企業価値を向上していくことを重要視している中で、発行会社と投資家との間のコミュニケーションの改善は重要なポイントの一つだと考えています。
みんせつと協業し、活発なコミュニケーションを生み出すことは、市場運営者としても非常にメリットがあると思っています。

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他にも、出資はしていないですが、「Bridgewise」というイスラエルの会社とも協業しています。
Bridgewiseは、AIを使って東証に上場する会社について、個社のビジネス概要や直近の決算のサマリー等を多言語でウェブサイト上で公開をするサービスを提供しています。
小さい会社ですと、そもそも日本語以外での情報開示を行っていないケースも多いですが、そうした企業が海外の投資家からの理解を得るための最初のステップとしても、すべての上場会社の情報を多言語で発信しています。

コトラ原田:
投資家とのコミュニケーションが大きなポイントになっているのですね。
投資活動の期間や規模についてはいかがでしょうか?

平野様:
一般的なCVCとは異なり、一定のファンド規模や運用期間、投資利回りの目標は置かないように考えています。
市場の機能強化のため、新しい技術やタレントを取り込んでいくことがメインになります。
JPXグループ自体の資産規模が大きく、柔軟な対応が可能であるため、投資期間も事業共創をメインに、中長期的な目線で追っていきたいと思っています。
チケットサイズは数千万から数億ぐらいが目安になり、まずは国内投資を中心に考えています。

コトラ原田:
事前に協業のイメージを固めてから投資を行うのか、それとも長期的な視点から協業の可能性を探る形で投資を行うのか、でいくとどちらになりますか?

平野様:
どちらか選択する必要はありませんが、協業していくという観点から、JPXグループの各部門へ、どのように新しい技術やサービスを取り入れていくかがポイントになります。
今、私たちJPXグループとして取り組んでいる仕事とペインポイントを意識した上で、具体的な投資候補先とディスカッションして決めていくことになります。

コトラ原田:
投資検討はどのようなフローで進みますでしょうか?

平野様:
スタートアップへの企業の基本的なスタンスとして迅速な意思決定が求められるため、体制整備に関してはVC出身の方にも一部お手伝いをいただきながら、基本的な枠組みを既に決めています。
ただ、細かいプロセスはこれから働いていただく方にも議論に参加していただき、その知見も反映したより現実的・効果的なフローをともに創っていきたいと考えています。

スタートアップの評価ポイントなども含め、新たにご入社いただく方にはプロフェッショナルとして忌憚なくご意見いただきたいと思います。

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投資活動におけるJPXグループの特徴とは?

コトラ原田:
JPX総研ならではの、投資における制約はありますか?

平野様:
先ほども少し述べましたが、当社が法律的に可能なのは金融商品市場の運営に関連する業務であるため、金融商品取引法上の制約を意識して投資先を選ぶ必要があります。

コトラ原田:
監督当局とやり取りをすることもあるのでしょうか?

平野様:
説明が必要になる場面もあります。
認可などの、正式な法令に基づく手続きは発生しますし、日常の中でも取引所グループとしてこういうことに取り組んでいきたいという建設的なコミュニケーションが求められます。

コトラ原田:
投資先のExitについて、仲間に入っていただくのか、あるいは他のファンドに繋ぐのか、あるいは上場してもらうのか、現時点で想定している形はありますでしょうか?

平野様:
特に想定はしていませんが、ただキャピタルゲイン狙いではないので、そこに沿った形でのExitが最も有力であると考えています。

コトラ原田:
投資活動におけるJPXグループの強みあるいは魅力はどこにあるとお考えですか?

