イギリスの平均給与はどのくらい?地域ごとの格差と業種別年収を徹底解説

イギリスの平均給与とは?最新データを解説

イギリス全体の平均給与(2023年データ)

イギリスの平均給与は最新のデータによると、年間の平均収入は約30,000ポンド前後とされています。この数値はイギリス全土の広範な統計を基に算出されたものであり、業界や地域によって差があることを考慮する必要があります。例えば、ロンドンなどの都市部では平均年収が全国水準よりも大幅に高い傾向があります。一方で地方都市や辺境地域になると、この平均値を大きく下回るケースも少なくありません。

給与の中央値と平均値の違い

給与に関するデータを見る際、「平均値」と「中央値」の違いを理解しておくことが重要です。イギリスの平均給与は30,000ポンド前後とされる一方で、中央値は約28,000ポンドと少し低めです。平均値はデータの総和を対象者数で割った値で、一部の高所得者が平均値を押し上げる傾向があります。一方、中央値は全体のデータを並べた際にちょうど中央に位置する値であり、より多くの労働者の実態を反映しているといえます。このように、給与データが示す情報を正しく解釈するためには、それぞれの性質を理解することがポイントです。

イギリスにおける最低賃金の概要

イギリスでは最低賃金が政府によって法的に定められており、その金額は年齢や雇用形態によって異なります。2023年時点では、23歳以上の労働者に適用される「ナショナル・リビング・ウェイジ(全国生活賃金)」は時給10.42ポンドです。対象年齢が低くなるにつれて最低賃金の額も低くなる仕組みです。また、雇用主にはこの最低賃金を守る義務があり、違反があった場合には高額な罰金が科されます。最低賃金の水準は物価水準や経済状況に応じて見直されるため、今後も上昇する可能性が高いと考えられます。

20代〜40代での給与の変化

イギリスでは、年代ごとに平均年収に差があります。最新データによると、18〜21歳の平均年収は約22,932ポンドですが、22〜29歳になると約30,316ポンドと大幅に増加します。さらに30〜39歳では37,544ポンド、40〜49歳では約40,040ポンドに達し、40代が最も高収入の年代となっています。しかし、50代以降は年収がやや低下し、60歳以上では最盛期から約15%程度減少する傾向が見られます。このように、キャリアの進展や経験の累積によって収入は上昇し、40代をピークに徐々に緩やかに減少するパターンを示しています。

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地域ごとの給料格差:ロンドンと地方の違い

ロンドンの平均年収と物価の現状

ロンドンはイギリス内で最も平均年収が高い地域の一つです。2023年のデータによると、ロンドンの平均年収は約51,257ポンドで、地方都市と比べて突出しています。しかし、物価の高さがその給与のメリットを打ち消す要因となっています。ロンドンでは家賃が非常に高く、1ベッドルームのマンションでも月1,800ポンド程度が必要とされています。また、交通費はゾーン1-2の定期券で月181ポンド、食費は自炊中心でも月200〜300ポンドかかるため、生活費全体が非常に高額です。そのため、年収70,000ポンド以上が快適な生活を送るための目安とされています。

地方都市の給与水準と生活費

イギリスの地方都市では、ロンドンほどの平均年収は見られませんが、その分物価も抑えられるため生活のしやすさが特徴です。例えば、地方都市では年収は平均して30,000〜35,000ポンド程度ですが、家賃がロンドンに比べて大幅に安く、月600ポンド程度で部屋を借りられる場合もあります。交通費や食費もロンドンに比べて割安なため、支出が抑えられる分、ロンドン以上に家計管理がしやすいといえます。一方で、地方の職種によっては昇給やキャリアアップの機会が限られている場合もあり、地域によって労働条件に違いがある点に注意が必要です。

北イングランドと南イングランドの給与格差

イギリス国内では、北イングランドと南イングランドでも給与に大きな差があります。南イングランド、特にロンドン周辺では平均年収が40,000ポンド以上となることが多い一方、北イングランドでは平均年収が30,000ポンドを下回る場合も見られます。この格差の背景には、南部に多くの企業の本社や高収入の職種が集中していることが挙げられます。また、地元経済の規模や産業構造の違いも影響を与えています。北部では生活費が比較的安く抑えられるというメリットがあるものの、雇用機会や給与水準の面で南部に比べると不利な状況にあります。

スコットランドやウェールズの給与状況

スコットランドやウェールズでは、イングランドと比較して給与水準が若干低い傾向にあります。スコットランドの平均年収は約33,000〜35,000ポンド程度と言われており、ウェールズはそれよりやや低めの水準です。これらの地域では、生活費も比較的安価で、特に住宅費はロンドンや南イングランドに比べて格段に抑えられます。一方で、これらの地域では高収入の職種が限られることから、キャリアアップのためにはイングランド南部への移住を検討する人も少なくありません。スコットランドでは公共サービスの充実度が高いため、生活費全体については安定した支出管理が可能です。

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業種別年収:高収入の職種とは?

