企業の持続可能性(サステナビリティ)と非財務領域におけるリスク・機会の管理(ESG:環境・社会・ガバナンス)は、経営戦略の中核テーマとして注目を集めています。社会課題を起点とした事業の再構築や、脱炭素経営、人的資本マネジメントへの取り組みは、もはや一部の大企業にとどまらず、あらゆる業界で求められる共通の経営課題となっています。
そうした潮流の中で、近年はビジネスデベロップメント(事業開発)のスキルを活かし、サステナビリティ・ESGコンサルタントへとキャリアチェンジを目指す人が増えています。実際、ESG推進は戦略・事業開発・ステークホルダー連携など多面的な視点が必要とされ、事業開発経験者がその中心を担うことができるフィールドです。
本記事では、ビジネスデベロップメント職からESG・サステナビリティ領域への転職を成功させるためのステップや、求められるスキル、志望動機・職務経歴書の具体例までを詳しく解説します。
サステナビリティ・ESGコンサルタントの役割とは?
- ESG経営戦略の立案支援(マテリアリティ・KPI策定)
- 開示対応支援(TCFD、GRI、ISSB、人的資本開示など)
- 人的資本マネジメント、ダイバーシティ推進、人権リスク対応
- 脱炭素・循環型経済などサステナビリティ施策の実行支援
- 新規事業開発、CSV(共通価値創造)支援
ビジネスデベロップメント出身者が活かせるスキル
- 社会課題からの事業化視点:CSVやインパクトビジネス構想との親和性が高い
- 社内外連携・ステークホルダー調整力:多部門・外部パートナーとの協業経験
- 戦略構想力と実行力:KPI設定、ロードマップ設計、事業化の流れに精通
- 非財務と財務の接続力:ビジネス指標とサステナ指標の統合視点
転職のための4つのステップ
ステップ1:ESGと自分の経験の接点を整理する
以下のような業務経験があれば、それはすでにサステナビリティ領域と接点があります。
- 再エネ・サーキュラーエコノミー事業開発
- 人的資本領域(組織開発・リスキリング・DEI)
- ステークホルダー対話(IR・PR・地域連携)
- サステナ関連のKPI設計、報告体制構築
ステップ2:知識を補完する(ESGフレームワークの習得)
- TCFD、TNFD、ISSB、GRI、CDPなどの国際基準の理解
- ダブルマテリアリティ、スコープ1〜3、人的資本可視化
- EU CSRD、日本のサステナ情報開示制度
これらの用語・制度・フレームワークに触れ、実務との接続方法を学んでおきましょう。
ステップ3:資格・実績・ポートフォリオを整える
- ESG検定、GRI認定講座、サステナブルファイナンス基礎講座
- これまで関わったESG系プロジェクトの概要・成果を言語化
- マテリアリティ分析やKPI策定のフレームを用いた実績整理
ステップ4:志望動機の構築
「事業の視点」から「持続可能な社会への貢献」へと軸足を移す志望理由を構築しましょう。共通のキーワードは、「変革・共創・影響力・中長期的視点」です。
志望動機(サンプル)
私はこれまで再生可能エネルギー関連のビジネスデベロップメント業務に携わり、社会課題と経済価値を接続するビジネス創出に取り組んでまいりました。複数部門・地域自治体・パートナー企業との協業を通じて、ESG視点の重要性と複雑さを実感するとともに、より体系的・横断的に企業の変革を支援したいという想いを抱くようになりました。
御社のサステナビリティコンサルティングは、制度対応にとどまらず、経営・事業・人材といった多層的な観点での統合支援を提供しており、まさに私が目指す方向性と一致しています。これまでの事業開発経験を活かし、クライアントと伴走しながら中長期的な価値創出を支援したく、貴社を志望いたしました。
職務経歴書(サンプル)
氏名:田中 美咲(仮名)
現職:●●株式会社(事業開発本部/2020年4月〜現在)
役職:アソシエイトマネージャー(新規事業・サステナ領域担当)
主な業務実績
- 再エネ事業(太陽光×教育)の立ち上げ・パートナー交渉・行政連携
- グループ全体のサステナビリティ推進プロジェクトに従事(GRI基準に基づくマテリアリティ分析を支援)
- 人材部門と連携し、人的資本KPIの社内導入検討(エンゲージメント指標の可視化)
- 中長期ESG戦略草案の企画書を役員会向けに作成
スキル・強み
- 複雑な課題の構造化とソリューション提案力
- マルチステークホルダーとの合意形成(社内外)
- 社会課題を起点とした事業構想力
- PowerPoint/Excel/BIツールによるレポート作成スキル
保有資格
- ESG検定(中級)
- 日商簿記2級
- TOEIC 865点
まとめ:事業開発の経験を、“未来をつくる変革支援”へ
サステナビリティやESGの推進は、単なる法対応や社会貢献ではなく、企業の競争力そのものに直結する戦略テーマです。ビジネスデベロップメントとして新しい価値を企画・推進してきた方にとって、社会的インパクトを広く・深く支援するサステナビリティコンサルタントは、自然なキャリアの次の一歩とも言えるでしょう。
あなたの“変革を起こす力”を、企業のサステナブルな未来に活かす──今こそ、その準備を始めてみませんか?