財務アドバイザリー(FAS)業務を通じて培った企業価値評価、財務モデリング、デューデリジェンスの知見は、ESGアナリストにとっても非常に重要です。特に、統合報告やサステナビリティ評価の文脈では、財務と非財務を統合的に捉える力が求められます。環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の観点から企業を分析するESGアナリストは、今後の金融業界においてもますます重要な役割を担う存在です。本記事では、FASからESGアナリストに転職するためのステップと、志望動機・職務経歴書の記載例をご紹介します。
目次
1. FASとESGアナリストの違い
項目 | FAS | ESGアナリスト |
---|---|---|
目的 | M&A・再編等における財務分析と企業価値評価 | 企業のサステナビリティ評価とリスク・機会分析 |
主な分析対象 | 財務諸表、事業計画、資本政策 | ESG関連開示情報、統合報告書、非財務データ |
視点 | キャッシュフロー・財務リスク | 環境・社会課題、人的資本、ガバナンス構造 |
2. 活かせるスキルと経験
- 財務モデリング、バリュエーション
- ビジネスリスク分析と業界構造理解
- 統合報告やサステナビリティ情報の読み解き力
- 企業との対話(インタビュー・DD)の経験
- 論理的思考力と定量・定性分析の統合
3. 転職を成功させるステップ
- ESG評価の指標体系を理解:MSCI、Sustainalytics、FTSEなどの評価機関の評価項目を学ぶ
- 自らの財務分析力を非財務テーマにも適用:人的資本、CO2排出量、企業倫理などの可視化に挑戦
- サステナビリティレポート・統合報告書の読み込み
- 志望動機では“財務×ESG統合分析”への関心を具体的に記述
4. 求められる知識と補完方法
- GRI、SASB、ISSBなどの開示基準
- サステナビリティ格付手法(相対評価・絶対評価)
- インパクト評価、ダブルマテリアリティ
- 業界別マテリアリティと非財務KPIの読み解き
- 参考書籍:『ESGアナリスト入門』『統合思考と報告』
5. 職務経歴書の記載例
氏名:高橋 慎一 生年:1987年生まれ ■職務要約: 大手FASにて財務デューデリジェンス、企業価値評価、財務モデリング等のアドバイザリー業務に約10年間従事。統合報告書の読み込みやESG項目の財務インパクト分析にも関心を持ち、今後はESGアナリストとして非財務情報を定量化・評価し、投資家の意思決定に資する情報提供を目指したい。 ■職務経歴: ○○有限責任監査法人 FAS部門(2013年4月〜現在) ・M&Aにおける財務デューデリジェンス(製造業、IT、物流等) ・事業価値評価(DCF法、マルチプル法) ・ESGレポートと財務情報の統合分析支援 ・統合報告書分析プロジェクトへの参加 ■保有資格: ・公認会計士(日本) ・CFA Level 2 合格 ・TOEIC 905点 ■学歴: 東京大学 経済学部 卒(2011年3月)
6. 志望動機の記載例
FASとして企業価値の算定に携わる中で、財務的な健全性だけでは測れない企業の本質的な価値に興味を持つようになりました。ESGアナリストとして、財務と非財務の両面から企業を評価し、社会的価値と経済的リターンの両立に貢献する情報提供者を目指したいと考えています。
7. まとめ
FAS出身者の分析力と財務的視点は、ESGアナリストとしてのキャリアにおいて大きな武器になります。非財務要素の定量化と統合的な企業評価に関心のある方にとって、ESGアナリストは魅力的な挑戦となるでしょう。