監査法人での会計監査経験を通じて得た財務諸表への深い理解、企業内部統制や開示体制の評価スキルは、IPO支援業務を担うコーポレートファイナンス領域において極めて有効です。企業の上場準備を支援するポジションでは、会計の専門性に加えて、事業理解やガバナンス体制の構築、資本政策に関する知見が求められます。本記事では、会計監査からIPO支援型のコーポレートファイナンス業務に転職するためのステップ、必要スキル、志望動機と職務経歴書の例をご紹介します。
目次
1. 会計監査とIPO支援の違い
項目 | 会計監査 | コーポレートファイナンス(IPO) |
---|---|---|
目的 | 財務諸表の適正性担保 | 企業の上場準備と成長支援 |
業務内容 | 監査計画立案、監査手続実施、報告書作成 | 資本政策設計、内部管理体制構築、開示支援 |
関与部門 | 経理・内部監査・経営陣 | 経営者・管理部門・証券会社・監査法人 |
2. 活かせるスキルと経験
- 会計基準・開示制度への深い理解
- 財務三表の構造把握と数値精査スキル
- 内部統制評価および改善提案の経験
- Excel・PowerPointを用いた分析・資料作成能力
- ステークホルダーとの折衝力・文書対応力
3. 転職を成功させるステップ
- IPO支援の業務範囲を把握する:資本政策、証券審査対応、内部統制整備、事業計画作成支援など
- 監査経験を“攻め”の支援に転換する意識:チェックから企業成長への伴走支援への意識転換
- 上場基準やJ-SOXの基本を再確認:東証規程や金融商品取引法への理解を深める
- 志望動機では“企業成長に貢献したい”思いを言語化:監査とは異なる、前向きな支援への意欲を強調
4. 求められる知識と補完方法
- 資本政策(種類株式、SO、VC対応など)
- 事業計画策定支援・中期経営計画の理解
- 上場審査の基準・プロセス(東証、JSOX)
- IR・ディスクロージャー制度
- 参考:『IPO実務のすべて』『上場支援の実務ハンドブック』など
5. 職務経歴書の記載例
氏名:佐藤 絵里 生年:1990年生まれ ■職務要約: 大手監査法人にて会計監査業務に約8年間従事。上場・非上場企業への会計監査、内部統制評価、上場準備会社への監査導入支援などに取り組む。開示制度・内部統制に精通し、今後は企業の成長を伴走するコーポレートファイナンス業務への転身を志望。 ■職務経歴: ○○有限責任監査法人(2016年4月〜現在) ・上場企業(製造・IT・小売等)への会計監査実務(年次・四半期) ・上場準備企業への監査導入支援、経理体制改善支援 ・J-SOX評価対応(統制設計レビュー、評価報告書作成) ・有価証券報告書・短信等の開示チェック支援 ■保有資格: ・公認会計士 ・TOEIC 870点 ■学歴: 一橋大学 商学部 卒(2013年3月)
6. 志望動機の記載例
これまで会計監査の立場から企業の財務情報を精査してきましたが、今後はより経営に近い立場で企業の成長を支援する側に立ちたいと考えるようになりました。とくにIPO準備の過程では、会計だけでなく、資本政策や統制・開示体制の整備など多面的な支援が必要であり、監査経験を活かせるフィールドだと確信しています。貴社のコーポレートファイナンス部門において、企業の上場実現に向けた価値提供に取り組みたいと考えております。
7. まとめ
会計監査で培った制度対応力や数値に対する慎重な目線は、IPO支援における信頼あるパートナーとしての基礎となります。企業の成長を支える立場にステップアップしたい方にとって、コーポレートファイナンスは魅力的なフィールドです。