ファンド管理からベンチャーキャピタルに転職するためのステップ

ベンチャーキャピタル(VC)は、スタートアップ企業への投資とその成長支援を行う「投資家」であり、将来のイノベーションを見出し、創出する仕事です。リスクを取りながらも、資本政策・成長戦略・EXIT戦略に深く関与し、日本の産業創出を支える職業として注目されています。

一方で、ファンド管理職として投資信託や私募ファンドの運用管理、制度対応、報告書作成などに従事してきた方が、近年VC業界へ転職する事例も増えています。バックオフィス業務で培った「資本構造理解」「正確なドキュメンテーション」「制度リテラシー」は、ベンチャーキャピタルにおいても不可欠なスキルだからです。

本記事では、ファンド管理からベンチャーキャピタルに転職するためのステップや求められるスキル、志望動機・職務経歴書のサンプルを解説します。

ベンチャーキャピタルの主な業務

  • 投資先企業の選定(ソーシング・面談・DD)
  • 投資実行(バリュエーション、契約締結、資金実行)
  • 投資先支援(経営支援、財務アドバイス、人材紹介など)
  • ファンド運営(LP対応、IR、決算報告、キャピタルコール)
  • EXIT対応(IPO支援、M&A、持分売却など)

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ファンド管理職が活かせるスキル

  • ファンドスキームの理解:匿名組合、投資事業有限責任組合、信託スキーム等の知識
  • ドキュメント作成・報告対応力:運用報告、監査資料、開示資料の精度と対応力
  • 制度対応経験:投信法、FIEA、EDINET/XBRLなどの規制理解
  • LP対応・ガバナンス意識:投資家への説明責任、ファンド運営における規律

転職のためのステップ

ステップ1:ベンチャーキャピタル業務の全体像を把握する

VCでは投資家(LP)への説明責任と、起業家(投資先)への支援の両立が求められます。フロント業務だけでなく、投資実行・モニタリング・EXITまでのライフサイクル全体を理解することが大切です。

ステップ2:自身の経験を“ファンド運営”と“スキーム理解”に変換する

  • 「収益管理・残高管理」→「キャピタルコール・分配金管理」
  • 「制度対応・開示資料」→「LP報告・決算レター・監査資料作成」
  • 「ドキュメント管理」→「投資契約・株主間契約書管理」

ステップ3:スタートアップへの興味・支援マインドを整理する

「事業そのものへの関心」「創業期支援への情熱」があるかは面接で必ず問われます。特定業界やプロダクトへの関心・社会的インパクトへの共感なども言語化しておきましょう。

ステップ4:志望動機と職務経歴書で「守りから攻めの管理」への意志を示す

「ファンドの安定運営を支える視点を、ベンチャー成長の起点に転換したい」というメッセージを明確に伝えることがカギです。

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志望動機(サンプル)

私はこれまで投信・年金ファンドの管理業務を担当し、残高・収益管理、制度対応、開示資料の作成、運用報告などを通じて、運用現場と制度対応の両立を支えてまいりました。特にファンドの信頼性や透明性を確保するという使命の重要性を日々実感してきました。

一方で、スタートアップという未知に挑戦する事業の成長を支えたいという気持ちが強くなり、ベンチャーキャピタル業界に関心を持つようになりました。これまでのファンド管理で培った制度理解・ガバナンス感覚・ドキュメント精度を活かし、貴社ファンドの運営業務や投資先支援の基盤強化に貢献したく、志望いたしました。

職務経歴書(サンプル)

氏名:川村 友梨(仮名)
現職:○○投信投資顧問株式会社(2017年〜現在)
職種:ファンド管理部

主な業務

  • 公募・私募投資信託の基準価額管理・日次残高処理(40本超)
  • 目論見書・運用報告書の作成、販売会社対応
  • EDINET提出書類の作成・XBRL編集・FIEA対応
  • 信託銀行・運用チームとの業務設計・改善プロジェクト
  • 監査法人・社内監査対応、制度改正時の社内手続き整備

実績

  • 制度改正に伴うXBRL仕様変更に対応し、提出期限遵守を達成
  • 運用報告レポートのテンプレート統一化を推進し、作成工数を30%削減
  • 私募ファンド新設時にスキーム設計支援・開示文書を0→1で作成

スキル・知識

  • Excel(関数、ピボット)、EDINET、XBRL、Word、PowerPoint
  • 投資事業有限責任組合、匿名組合、投信制度、資本政策基礎
  • 証券アナリスト2次試験合格、日商簿記2級

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まとめ:「制度と精度」のプロから、「挑戦を支えるVC人材」へ

ファンド管理の業務で培った「透明性を支える力」「制度との対話力」「資料作成の正確性」は、ベンチャーキャピタルにおけるファンド運営やLP対応において、大きな価値となります。

今度は、事業の成長という“変化と挑戦”を支える側へ。スタートアップ支援の現場に飛び込み、ファンド運営の根幹から価値創出に携わる──そんなキャリアを、ぜひこのタイミングで実現してみてください。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)