ゲストのご経歴
株式会社電通総研
取締役 エグゼクティブコンサルタント
村山 誠哉 様
大手輸送用機器メーカーに新卒で入社後に鉄道用ブレーキシステム開発を10年経験
専門職大学院でMOTを取得
多くの企業へご支援が可能なコンサルティング業界へ興味を持ち、その中で開発の経験が活かせる電通総研へ入社
電通総研では、素材、自動車、自動車部品、精密機器、食品、美容・化粧業界と多岐の分野の企業様に対して「顧客の声を聞くだけではヒット商品は生まれない」をモットーに、クライアントの要素技術を生かした新規事業、新商品企画の立案やあるべき姿に向けた業務プロセスの改善などのコンサルティング実績を保有
問題解決力、発想力、行動観察、ロジカルシンキングなどのセミナー・研修講師としても活躍
会社の紹介とコンサルティングの魅力
コトラ:
まず会社紹介と、コンサルティングの魅力について、お話を伺えればと思います。
村山様:
株式会社ITID(現:株式会社電通総研)は2001年に設立されました。
設立当初は、製造業の開発力を向上させることをミッションとしていました。しかしなから、昨今、製造業のお客様の課題感が変化、多様化してきており、よく言われることですが、物売りの時代からモノ・コトを売らなければならない時代へと変わってきました。
そのため私達もお客様の課題に答えるため、開発力だけではなく、開発する前段階の事業戦略、事業構想領域である創起力、開発したあとに世の中にモノ・コトを提供する展開力を加え、企業の価値提供力を向上させることを現在ミッションと捉えております。
特に、展開力は昨今重要になってきています。世の中に価値を広めるためには、まずその企業の事業ビジョンを組織内に浸透させ、目標達成に向け従業員が自律的に業務に取り組む必要があります。ITIDでは、従業員の自律性を高め、パフォーマンスを向上させる支援をしております。
コンサルティングという仕事の魅力は、共に成功を見届けられる、成功し感謝される、というのが大きな魅力です。また、色々な業界を経験できることも魅力です。
コトラ:
入社後のアサインについて教えて下さい。一般的には、出身業界を考慮しつつプロジェクトをアサインし、ゆくゆくは業界を縛らずに経験を積んで、スキルを発展・向上してもらうという形が多いと思いますが、いかがでしょうか。
村山様:
そうですね。本人の希望を最大限、聞いていく方針です。2つ軸がありまして、1つは業界の軸、もう1つはソリューション軸です。特定の分野がやりたくて入社してきた人は、最大限それを考慮します。昔はゼネラリスト系で様々なことをやって、という形だったんですが、自分の軸、柱になるものを持っていないとなかなか伸びていかないので。本人の希望を尊重して、軸を伸ばしていってあげるということです。
コトラ:
ある業界では当然だったことが、別の業界では違うといった、クロスインダストリーすることで生まれるものがあるのかと思いますが、どうですか。
村山様:
もともとITIDの主戦場は、製造業、もっと言うと自動車のような組立産業中心でした。そこで生まれたフレームワークや考え方は、実は銀行業界でも使えますし、街づくりでも使えます。
これまでのご経歴とジョインの決め手
コトラ:
次に、村山様のこれまでのご経歴をお聞かせください。
村山様:
新卒で大手輸送用機器メーカーに入社しました。入社後、先行開発部門に所属して、主に鉄道用ブレーキのシステム開発を10年経験しました。
転職のきっかけは、専門職大学院に通ったことです。その時の担当教授がコンサルファーム出身の方で、話を聞くうちに「これは面白い」と思ったことです。開発部門での自分のキャリアを活かしたいと思い、開発とコンサルを掛け算したファームがないかと思い、見つけたのがITIDです。
コトラ:
他にもコンサルファームがある中で、ITIDに照準を絞った経緯というのは?
