ITガバナンスの重要性が高まる中、システム監査の専門性を活かして内部監査や内部統制の分野へキャリアチェンジを目指す方が増えています。企業活動全体に目を向け、リスク管理・統制の仕組みを支える役割として、内部監査・内部統制は重要なポジションです。本記事では、システム監査のご経験をベースに、内部監査・内部統制への転職を実現するためのステップを詳しく解説します。
1. なぜシステム監査出身者が内部監査・内部統制に適しているのか
- IT統制に対する理解が深く、全社統制(Entity Level Control)との接続性を論理的に説明できる
- ITシステムのリスクアセスメント経験が、業務プロセス全体のリスク管理にも転用可能
- データ分析(CAAT)やアクセス権限管理に関する知識を持ち、監査手続の高度化に貢献可能
2. 内部監査・内部統制で求められるスキルと視点
- 業務プロセス全体を俯瞰できる視点(財務・業務・法務リスク含む)
- 業務部門との円滑なコミュニケーションとファシリテーション能力
- J-SOXやISO27001、COSOフレームワークなどに関する理解
- 内部監査報告書の作成スキル(指摘→原因→改善提案の論理構成)
3. 転職活動におけるアピールポイント
- プロセス横断的なITリスク理解:システム監査で蓄積した論点を、全社リスクマネジメントの視点で再整理
- J-SOX対応経験の有無:IT全般統制だけでなく、業務処理統制における関与実績があると強み
- 非IT領域への関心:業務プロセスの可視化やヒアリング業務への柔軟な適応性をアピール
- CIA(公認内部監査人)やCISAなどの資格取得:意欲と専門性を証明
4. スキルの補完方法
- CIAや内部統制実務検定などの資格取得
- 業務フロー設計や業務部門ヒアリングの研修参加
- 内部監査や統制報告書のサンプル分析
5. 成功事例
システム監査法人にて大手顧客のJ-SOX IT全般統制の監査を4年間担当。非IT領域にも関心を持ち、社内で自発的に業務フロー見直しプロジェクトに参加。これを機に、上場企業の内部監査室へ転職。現在は業務プロセス監査を主導しつつ、IT統制の専門性を活かしてグループ全体の統制高度化にも貢献。
6. 志望動機例
これまでシステム監査人として、主にJ-SOX対応におけるIT全般統制や業務システムに対する監査を担当してまいりました。近年は、ITのみならず業務プロセスそのもののリスクマネジメントや統制のあり方に関心を持ち、社内での改善活動にも積極的に取り組んでおります。今後は、内部監査の立場から経営の健全性を支える役割を担いたく、貴社のように多様な業務領域を持ち、全社的な統制強化に力を入れている企業で、自身の経験と知見を活かしたいと考えております。
7. 職務経歴書サンプル
【職務要約】 監査法人にてシステム監査を4年間担当。J-SOX対応支援やIT統制評価に加え、近年は業務フロー改善や業務ヒアリングにも従事し、全社的な内部統制に対する理解を深めてきた。 【職務経歴詳細】 ●○○監査法人(2019年4月〜2023年12月) 所属:システム監査部門 役職:スタッフ〜シニア ・上場企業グループに対するJ-SOX対応支援(IT全般統制、IT業務処理統制) ・IT統制文書レビュー、RACM作成、テスト計画策定・実施 ・内部統制報告制度における整備状況評価・運用評価の実行 ・統合監査における業務部門とのインタビュー支援 ・社内業務フロー見直しプロジェクトに参加(非監査業務) 【保有資格・スキル】 ・CISA(公認情報システム監査人) ・内部統制実務検定2級 ・Excel、PowerPoint、Visio(業務フロー作成) ・英語(TOEIC 850) 【希望職種】 ・内部監査(業務監査、IT監査) ・内部統制構築・モニタリング
8. おわりに
システム監査出身者にとって、内部監査や内部統制の領域は自然なキャリア拡張の一歩となります。技術的知見に加え、全社的なリスクへの視野を持つことで、より経営に近い立場からの貢献が可能となります。これまでの経験を最大限活かし、次のフィールドでの活躍を目指しましょう。