プリセールスとして経験を積んだ方の中には、「より上流工程に関与したい」「経営課題の解決に直接貢献したい」といった思いを持ち、ITコンサルタントへの転身を考える方も多いのではないでしょうか。プリセールスとITコンサルは似たスキルセットを持ちつつも、役割の重心や立ち位置が異なります。本記事では、プリセールス出身者がITコンサルタントへ転職するための具体的なステップと、職務経歴書や志望動機の記載例まで、転職を成功に導くポイントを解説します。
目次
- 1. プリセールスとITコンサルの違いとは
- 2. プリセールス経験がITコンサルで活きる理由
- 3. 転職を成功させるためのステップ
- 4. キャリアチェンジに必要なマインドセット
- 5. 職務経歴書の書き方
- 6. 志望動機の作り方
- 7. まとめ
1. プリセールスとITコンサルの違いとは
プリセールスとITコンサルは、いずれもクライアントに技術的な知見を提供する立場ですが、その立ち位置や求められる成果は異なります。
項目 | プリセールス | ITコンサルタント |
---|---|---|
主な業務 | 提案支援、デモ、要件整理 | 業務改善提案、要件定義、戦略策定 |
関与フェーズ | 提案〜契約直前 | 構想策定〜導入・定着支援 |
視座 | 製品を軸にした提案 | 顧客課題を起点とした提案 |
2. プリセールス経験がITコンサルで活きる理由
プリセールスとして培ったスキルは、ITコンサルでも高く評価される傾向があります。特に次のような点が強みとなります。
- 顧客課題のヒアリングと論点整理能力
- ソリューションの要件定義と技術翻訳力
- 社内外ステークホルダーとの調整力
- 提案資料作成やプレゼン能力
さらに、複数製品やモジュールを横断して提案した経験は、業務横断的に課題を捉えるコンサル的な視座と近く、特にERPやSaaSプロジェクトを扱った経験者はそのまま活かしやすいです。
3. 転職を成功させるためのステップ
プリセールスからITコンサルへ転職するためのステップは次の通りです。
- 業界構造の理解:コンサル業界(総合/戦略/SIer系コンサルなど)の違いを把握する
- 業務スコープの把握:要件定義・業務整理などの「上流工程」に自分がどれだけ関与できるかを確認
- 経験の棚卸し:自分の強みがどのように「課題解決」に役立ったかを言語化する
- プロジェクト型思考への転換:「提案」→「導入」→「定着」までの全体像を意識した思考の訓練
- 面接対策:システム視点ではなく、業務課題起点で語れるかがカギ
4. キャリアチェンジに必要なマインドセット
ITコンサルタントとして活躍するには、マインドセットの転換が不可欠です。
- 「自社製品を売る」から「顧客課題を解く」への視点転換
- 課題が曖昧な中でも、仮説思考で前に進める力
- 答えのない問いに対して、解決策を提案する柔軟性
- ITではなく“業務”を主語にした発言・提案
このような姿勢が、コンサルタントとしての信頼につながっていきます。
5. 職務経歴書の書き方
ITコンサルを目指す場合は、単なる製品知識ではなく、「顧客課題の本質を捉えた提案経験」や「提案から導入までの一貫した関与」が記載のポイントです。
【記載例(抜粋)】
- クラウドERP(SAP/Salesforce等)のプリセールスを担当。商談数は年間100件超
- 顧客業界:製造、物流、小売、金融など多業種に対応
- 提案時には、業務フロー分析を基にTo-Beプロセスの設計支援を実施
- 案件に応じて、要件定義フェーズにも参画し、実装部門との橋渡しを担当
- 特に複数部門横断の業務改善提案が評価され、受注率を15%改善
6. 志望動機の作り方
志望動機では、「プリセールスでの経験をどうITコンサルとして活かせるか」「なぜ今ITコンサルなのか」を整理することが大切です。
【志望動機 例文】
私はこれまでクラウドERPのプリセールスとして、業務課題のヒアリングから解決策の提案、要件定義支援まで一貫して担当してまいりました。特に、単なる製品紹介に留まらず、お客様の業務プロセス全体を俯瞰した上で、最適な改善案を検討・提案するスタイルを重視してまいりました。こうした経験を、より上流の課題解決に活かし、お客様の変革パートナーとして伴走したいと考え、ITコンサルタントへのキャリアチェンジを志望しております。
7. まとめ
プリセールスからITコンサルタントへの転職は、ロジカルな課題解決力と顧客起点の思考力が求められます。一方で、プリセールス経験は業務理解・提案能力・顧客折衝スキルといった面で非常に親和性が高く、しっかりと準備をすれば十分に通用します。
ぜひ、自らの経験を「課題解決の視点」で再構成し、コンサルタントとしての新たなキャリアを切り拓いてください。
【職務経歴書(サンプル)】
氏名:佐藤 花子 生年:1990年生まれ ■職務要約: SaaSベンダーにて5年間、クラウドERP製品のプリセールスを担当。業務ヒアリングから要件整理、提案書作成、製品デモ、導入後の定着支援まで幅広く対応。業務部門との橋渡し役として、業務・ITの両面から改善提案を実施。ITコンサルとして、より上流の課題設定・業務改革支援に挑戦したく転職を志望。 ■職務経歴: 株式会社クラウドリンク(2019年4月〜現在) ポジション:プリセールス・スペシャリスト ・年100件以上の商談にて提案支援 ・業務フローの課題抽出および業務改善案の設計支援 ・Salesforce導入支援案件では要件定義フェーズから参画 ・多部門統合プロジェクトにおける業務要件の優先順位整理・ファシリテーション ■学歴: 早稲田大学 商学部卒(2013年3月)