はじめに
企業のリスクマネジメントやガバナンス体制を支えてきた内部監査・内部統制の実務経験は、IR(投資家対応)や経営企画といった経営の意思決定支援業務においても高く評価されます。近年、非財務情報開示やサステナビリティへの対応が強化される中で、法令遵守・透明性・説明責任に関する知見はIR業務において極めて重要な要素です。本記事では、内部監査・統制部門からIR・経営企画へのキャリアチェンジの道筋を詳しく解説します。
1. IR・経営企画の主な業務
- 中期経営計画や年度計画の策定
- 業績進捗・KPIモニタリング、予実分析
- 投資家・アナリスト対応、決算説明資料の作成
- 統合報告書・有価証券報告書の作成支援
- ガバナンス・ESG・非財務領域の情報開示
2. 内部監査・統制出身者が向いている理由
- 全社横断的な視野:組織のリスクと課題を多面的に理解している
- ドキュメンテーション力:監査調書や内部統制報告書作成の精度が高い
- 法令遵守とガバナンスへの理解:開示資料やIR説明内容の信頼性に貢献
- 部門間調整スキル:調査・指導業務を通じて培った対話力・折衝力
3. 求められるスキルセット
- 財務諸表の理解、経営分析(ROE、ROIC、EPSなど)
- IRツール(TDnet、EDINET、有報作成支援システム)の使用経験
- ガバナンス・内部統制報告書に関する知識
- 定量・定性のバランス感覚を持つ資料構成力
- 英語での開示資料作成経験があれば尚良し
4. 転職成功のためのステップ
- 内部監査・統制での成果を「経営視点」に翻訳しなおす
- IR開示内容(決算説明資料、有価証券報告書、統合報告書)を研究
- 経営分析指標の理解・業界情報収集を強化
- 定性・非財務情報(ガバナンス、ESG等)の扱いに慣れる
- 「リスク管理 × 経営管理」型人材としてアピールする
5. 志望動機(例文)
これまで内部監査・統制部門にて、J-SOX評価、全社的な業務フローの整備、ガバナンス向上に向けた改善提案などを行ってまいりました。経営層へのレポーティングや社内調整を通じて、企業価値向上や透明性のある対外発信に貢献する業務に関心を抱くようになり、IR・経営企画の分野でのキャリアを志望するようになりました。 今後は、内部統制で培った横断的視点と課題抽出力を活かして、経営層・投資家双方に対して価値ある情報発信を行い、貴社の中長期成長に貢献してまいりたいと考えております。
6. 職務経歴書(サンプル)
【氏名】山本 彩香(仮名) 【連絡先】sayaka@example.com / 080-xxxx-xxxx 【職務要約】 上場企業の内部監査室にて、J-SOX対応、業務監査、リスクアセスメント、統制環境整備を中心に担当。全社的な業務改善提案の実行支援や、ガバナンス文書整備に従事。現在はIR・経営企画領域へのキャリアチェンジを目指し、財務分析や開示情報のスキルを強化中。 【職務経歴】 株式会社○○(2018年4月~現在) 所属:監査・統制部門 職位:主任 ■主な実績: ・J-SOXに基づく統制評価(業務プロセス文書化、Walkthrough等) ・業務監査年間計画の策定と実施(10拠点以上) ・監査報告書作成と経営層への改善提案(採用率80%以上) ・ガバナンス文書(統制方針、監査方針等)の整備・運用 【資格】 ・公認内部監査人(CIA) ・日商簿記2級 ・TOEIC 790点 【学歴】 ○○大学 商学部 卒業(2018年3月)