村山様:
開発や技術にこだわる、という点です。開発現場にこだわっているというのが好印象でしたし、これまでのキャリアがそのまま活かせると思いました。ベンダー系のコンサルティング会社は、どうしてもシステム導入に寄ったコンサルティングになると思いました。システムに左右されないコンサルティングである点で、ITIDに惹かれました。
コトラ:
入社してみて、入社前のイメージとのギャップはありましたか。
村山様:
ギャップはなかったですね。自分のやりたいことができる、という点で、まったくブレずに、その通りだったので。
入社後の担当業務
コトラ:
入社後、担当されている業務を、少し詳しく教えてください。
村山様:
前職が輸送用機器メーカーだったので、入社直後は、自動車OEMや自動車部品メーカーを中心に、開発のプロセス改革などを担当しました。また、入社前からやりたいと思っていたのが、商品の企画、新事業を生み出すコンサルティングでした。そのため社内にプロジェクトを作り、施策開発を行いました。その後は開発した施策を元に、新事業立案のコンサルティングを業界問わず手掛けました。
コトラ:
そこは、本人のやる気があれば、チャレンジできる環境があったわけですね。
グループ内でのITIDの立ち位置と強み
コトラ:
次に、大手SIerであるISIDグループの中でのITIDの設立背景とグループにおける立ち位置はいかがでしょうか。
村山様:
ISID製造ソリューション事業部の一部がスピンアウトする形で設立されました。 当時ISIDでは3DCADや解析ツールなどを製造業に対して導入していました。しかしながらツール導入だけでは、なかなか製造業の開発現場はよくならない。そこで、開発のプロセスや人、組織に着目したコンサルティングを実施することで開発現場を良くしていこうということになりました。
グループでの役割としては、ITIDは上流のコンサルを実施し、その後必要なシステムがある場合はISIDと連携します。
コトラ:
ITIDが得意な領域は開発プロセスをいかに効率的に進められるか、そして標準化して組織を変えていくことですね。
村山様:
そうですね。製造業の開発は、一人で仕事を進めるわけではないです。更に組織が大きくなると業務が細分化します。その中でいかにうまくコミュニケーションをとっていくかがポイントになります。専門分野が異なる設計者同士の技術的な対話を促進することも、我々の得意領域です。
コトラ:
御社のプロジェクトの推進体制を教えて下さい。
村山様:
基本的にはチームで動きます。通常2〜3名、場合によっては6名ぐらいで動くこともあります。
コトラ:
親会社である電通国際情報サービスとの協業については、いかがでしょうか。
村山様:
ITIDは営業部隊を持っていませんので、最初の引き合いは電通国際情報サービスが担当します。その後は電通国際情報サービスと連携して、案件獲得していきます。また、最近は電通国際情報サービスだけではなく、電通とも組織横断でいろいろな協業が増えています。
コトラ:
電通国際情報サービスグループはISIDビジネスコンサルティング、エステックなどコンサルティング会社が複数ありますが、コンサルティング会社間の連携はあるのでしょうか。
村山様:
はい、あります。それぞれのコンサルティング会社の強みが異なりますので、強みを生かした連携で、お客様の課題解決をしています。また、各社の現場リーダークラスが毎週定例会議を実施し、案件などさまざまな内容を共有しています。
ITIDで活躍している方のバックグラウンド
コトラ:
次に、どのようなバックグラウンドの方が、どのような形で活躍されているか、お話いただけますか。
村山様:
ほとんどのメンバーが、製造業での研究開発の経験をバックグラウンドに持っています。自身が製造業時代に抱いた課題を解決するためにソリューションを構築して、それをベースにコンサルティングし活躍するメンバーもいますし、自動車業界出身なら自動車の領域での知見を活かしながら活躍するメンバーもいます。
コトラ:
製造業の技術職は、開発、生産技術、製造、品質保証などいろいろな職種がありますが、製造業時代の職種は、採用に関係するものでしょうか?
