日本の平均年収と中央値の違い:知っておきたい“本当のリアル”

日本における平均年収と中央値とは

平均年収と中央値の定義と違い

平均年収とは、データ全体の合計金額をデータ数で割った値のことを指します。例えば、数人の年収がそれぞれ異なる場合、それぞれを合計して人数で割ることで値を算出します。一方、年収の中央値とは、データを大きさ順に並べた際にちょうど真ん中に位置する値のことを言います。

この二つには大きな違いがあります。特に注意すべき点は、平均年収は高所得者の影響を受けやすいという点です。一部の非常に高い年収が全体の平均を引き上げるため、実際には多くの人々が平均より低い年収で生活している可能性があります。一方、中央値は極端な値の影響を受けにくいため、一般の生活者の収入感覚に近いものを反映しています。

統計データで確認される日本の平均年収

日本における平均年収は、国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査」によると約460万円とされています。この値は正社員を中心とした労働者の給与やボーナスの合計額から算出されたものです。平均年齢は47.0歳、平均勤続年数は12.5年という背景も示されており、この結果が現代の日本社会における基準と考えられています。

しかし、この平均値は高所得者の存在によって全体像が歪んでいる可能性があります。実際、多くの働く人々がこの水準まで届いていないことが分かっています。

現時点の中央値が示すリアルな実態

年収中央値に注目すると、平均年収との違いがさらに鮮明になります。人材サービス会社dodaの調査によれば、日本の正社員の年収中央値は380万円です。この数字は平均年収の460万円を大きく下回っています。さらに、性別ごとに見ると、男性の中央値は420万円、女性の中央値は340万円と、男女間の格差も浮き彫りになっています。

このデータから、より多くの人々が中央値付近に位置し、高所得者が平均値を大きく引き上げていることが分かります。つまり、中央値の方が生活の「リアル」を表している重要な指標と言えます。

平均と中央値が異なる理由:分布の歪みとは

平均年収と年収中央値が異なる主な理由は、収入分布の歪みがあるためです。日本の年収分布においては、低所得者層が多く、高所得者が少数存在するという「右偏分布」の形をとっています。このため、ごく一部の高所得者が平均を大幅に引き上げ、実際に多くの人々が感じている収入とのギャップを生じさせています。

例えば、年収1,000万円以上の人々は少数派でありながらも、全体の平均に大きな影響を及ぼします。一方で、中央値では分布の真ん中を取り出すため、高所得者や低所得者の極端な値の影響を受けにくいのです。この違いが、平均年収と中央値にズレを生む理由です。

過去から現在までの推移に見る傾向

過去数十年のデータを見ると、日本の平均年収と中央値は緩やかな上昇傾向を示してきました。ただし、近年ではその伸びが鈍化している傾向があります。たとえば、国税庁の調査から分かる平均年収は、リーマンショックやコロナ禍の影響を受けて一時的に停滞した時期もあるものの、長期的にはおおむね460万円前後で推移しています。

一方で、年収中央値も若干の上昇は見られるものの、その伸び幅は限定的です。このような背景から、経済成長や企業の業績が一部の業界や高収入層に偏っている可能性が示唆されます。特に、男女間や地域ごとの差異も影響している点は今後も注目すべきポイントです。

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年齢別・性別で見る平均と中央値の違い

20代・30代の年収データとリアル

20代と30代はキャリア形成の基盤を築く重要な時期ですが、この年代の平均年収と年収中央値には明確な違いが見られます。20代の年収中央値は345万円であり、30代に進むと400万円へと上昇します。一方、国税庁やdodaの調査による平均年収はこれよりも高くなる傾向がありますが、これは高収入者のデータが平均値を押し上げるためです。

特に20代では新卒から数年以内の影響もあり、全体の分布を見ると中央値に近い収入が大半を占めています。ただし、30代になるとスキルや経験を活かして収入が上昇する一方で、分布の幅も広がるため、平均年収との差がさらに顕著になります。この世代のリアルな年収感を把握するには、中央値の方が参考になります。

40代・50代のデータに見る男女の格差

40代や50代は収入のピークに差し掛かる年代です。この年代の年収中央値はそれぞれ450万円と500万円であり、20代や30代に比べて大幅に上昇しています。ただし、ここで注目すべき点は、男女間の差が一層大きくなることです。

40歳時点では男性の平均年収は540万円、女性は392万円と、約150万円もの開きがあります。また、dodaの調査によれば、中高年層の給与差は役職や働き方の選択肢の違いから顕著になっていきます。特に50代では男性の年収がさらに伸びる傾向が見られるのに対し、女性は比較的なだらかな上昇に留まることが多いです。このような傾向から、男女間の収入格差がこの年代で顕著であることが確認できます。

性別による格差が生じる要因

年収における性別格差の背景には、いくつかの要因が考えられます。一つ目は、依然として残る「管理職」の男女比率の違いです。厚生労働省のデータによれば、管理職に就く男性の割合は女性よりも圧倒的に高く、これが高年収層の分布に影響を与えています。

また、女性はライフステージにおいて結婚や子育てなどの影響を受けやすく、その結果として非正規雇用や短時間労働を選択する割合が高まることも要因の一つです。このような労働スタイルの選択が、長期的な収入差を生む結果につながっています。さらに、一部の業界では依然として男性優位の給与体系が見られることも、性別格差を拡大させる要素となっています。

