サステナビリティが企業経営の中核課題となる中、金融機関や投資家の間でも「持続可能性」と「社会的インパクト」を重視する動きが加速しています。サステナブルファイナンスやインパクトファイナンスは、その中心を担う次世代の金融領域であり、従来型のストラクチャードファイナンスで培った専門性を活かしながら、社会的価値の創出に貢献できるキャリアとして注目されています。
1. サステナブルファイナンス/インパクトファイナンスとは
これらのファイナンスは、経済的リターンだけでなく、環境や社会に対するポジティブな影響(インパクト)を明示的な目的とした資金提供です。具体的には以下のような金融手法が含まれます:
- グリーンボンド/ソーシャルボンドの発行支援
- サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)のアレンジ
- インパクト投資ファンドの運営・助言
- 再エネ、教育、ヘルスケアなどの社会的事業への投資
2. ストラクチャードファイナンス経験者の強み
- 複雑なスキーム設計、キャッシュフロー分析、リスク構造把握など高度な金融知識が活用可能
- プロジェクトファイナンスや不動産証券化など、社会インフラとの親和性が高い
- 投資家やアレンジャーとの折衝経験が活きる
3. 求められるスキルと姿勢
- ESG基準、インパクト評価指標(IRIS+、GIIN、TCFDなど)への理解
- 非財務リスクに対する感度と定量化能力
- 「社会的意義」と「経済性」のバランスを取る戦略的思考
- 投資先との共創的なリレーション構築力
4. 転職に向けたステップ
- 既存案件の再整理:再生可能エネルギー、地方創生、教育系プロジェクトなど、社会的要素を含むファイナンス案件を棚卸
- インパクトへの関心の言語化:なぜこの領域に進みたいのかを明確に
- 資格取得・学び直し:CFA ESG投資資格、GIIN講座、GRI/TCFD対応研修など
- 業界理解:インパクトファンドや開発金融機関(DFI)などの事例を学ぶ
5. 成功事例
国内大手銀行で航空機ファイナンスやPFI案件のアレンジを行っていた30代の方が、再生可能エネルギーのアセットを多数扱った経験と、GIINセミナーへの参加経験を活かして、外資系のインパクト投資ファンドに転職。現在は、アジア新興国向け教育投資案件のソーシングおよび評価を担当。
6. 志望動機例
これまでストラクチャードファイナンス領域において、社会インフラ案件やアセットファイナンスなどに携わり、複雑な金融スキームの組成・実行を担ってまいりました。その中で、再エネや社会インフラといった分野が持つ社会的意義に共感し、より一層、社会課題の解決に資する金融の在り方を模索してきました。今後は、サステナブルファイナンスやインパクトファイナンスを通じて、金融の力で社会を前進させる事業に主体的に関わっていきたいと考えております。貴社のように社会的リターンと経済的リターンの両立を追求する組織において、私のスキルと情熱を活かしたいと強く希望しております。
7. 職務経歴書サンプル
【職務要約】 ストラクチャードファイナンスにて約7年間、プロジェクトファイナンス、不動産ノンリコースローン、アセットファイナンスの案件を担当。再生可能エネルギーやPFI案件など、社会性の高い案件に多数従事。サステナブルファイナンス領域への関心を深め、CFA ESG資格を取得済。 【職務経歴詳細】 ●○○銀行(2016年4月〜現在) 所属:ストラクチャードファイナンス部門 役職:アソシエイト〜AVP ・風力・太陽光発電等、再エネ事業のPF案件アレンジ ・教育PFI、医療施設ファイナンス、地域活性化ファンドなど社会的プロジェクトに関与 ・資産流動化スキームの設計、投資家向け資料作成、リスク分析 ・行内のESG検討会に参加、CFA ESG Investing取得 【保有資格・スキル】 ・CFA ESG Investing ・日商簿記2級 ・財務モデリング、デューデリジェンス ・英語(TOEIC 880) 【希望職種】 ・サステナブルファイナンス/インパクトファイナンス分野の投資業務・アレンジ業務
8. おわりに
ストラクチャードファイナンス出身者にとって、サステナブル/インパクトファイナンスの世界は、社会課題への貢献と金融スキルの高度な融合が求められるやりがいのある領域です。「社会を変えるファイナンス」を志す皆様にとって、この転職は単なるキャリアチェンジではなく、価値観の進化でもあります。自らの専門性を社会の未来に結びつける、次の一歩を踏み出してみませんか。