村山様:
ITIDのコンサルティングの中心は、開発部門向けなので、採用時には開発経験を持つ方を採用するケースは多いです。但し、製造業の課題解決や社会課題解決など明確な個人ビジョンがある方は所属に関係なく採用しています。
コトラ:
グループ会社との協業やチームで動くなどあるとのことなので、コミュニケーション能力は大事なポイントになりますでしょうか。
村山様:
そうですね。私達は人を相手に仕事をしておりますので、コミュニケーション能力は重要です。
入社後のコンサルティング実績
コトラ:
村山様が入社されて以降の、ITIDの実績をお聞かせください。
村山様:
業界的には、自動車、自動車部品、電機・精密などが多いですが、最近は建設業、プロセス産業、サービス業など幅広い業種に対して、コンサルティング実績があります。また、自治体向けのまちづくりにも力を入れております。
コトラ:
非製造業やまちづくりの実績もあるとのことですが、製造業向けのコンサルティングノウハウのどのようなところが生かされているのでしょうか。
村山様:
2点あります。1つ目は、課題を見つけ出すためのアセスメント。ヒヤリングを通じて、問題を構造化し課題を見つけていくわけですが、ロジカルに考える能力は業種を問わずに使えます。2つ目は、課題や要件を検討するためのプロセスです。一見遠いと思われるかもしれませんが、まちづくりにも製造業で培った検討プロセスが適用できます。具体的には、まちを1つのシステムと捉えてどのような構成要素が必要かを考えていくイメージです。
ご自身とITIDの今後
コトラ:
次に、今後ご自身として、またはITID全体として、もしくは電通国際情報サービスグループとして実現していきたいことはありますか。
村山様:
ITIDは設立から20年が経ち、第二創業期に入っています。現在はコンサルティングという側面支援のスタイルが中心ですが、今後はそこの枠に留まることなく、私達もお客様と一緒に主体者になる、例えば事業会社をお客様と共に設立するなど、新しいコンサルファームの形を目指していきたいと思っています。私達だけではなく、電通グループ全体としても、同様の方向性になっていると思います。
コトラ:
グループ以外でも協業をするという未来もあるかと思いますが、どうでしょうか?
村山様:
新しいコンサルファームの形を目指すには当然、グループ以外の協業も増えてくると思います。既にまちづくりの案件では、銀行などと協業するケースもあります。
活躍されている方の特徴と独り立ちまでのプロセス
コトラ:
次に、入社後にご活躍されている方には、どういった特徴があるかお聞かせください。
村山様:
もともと製造業に対して課題感があって、その課題解決にチャレンジする意識の高い人が活躍しています。多少、生意気な方がちょうど良いと思っています。お客様も、プロジェクトを引っ張ってくれる人が欲しいから外部に頼んでいますので、調整タイプだと難しいケースもあります。多少、生意気、というのはそういうニュアンスです。
コトラ:
メーカーから転職してITIDで活躍している人は、仕事のスタイルも変わると思うのですが、独り立ちするまでのプロセスはいかがでしょうか。
村山様:
コンサルタント、シニアコンサル採用が中心になりますので、プロジェクトのワーキングリーダーの補助からスタートするケースが多いです。最初は、議事録を作成するやワーキングリーダーと協調して資料を準備するなどが仕事です。それが出来てくると、ワーキング自体の運営を任されるようになり、もう一段上がるとプロジェクト自体を運営する立ち位置になります。
コトラ:
独り立ちするまでに、つまずきがちなところは、いかがでしょうか。
村山様:
自分がやりたいことを持っていないとつまずくケースはあります。いろいろ経験するなかで、自分は何がしたいのか?「自分探し」に出てしまいます。
総合コンサルとの違い
コトラ:
ITIDと、総合コンサルとの大きな違いを教えて下さい。
村山様:
技術を理解するコンサル集団であるという点が大きいと思います。お客様の状況をお聞きする最初のインプットはお客様にとって手間であり、コストでしかないです。そのなかで、製造業出身者が多いITIDは、お客様の組織文化や技術、プロセスを熟知しています。実際に、お客様からITIDさんは理解が早いとご評価をいただくことが多いです。
コトラ:
次に、中途採用で入社された方のコミュニティ、別のプロジェクトを担当しているコンサルタントとの横のつながりはどうでしょうか。
村山様:
入社して日が浅い社員同士で、コンサルアカデミーという相互学習の場をつくっています。また、Uniposという、人を褒め合う投稿ができるツールを導入しています。例えば、資料作りありがとう、という具合に褒め合う、認め合う文化を形成しています。
更に、コロナ禍で現在はなかなか実施できていないのですが、ITIDチャンピオンシップ、通称アイチャンという仕組みがあります。さまざまな競技で社員同士で競う、というものです。コロナ前ですが、運動会をやったこともあります。ボウリング、謎解きゲームなどもありました。コロナ以降は、オンライン飲み会が主ですが。
こんな方に入社いただきたい
コトラ:
人材ニーズについてお伺いします。今後、どういう方に入社していただきたいですか。
村山様:
切り口は製造業でも、街づくりでもいいのですが、ここを変えてやろう、という強い思いの持ち主に、加わってほしいです。結果的に、持っている思いが、本人の原動力になって、伸びていきますから。
コトラ:
御社に興味を持っている転職活動中の方にメッセージをいただけますか。
村山様:
繰り返しになりますが、強い課題感を持っている方には、ぜひ応募していただきたいです。就業時間の20%は自身の研究開発活動に使う文化もあるので、自身のやりたいことが実現できる環境がITIDにはあります。
コトラ:
選考過程において、注意深く見ている点をお聞かせください。
村山様:
ロジカルであることは前提ですが、人を相手にする仕事なので、コミュニケーション能力も重視しています。また、自分の軸を持っているか、ということも注意して見ます。
日本の製造業への課題感
コトラ:
日本の製造業に対して感じる課題感はどうですか?
