ビジネスデベロップメント(事業開発)は、企業の成長戦略を描く中で新たな顧客やパートナーとの関係を構築し、ビジネス機会を創出する極めて重要な職務です。一方、アカウントマネージャーは、既存顧客を長期的に支援・育成し、安定的かつ継続的な収益基盤を築いていく「関係性の深耕」職種です。
近年では、ビジネスデベロップメントで得た企画力・顧客理解力を活かして、アカウントマネジメント領域にキャリアチェンジをするプロフェッショナルが増えています。特に、SaaS、ITサービス、コンサルティング、広告業界などでは、既存顧客との「解約防止」「アップセル・クロスセル」の重要性が高まっており、アカウントマネージャーの役割が拡大しています。
本記事では、ビジネスデベロップメントからアカウントマネージャーに転職するためのステップ、活かせるスキル、志望動機・職務経歴書の書き方までを丁寧に解説します。
アカウントマネージャーとは?
アカウントマネージャー(AM)は、既存顧客に対して継続的な価値を提供し、契約更新・追加提案・関係強化を通じてLTV(顧客生涯価値)最大化を担う職種です。
主な業務
- 顧客課題の把握とリレーション構築
- アップセル・クロスセルの提案
- 契約更新・解約リスク管理(CSMとの連携)
- 社内プロジェクト推進(営業・開発・CSとの連携)
- KPI管理(売上、継続率、NPSなど)
ビジネスデベロップメント出身者が活かせるスキル
- 顧客理解力:仮説構築・ニーズ探索スキルは既存顧客深耕にも有効
- 提案設計力:高単価提案、企画書作成、課題解決型の営業スキル
- 社内外の調整力:パートナー連携、アライアンス、提案の社内調整など
- 成果に向けた推進力:案件クロージングまでの推進経験
転職ステップ
ステップ1:アカウントマネジメントの特徴を理解する
「新規開拓」から「既存顧客深耕」へと視点をシフトし、以下のような違いを認識することが重要です。
- 関係構築の深さ重視(長期的視点)
- 売上の継続性・ストック型ビジネスモデルとの親和性
- 契約継続の責任と数値目標管理(継続率、解約率など)
ステップ2:自分の経験をアカウントマネジメント視点に翻訳する
新規営業経験を以下のように言い換えると伝わりやすくなります。
- 「顧客ニーズの探索」→「既存顧客のアップセル機会発見」
- 「複数関係者との合意形成」→「既存顧客内の多部署調整」
- 「大型提案・カスタマイズ提案」→「LTV最大化を意識した個別対応」
ステップ3:KPI意識・データドリブンな姿勢のアピール
- 「受注率」「商談数」→「継続率」「チャーン率」「NPS」へと目線を移す
- CRM/SFA活用経験(Salesforce, HubSpotなど)があれば記載
- PDCAサイクルで顧客の成果を伴走する姿勢を強調
ステップ4:志望動機と職務経歴書の整合性
志望動機では、「顧客と長期的な信頼関係を築きたい」「プロダクトに寄り添いながら支援したい」というスタンスをベースに構築するのが効果的です。
志望動機(サンプル)
私はこれまでSaaS企業のビジネスデベロップメント部門にて、新規顧客開拓を中心に提案活動に取り組んでまいりました。業界横断的に課題をヒアリング・整理し、初回提案からクロージングまでを担当する中で、より深く顧客に入り込み、中長期的に成果をともに目指すような働き方に魅力を感じるようになりました。
御社のアカウントマネジメント職は、プロダクトや顧客に寄り添いながら、単なる取引関係ではない真のパートナーシップを築けると感じ、志望いたしました。顧客課題の発掘・課題整理・社内調整といった私の強みを活かし、LTV向上に貢献してまいります。
職務経歴書(サンプル)
氏名:佐藤 陽子(仮名)
現職:株式会社●●(IT系SaaS企業)
在籍期間:2019年4月 ~ 現在
所属部署
事業開発本部 ビジネスデベロップメント部
業務内容
- ターゲット業界向けの新規営業(月15件の商談を担当)
- 顧客ニーズヒアリング、提案資料作成(PowerPoint)
- カスタマイズ案件の社内調整(CS・開発チームと連携)
- 受注後のオンボーディング支援(初期設定・活用支援)
実績
- 年間受注金額:1.5億円(チーム1位)
- 商談から初回受注までの平均リードタイム:30日 → 20日へ短縮
- 案件化率(初回商談→受注):20%以上維持
スキル・ツール
- Salesforce、Slack、HubSpot、Notion
- Excel(VLOOKUP、ピボット)、Google Workspace全般
- 提案資料作成、プロジェクト調整、レポートスキル
まとめ:関係構築力を“LTV最大化”という次のステージへ
ビジネスデベロップメントで培った「仮説思考」「顧客理解」「推進力」は、アカウントマネジメントの現場でも非常に強力な武器になります。特に、SaaSやBtoBビジネスにおいては、既存顧客との関係性がそのまま業績に直結する時代。単なる営業ではなく、戦略的なアカウントパートナーとしての役割が今後ますます求められていきます。
長期視点で顧客と伴走したい、戦略的に顧客の成果創出に貢献したいという想いを持つ方にとって、アカウントマネージャーは魅力ある次のキャリアです。あなたの“提案力”と“関係構築力”が、次のビジネスの核を創っていくかもしれません。