医療、IT、金融業界の収入の傾向

イギリスでは、医療、IT、金融業界が高収入を誇る主要な分野として挙げられます。特に医療分野では医師や歯科医などの専門職の平均年収が非常に高く、初任給でも50,000ポンド(約965万円)を超えることが一般的です。IT業界では、AIやクラウドコンピューティングの需要が拡大しており、システムエンジニアやソフトウェア開発者の年収は44,000ポンド(約850万円)以上に達するケースも少なくありません。また、金融業界においてはロンドンが世界的な金融センターであることもあり、バンカーやファンドマネージャーの年収はトップ層で100,000ポンド(約1,930万円)を超えることもあります。これらの高収入職種は、高い専門知識や資格が求められるため競争も激しいと言えます。

製造業・教育現場の収入と課題

製造業や教育現場は、イギリスにおいて社会基盤を支える重要な職種ですが、給与水準は他の業種に比べて低い傾向にあります。製造業では、熟練工や技術者の年収が平均30,000ポンド(約580万円)前後であり、特に地方での給与はさらに低めになることがあります。一方、教育現場では、教員の初任給が約25,000ポンド(約480万円)とされていますが、経験を重ねても上昇幅が限定的であり、過重労働などの問題が課題として挙げられます。これらの職種は、生活費の高い地域では経済的な不安を感じることが多いとされています。

初任給が高い職種とその背景

イギリスでは、初任給が高い職種として医学や歯学、さらにはコンピュータサイエンスといった分野が注目されています。たとえば、医師や歯科医の初任給は50,000ポンド近くに達し、高い需要に支えられています。また、IT分野ではスタートアップ企業や大手テック企業による人材争奪が激化しており、44,000ポンド前後の初任給が一般的です。これらの職種の特徴として、専門的な教育や訓練が求められる一方で、大卒後すぐに高い専門性を発揮できるスキルを持っている場合が多く、それが高い初任給につながっています。

平均給与が高い専門職ランキング

イギリスで平均給与が高い専門職のトップランキングには医療、金融、IT業界が軒を連ねています。具体的には、医師や歯科医、薬剤師がトップクラスの収入を誇り、これらの専門職は60,000ポンド(約1,160万円)前後の年収が期待されます。次に、銀行業界のアナリストや金融コンサルタントが平均年収50,000ポンド以上と高収入を得ています。また、IT分野ではデータサイエンティストやAIエンジニアが急速に注目を集め、年収50,000ポンドを超えるケースも増加中です。これらの職種はいずれも高い専門性やスキルが求められるため、就業までに相応の学歴や経験が必要となる点が特徴的です。

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イギリスでの給与の全体的な動向と課題

英国の給与推移とインフレの影響

イギリスの平均年収は長期的には緩やかに上昇傾向にあります。しかし、近年のインフレの影響により生活コストが急激に上昇し、実質的な購買力は低下している状況です。たとえば、2025年には週間平均賃金が716ポンドになると予測されていますが、同時に物価や家賃の上昇も続いているため、給与の増加が生活の向上に直結しないケースが多く見られます。このような状況では、特にロンドンのような都市部で生活する人々への経済的なプレッシャーが強まっています。

所得格差がもたらす社会的な課題

イギリスでは、高所得層と低所得層の格差が深刻な社会問題となっています。地域別にもロンドンをはじめとする都市部と地方での賃金格差が大きく、北イングランドやウェールズでは平均年収が顕著に低い傾向にあります。この所得格差は教育、医療、住宅環境など、生活の質にも直接的な影響を与えています。また、所得の不平等が社会的不満を増幅させ、政治的な対立の一因ともなっています。これにより、社会の安定性を損なう可能性が懸念されています。

今後の給与水準に関する予測と見通し

専門家の間では、イギリスの給与水準は今後も徐々に上昇すると予測されています。2027年には週間平均賃金が765ポンドに達するとの見込があり、特に医療やITなどの需要が高まる業界ではさらなる収入アップが期待されています。しかし、その一方で、経済状況やブレグジット後の影響が依然として不確実であり、低所得層への支援や生活コストのコントロールが求められます。また、近年の円安の影響から海外在住日本人にとってレートの問題は課題となり、将来的にはグローバルな給与水準の見直しが求められる可能性があります。

働き方改革と新しい雇用形態の可能性

イギリスではコロナ禍を契機にリモートワークやフレキシブルな働き方が浸透し、新しい雇用形態が注目を集めています。この流れは、特に育児や介護を担う人々にとって大きな利点となっています。また、多様な働き方が認められることで、地方での雇用促進や育児コストの軽減などの連鎖的な効果が期待されています。一方で、デジタル分野や専門職では高いスキルが求められるため、労働者の再教育やスキルアップが必要不可欠です。働き方改革とともに給与面でのバランスを整え、すべての人が公平に生活できる制度の構築が求められています。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)