平野様:
取引所やそのグループとして、金融商品市場を運営するビジネスに取り組んでいる会社は他にはありません。公共性を意識しつつ最先端の方々と接していくため、新しいことに触れる機会にも恵まれています。
ユニークなサービスを提供する会社であり、膨大で多様なデータが必然的に集まってくる中で、ユーザーのニーズを汲み取りながらそれらの活用方法を考えていくことができるのは、JPXグループならではの魅力です。
こういったJPXグループの存在意義や、価値観に共感していただける方にぜひ来ていただきたいと思います。

安定✕挑戦:JPXグループの社風

コトラ原田:
続いてJPXグループについてお伺いいたします。
まずはJPXグループ全体の社風についてお聞かせください。

平野様:
金融資本市場におけるユニークな立場で、重要な市場インフラを運営していると自負しています。
非常にしっかりとした仕事をする社風で、自ら言うのもなんですが、社員一人ひとりの能力と意識は高いのではないでしょうか。
また、世の中全体や海外市場の動き、ユーザーのニーズにも目を向けられる人材やカルチャーも必要であり、安定的に市場を運営していく部分と新しいものに積極的に取り組んでいく部分を両立させるための取り組みにも力を入れています。

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マネジメント層も含め、オープンでフラットな環境

コトラ原田:
働き方についてはいかがでしょうか。

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平野様:
JPX総研、なかでもフロンティア戦略部は意思決定が迅速です。またJPXグループ全体でフレックス勤務やリモートワーク制度も整備しています。
余談になりますが、服装について、本日はインタビューということでスーツを着用していますが(笑)、普段お客様対応がない時は、TPOに合わせた柔軟な格好をしています。
働くスタイルもフレキシブルで、個々の社員のライフスタイルに合った働き方が可能です。

コトラ原田:
実際に御社のオフィスにお伺いしてみて、広くて明るい印象を受けました。

平野様:
そうですね。新しいビルで、フロントにも緑がふんだんに使われたオープンスペースがあります。

コトラ原田:
オープンなコミュニケーションも広がりやすい環境ですね。
下のフロアは他社様との共有スペースかと思いますが、他の会社の方との交流の機会もあるのでしょうか?

平野様:
はい、私たちのオフィスの入っているWeWorkでは、ゲーム大会や卓球大会が開催されています。

コトラ原田:
社内外関係なく、フラットな環境が整っているのですね。

平野様:
そうですね、特に社内の意思決定に関しては本当にフラットであるため、上司とのコミュニケーションはかなり取りやすいのではないでしょうか。

コトラ原田:
良い意見があればすぐ採用したいというスタンスなのでしょうか?

平野様:
はい、私を含め他の役員も「良いものであればすぐに決めるので、すぐに持ってきてほしい」というスタンスです。
もちろん社内外のステークホルダーとの必要な意思決定プロセスはありますが、必要以上の形式主義はありません。

コトラ原田:
取引所はかっちりしたイメージがありますが、オープンなところもあるのですね。

採用活動について

コトラ原田:
次に採用についてお伺いします。
まず初めに、どのようなご経験をお持ちの方に来ていただきたいですか?

平野様:
ベンチャーキャピタルやコーポレートベンチャーキャピタルでご経験を積まれた方で、投資先と出資元又は自社との間で新しいビジネスを生み出していくためのコミュニケーション能力が培われている方が望ましいです。
私たちはJPX総研に加えて、取引所グループ各社とも仕事をしていくため、特に大企業とスタートアップとの間をうまく繋げられる方にぜひ来ていただきたいです。

コトラ原田:
パーソナリティに関しては、どのようなマインドセットが求められるのでしょうか。

平野様:
取引所自体が公共的な使命が中心で、私どもの企業理念も、第一に市場の公共性を発展させることが重視されているため、その企業理念に共感をしていただける方と一緒に働きたいです。
また、技術やノウハウ、経験ももちろん重要ですが、新しいことに取り組んでいくためには、多様な経験や視点を持つことが必要です。企業文化の多様化にお力添えをいただければ嬉しく思います。

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候補者へのメッセージ

コトラ原田:
最後に候補者の方に向けてメッセージをお願いできますでしょうか。

平野様:
私たち投資チームは、公共的な視点で日本の資本市場の発展に貢献すること、その結果としての利益を目指しています。
私たちの方針に共感していただける方と、ぜひ一緒に働きたいと思います。

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登壇者

ゲスト

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株式会社JPX総研
取締役 常務執行役員
(フロンティア戦略担当)

平野 剛 様

インタビュアー

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株式会社コトラ
リサーチャー兼コンサルタント

原田 青空

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)