学歴や職業別の影響を考慮した年収差

学歴や職業による違いも年収において大きな影響を与えます。例えば、dodaの調査では医師の年収中央値が855万円、たばこ業界が700万円と突出している一方で、サービス業や一部の販売業では中央値が400万円を下回るケースもあります。このように職種ごとの年収差は非常に顕著です。

また、学歴については、大学卒業や大学院修了者の方が高収入なポジションに就く割合が高い傾向にあります。ただし、必ずしも高学歴が高収入に直結するわけではなく、本人の職業選択やスキル、経験の積み重ねが長期的な収入に影響を与えることが重要です。特に急速なデジタル化の進展により、ITやデータ分析といった特定スキルを持つ人材が高い年収を得る傾向にあるため、これらの分野でのスキル取得が今後の年収向上の鍵となる可能性があります。

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地域別に見る年収差:都市と地方の格差

都道府県別の平均年収と中央値一覧

日本全国の都道府県別に見ると、平均年収と中央値には明確な地域差があります。たとえば、東京都や神奈川県といった主要都市圏では、平均年収が高く、600万円前後の高水準となっています。一方、地方の多くの県では、平均年収が400万円台にとどまる傾向があります。加えて、年収中央値においても、この地域差が如実に現れています。中央値は実際の生活水準を反映しやすい指標として注目されていますが、多くの地方では300万円台後半で推移しているのが一般的です。

都市圏の年収はなぜ高いのか

都市圏における高い平均年収の背景には、産業構造や労働市場の違いがあります。例えば、東京都や大阪府では、IT業界や金融業、コンサルティング業などの高所得層が多い産業が集積しており、それが平均年収の押し上げ要因となっています。また、これらの業界に従事する労働者のスキルや経験値が高いことも、都市圏の平均年収が地方と比べて高い理由の一つです。同時に、大手企業が本社を構えることにより、高額な給与を受け取る正社員が多いことも平均年収を引き上げる要因となっています。

地方での分布:中央値が示す現実

地方においては、高所得層が少ないため、平均年収が全国平均を下回ることが多く、年収中央値も低めに推移しています。中央値を見ることで、地方の典型的な給与水準が想像しやすくなります。一例として、地方に住む50代の勤続年数が長い正社員であっても、東京の中央値よりも低いケースが少なくありません。しかし、地方では都市圏ほどの競争が少なく、職場環境が安定している場合が多いため、生活の安定を重視する人にとっては魅力的な選択肢となることもあります。

地域ごとの生活コストと相対的な年収感

地域ごとの年収差を考慮する際、生活コストも見逃せない重要なポイントです。都市圏では家賃や物価が高く、生活コストも比例して高くなるため、高い平均年収や中央値であっても可処分所得はそれほど多くない場合があります。一方、地方では生活コストが低いことから、実質的な生活満足度が都市圏と変わらない、あるいは上回る可能性もあります。例えば、地方では住宅費が都市圏の半額以下に抑えられる場合もあり、特に家庭を持つ人にとっては、大きなメリットとなることがあります。

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平均年収や中央値が私たちに伝えるもの

自分の立ち位置を知る基準とは

平均年収や中央値は、自分の立ち位置を知るための重要な指標となります。平均年収は社会全体の収入水準を示し、中央値は実際の生活感に基づいたより現実的なデータを提供します。たとえば、日本の正社員の年収中央値が380万円というデータは、収入分布の “真ん中” にいる人がどの程度の収入を得ているのかを示しており、自分の年収がこの範囲に収まっているかどうかを知ることで、自身の経済状況を相対的に把握することができます。

日本の賃金格差の中で考える未来

日本では平均年収と中央値の差が賃金格差を浮き彫りにしています。この差は高所得者の影響により平均年収が上昇している一方で、多くの人が中央値付近に集中していることを意味します。このような状況は、個人の努力だけでは解決しにくい構造的課題を示しています。未来を考える上では、教育やスキルアップ、政府の政策を通して、より公平な分配が行える仕組みづくりが重要です。

収入向上のためにできること

収入を向上させるためには、個人レベルでの取り組みが鍵となります。スキルアップや資格取得、需要の高い分野への転職など、年収を上げるための手段はさまざまです。特に、日本の年収中央値を見ると年齢や性別による違いが大きいことがわかります。自身の強みを理解し、それを活かせるキャリアプランを描くことで、収入増加につながる可能性は高まります。また、副業や資産運用など、複数の収入源を持つことも効果的です。

個人レベルで活用できる情報分析

平均年収や中央値といった年収データは、生活設計やキャリアプランを考えるときの指標となります。このデータを分析し、自分がどの範囲に位置しているかを知ることで、目標設定がしやすくなります。また、例えば都道府県別や年代別のデータを比較すれば、転職や引っ越しの検討材料としても活用できます。適切な情報収集を行い、それを分析することで現状改善のヒントが得られるでしょう。

海外と比較して見える日本の特徴

日本の平均年収や中央値は、海外と比較することでその特徴や課題がより明確になります。例えば、アメリカやヨーロッパと比べると、日本では年収中央値が低めであることが指摘されており、その背景には男女間の賃金格差や長時間労働文化が大きな影響を及ぼしています。一方で、日本は雇用の安定性が高い傾向があり、その点が他国に比べて優れていると評価されています。このような国内外の比較は、日本が抱える課題や改善すべき点を明確に示し、より良い未来を築くための参考となります。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)