村山様:
日本の製造業は設立されてから、数十年あるいは100年を超える企業もあります。組織が大きくなって細分化され、自分のやる範囲が狭く、深くなっていっている。結果的に製品全体を見られる人がいない、ということが現場で起きています。もう一方で、どの製品や商品でも改良ベースで開発が進んでいますので、技術者がゼロベースで作る力が弱くなっているとも感じます。もうそろそろ、失われた40年になるのではないかと危惧しています。
それを解決していくのが、まさに我々のミッションだと思います。人、組織、プロセスを強化することで、復活してほしですし、その一助になればと思っています。
コトラ:
私も自動車メーカーで技術をやっていたので思うところがあります。お客様が求める性能とメーカーが必要と考える性能にギャップがあり、誰目線の開発なのだろうか?と悩むことがありました。
村山様:
開発者は、これも、あれも出来たら良いと思い、どんどん機能を追加しがちです。結果として、顧客にとって必要のない機能を入れてしまったり、コスト高になったりしていると思います。
コトラ:
海外、とくに中国系のメーカーが、ユーザー目線のものづくりをしていると感じられます。そのことに私は危機感を感じているのですが、海外のメーカーと日本のメーカーを比較した場合、どうですか。
村山様:
特に中国のメーカーは、スピード感がまったく違いますね。中国企業から、日本企業がやっている改革活動を教えてくれという依頼があったのですが、何かに向かうスピード感、やる気を強く感じました。そういう意味では、日本企業のスピード感の無さを感じます。大手企業とベンチャー企業が協業でなにかを実施しようとすると、そのスピード感に圧倒されるという話もよく聞きます。
コトラ:
我々から候補者を推薦する際に、こういう人を・・・というのはありますか。
村山様:
弊社に応募してくる方々は、他のコンサルティングファームにも応募することが多いと思います。日本のものづくりをなんとかしたい、自身の開発経験を活かしたコンサルティングがしたいとお考えの場合は、まず一度、弊社の採用面接を受けて頂きたいですね。ITIDの会社規模や社風を踏まえると、入社後のギャップも小さいと思います。私もそうだったので。
コトラ:
日本の製造業の技術力は、他国と比べてどう思われますか。
村山様:
劣ってはいないと思います。但し、自社の顧客がしっかり見えているかについては疑問を感じることがあります。顧客の価値が変化していることに気づかないため、これまでの延長線上で意思決定をしてしまっているケースは多いと思います。新事業のアイデア発想をすると、まさに起こるケースです。メンバーが選んだアイデアと役員が選んだアイデアが真逆だったりします。成功体験が大きいと、それをなかなか超えられないものです。過去の成功体験ではなく、今や未来の顧客を考えた意思決定が必要だと思います。
コトラ:
上司に提案しても、「お前の仕事はそこじゃない」と言われて終わる、それでやる気が出ないという例もあります。
村山様:
そうですね。VUCA時代の今だからこそ、企業は組織ビジョンとそこに働く人のビジションをしっかり考える必要があると思います。社員のエンゲージメントを高めることで、結果的に生産性は向上していくと思います。
コトラ:
丁寧にご回答いただきありがとうございました。