プロジェクトを成功に導く、業務分析の専門家「ビジネスアナリスト」

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断続的に変化する業務に対して、業務分析を通して、定常的なビジネスプロセスの管理・改善を行うビジネスアナリストについて解説します!

ビジネスアナリストとは

ビジネスアナリストとはビジネスアナリシス(業務分析)の専門家の総称です。
業務分析は、一般的に現状の業務の可視化や課題分析、業務設計などを指し、ビジネスアナリストは、業務の可視化、分析、設計などを行う専門家です。

ビジネスアナリスト普及の背景

2000年前後に、企業の事業や業務の分析を担う活動「ビジネスアナリシス(=業務分析)」が確立された後、その専門家である「ビジネスアナリスト」は、アメリカをはじめ欧米で普及し、今では一般的な専門職の1つとなっています。
2009年に、ビジネスアナリシスのナレッジ集であるBABOK (Business Analysis Body Of Knowledge)の日本語版が刊行されてから、日本でも徐々に認知度が高まってきており、ビジネスアナリスト育成を求める企業も増加中です。

さらに近年、日本では、ITプロジェクトを成功に導くための業務分析部門の専任人材として、ITを専門とした「ITビジネスアナリスト(ITBA)」の活躍が目立っており、様々な業界での需要が非常に高まっています。

ビジネスアナリストの種類

ビジネスアナリストには様々な種類があり、それぞれの業務内容や業務の幅によって、主に次の7つに分類されます。

ビジネスシステムアナリスト

主にIT部門に所属し、システム導入でのビジネス要求の把握や整理を行う。

ファンクショナル・ビジネスアナリスト

特定の業務機能(営業・経理など)に特化し、システム導入だけでなく、アウトソーシングや役割の見直し等を行う。

プロダクト・アナリスト

デジタルサービスが多く生まれているビジネスモデルをよく理解し、ビジネス部門とサービスの改善・設計を行う。

エンタープライズ・ビジネスアナリスト

変革専門部門(CoEのような部門横断的な組織)に所属し、社内での部門横断的な課題に対応する。

ビジネスアーキテクト

ビジネスプロセスの全体構造を管理する役割として、主に経営直下に置かれ、複数の取り組みを横断的に見ることで、重複や矛盾が起こらないように、包括的に管理する。

ビジネス・インテリジェンス・アナリスト

元々はBIを中心としたデータ分析を行っていたが、近年ではデータ分析の重要性が増し、さまざまな領域のデータ分析を行う。

ハイブリッド・ビジネスアナリスト

RPAなど非エンジニアでも提供可能なソリューションの出現により、ビジネスアナリシスだけに留まらず、従来エンジニアが行っていたソリューションまで一貫して提供する。

ビジネスアナリストの所属部門

ビジネスアナリストが既に普及している北米では、ビジネスアナリストがコンサルティング会社やSlerに置かれるのではなく、会社の規模に関わらず、各企業の中に置かれることが一般的となっています。各企業でのビジネスアナリストの所属部門は、IT部門が約50%、ビジネス部門が約30%、変革専門部門が約15%、その他の部門が約5%となっています。

ビジネスアナリストの役割

ビジネスアナリストには様々な種類があり、それぞれの活躍する部門や、プロジェクトの種類も多岐に渡りますが、ビジネスアナリストが果たす主な役割には、次のような共通点があります。

  • 客観的な立場で業務やサービスの可視化・課題分析・要件定義を行う
  • それぞれの関係者の要求を総合的に考慮し、新たなビジネスプロセスを設計する
  • ソリューションを導入するエンジニアに正確に要求を伝え、導入後は要求どおりのソリューションとなっているか検討する
  • プロジェクトのすべての関係部署、組織のコミュニケーションハブとなり、関係各所のスムーズな連携体制を構築する

プロジェクトが成功するかどうかは、プロジェクトの初期段階の「要件定義」が鍵を握っていると言っても過言ではありません。
この要件定義を取りまとめる役割を担うのがビジネスアナリストです。ビジネスアナリストは、関係各所と円滑かつ柔軟にコミュニケーションを取り、中立的な立場で要件定義を取りまとめ、プロジェクトを進めていくプロフェッショナルです。
専門知識や技術も活用しながら、関係各所のスムーズな連携のためにコミュニケーションを取ることがビジネスアナリストの大きな役割の一つです。
抽象的な経営の意図や市場のニーズを、具体的な要求・仕様にするためのサポートを行うことで、ビジネスプロセスの変革を目指します。ビジネスアナリストはまさに、ビジネスプロセス変革における「コミュニケーションハブ」と言えるでしょう。

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ビジネスアナリストに求められるスキル

ビジネスアナリシスの啓発を行うカナダの非営利団体「IIBA (International Institute of Business Analysis) 」は、ビジネスアナリストが実施すべきことをまとめた「BABOK (Business Analysis Body of Knowledge) 」を発行しています。
そのBABOKの中で、ビジネスアナリストについて、6つのコンピテンシー(職務や役割において優秀な成果を発揮する行動特性)が紹介されています。

