企業分析や業界調査を通じて得た知見を、政策立案、社会課題解決、学術的知見の蓄積といった形で発展させたい──。リサーチ・アナリストから調査・研究職への転職は、“ビジネス”から“社会・公共知の創造”へと軸を広げるキャリアチェンジでもあります。本記事では、調査・研究職への転職を目指すアナリスト経験者が押さえるべきステップ、求められるスキル、志望動機や職務経歴書の記載例を紹介します。
目次
- 1. リサーチ・アナリストと調査・研究職の違い
- 2. 活かせるスキルと経験
- 3. 転職を成功させるステップ
- 4. 求められる知識と補完方法
- 5. 職務経歴書の記載例
- 6. 志望動機の記載例
- 7. まとめ
1. リサーチ・アナリストと調査・研究職の違い
項目 | リサーチ・アナリスト | 調査・研究職 |
---|---|---|
目的 | 投資判断支援、業績予測、株価見通し | 政策提言、社会課題の実態把握、将来予測 |
分析対象 | 企業、業界、市場 | 制度、社会構造、経済・産業・地域 |
成果物 | レポート、モデル、プレゼン資料 | 研究報告書、白書、論文、政策資料 |
2. 活かせるスキルと経験
- データ収集・可視化・定量分析スキル
- 仮説立案から検証までのリサーチ力
- エビデンスに基づく文章化・レポーティング力
- 社会・経済・産業動向に対する俯瞰力
- 関係者インタビューやヒアリング設計力
3. 転職を成功させるステップ
- 関心分野を明確化:地域経済、労働政策、デジタル政策など、軸となる領域を定める
- 定量+定性両面の研究姿勢をアピール:ファクトに基づく構造把握+ストーリー構築の力を棚卸し
- 研究機関・コンサル・NPOなど多様な調査機関を視野に:民間・公的機関それぞれの役割を整理
- 学術的な情報発信の訓練:政策提言や論文調の構成で発信実績を作る
- 志望動機に「社会貢献×分析」の軸を:パーパス型転職理由を明確にする
4. 求められる知識と補完方法
- 官公庁政策文書の構造と記載言語(例:白書、予算案)
- 統計解析・アンケート分析(SPSS/Rなどもプラス)
- 研究倫理・引用・学術調査の作法
- 論文構成(背景・問題提起・仮説・調査・考察)
- 参考:総務省統計局、日経リサーチ、NIRA、JILPTなどの公開資料
5. 職務経歴書の記載例
氏名:岡田 未来 生年:1990年生まれ ■職務要約: 証券会社にて約7年間、リサーチ・アナリストとして企業財務分析、業界トレンド調査、政策動向の投資影響分析に従事。投資家向け分析資料に加え、官庁・研究機関との共同調査にも関与。今後は中立的立場から社会課題の本質に迫る研究職に挑戦したく、シンクタンク等への転職を志望。 ■職務経歴: 〇〇証券株式会社(2016年4月〜現在) ・食品・流通・エネルギー業界の業績調査・見通し分析 ・ESG・SDGsに関する定量データ収集とインサイト提示 ・統計局・厚労省データを活用した産業別雇用推移分析 ・官民連携調査(地域×再エネ導入可能性調査) ・アナリストレポート月5本、講演・セミナー登壇 年10回 ■保有資格: ・証券アナリスト ・統計検定2級 ・TOEIC 860点 ■学歴: 東京大学 教養学部 卒(2013年3月)
6. 志望動機の記載例
これまでアナリストとして企業や制度、地域経済の実態を分析する中で、調査・研究の力によって「社会の未来を見える化すること」に強いやりがいを感じるようになりました。自らの分析力をより中長期的・公益的な視点から活かしたく、政策立案や社会課題分析に携わる貴社の調査研究職を志望いたしました。事実と構造の把握力、仮説構築力、わかりやすい資料作成力を活かして、社会に資する知見を提供していきたいと考えております。
7. まとめ
リサーチ・アナリストとしての定量的な分析能力と構造的な把握力は、調査・研究職でも大きな強みになります。「未来のために社会を観察し、伝える」という視点を持つことで、リサーチ職の価値はさらに高まります。社会課題に向き合い、分析で変化を起こすキャリアへ。今こそ一歩を踏み出しましょう。