ビジネスアナリストの6つのコンピテンシーは4つのソフトスキルと2つのテクニカルスキルに分類されており、ソフトスキルのほうがやや比重が重くなっています。

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ソフトスキルは「分析思考と問題解決」「行動特性」「コミュニケーションスキル」「対人関係スキル」です。これらのソフトスキルは、すぐに身につくものではなく、現場での実務経験を通して身につけるものであり、様々なケースに対応していく中で、スキルを磨いていく必要があります。

一方で、ハードスキルは、ビジネスアナリストの仕事の基盤です。変革プロジェクトでコミュニケーションのハブとしての役割を担うには、業界・業種・業務を正確に理解し、業務可視化やシステム開発の方法論や具体的なソリューションを知っていたり、モデリングツールを使いこなせるなど、知識も必要です。
ビジネスアナリスト初心者の方には特に、比較的短期間で取得でき、現場ですぐに役立つハードスキルは、ぜひとも積極的に身につけておきたいところです。

ビジネスアナリストの日本の現状と今後

世界的には以前から普及しており、一般的となっている「ビジネスアナリスト」ですが、日本ではビジネスアナリストの役割が実態として存在しているにも関わらず、職業としてはまだ十分に確立されていない段階です。
現状としては、SEやコンサルタント、経営企画部担当者、情報システム部門担当者などがビジネスアナリストと同様の役割を担っているケースが多いですが、ビジネスアナリストが職業として確立されていないために、様々な問題が起こっています。

まず、専門的な人材育成体系の確立が難しくなっているという問題があります。
さらに、本来ビジネスアナリストが担うべき業務の担当者が決められなかったり、責任の所在が不透明になったり、本来重要であるはずの業務そのものが抜け落ちたりしてしまうこともあります。

ITプロジェクト成功のために、的確な要件定義を行うことが重視される中で、このような問題を改善するために、日本でも、ビジネスアナリストの「職業としての確立」が急務となっています。

まとめ

前項で述べたように、日本のシステム開発プロジェクトの成功率向上のためにも、ビジネスアナリストの認知度や需要は今後さらに高まっていくものと予想されています。

このようなビジネスアナリストの需要の高まりによって、これまで他の仕事と兼務してビジネスアナリストの役割を担ってきた「潜在的ビジネスアナリスト」の人たちが、「専任ビジネスアナリスト」として活躍することが期待されています。

そして、日本企業で働く潜在ビジネスアナリストが、専任ビジネスアナリストとして活躍できるように、企業ではいくつかの改革が進められています。

まずは、企業における、変革のためのビジネスプロセスの管理・改善を専門に扱うポジションの設置です。ビジネスアナリストという役割が社内で確立されることによって、責任感を持って仕事に取り組み、企業変革に最大限貢献したり、ノウハウを蓄積することで、次の仕事にも効率的に生かしていくことができます。

次に、ビジネスアナリストを育てる専門的な教育体系の構築です。
これまで、企業内ではビジネスアナリストを育てる専門的な教育体系はほとんど用意されてきませんでした。しかし、様々なステークホルダーのコミュニケーションのハブとなってビジネスの変革を推進するビジネスアナリストには、自社のビジネスの仕組みや展望を理解し、経営層から現場レベルまで、ビジネスを俯瞰することのできる視点が求められます。
これらの習得には、一定の経験と、BABOK・BPMNなど体系化された専門知識を学ぶ必要があるため、企業側が専門的な教育環境を提供することで、ビジネスアナリストを育てていこうという動きがあります。

さらに、常に変化する業務に対する、定常的なビジネスプロセスの管理・改善です。
従来、日本企業では業務を変化するものとして捉え、定常的にビジネスプロセスを管理・改善していくという思想や仕組みがありませんでした。
しかし、必要に迫られた時のみプロジェクトやチームを立ち上げ、対応するという、これまでの仕組みでは、ビジネスアナリストの社内育成や、プロジェクトの成功には繋がりません。
そこで、近年では、業務とは常に変化し定常的に管理していくべきものだという認識を持ち、ビジネスアナリスト育成のための、専門知識・スキル・キャリアパス・部門間コミュニケーションの取り方といった全社的な組織の仕組みや風土づくりを積極的に行っている企業がでてきました。

このような改革を通して、徐々に企業内で、プロジェクトの成功に寄与する「専任ビジネスアナリスト」は増えていくものと思われます。
社内でビジネスアナリストを育成し、継続的に自社のビジネスプロセスを管理して行くことは、効率的なプロジェクト成功のために、大変有意義なことです。

これからは、日本でも日常的に、自社の専任ビジネスアナリストにビジネスプロセスの管理・改善を任せつつ、大きな取り組みの際や、外部の知見を生かしたい際は、社外のビジネスアナリストたちにも頼り、効率的なプロジェクトの成功を目指していく時代となっていくものと思われます。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)