コトラ（広報チーム） 
リース業界の現状と基礎知識
リース業界の定義と仕組み
リース業界とは、企業や個人が必要な設備や機器を購入するのではなく、リース会社から一定期間借り受ける契約形態を提供する産業です。リース契約の特徴は、利用者が初期投資を抑えながら設備を使用できることや、資産管理の効率化が図れる点です。リースにはファイナンス・リースとオペレーティング・リースの2種類があり、それぞれ使用目的や契約条件に応じて選択されています。
主要プレイヤーと市場規模
リース業界は安定的な需要が見込まれる一方で、上場企業の競争が激化している魅力的な市場です。業界の市場規模は約8兆円とされており、オリックス（銘柄コード: 8591）や三菱HCキャピタル（銘柄コード: 8593）などの大手企業が市場を牽引しています。特に、オリックスはリースにとどまらず、保険や信託など幅広い金融サービスを展開しており、2021年の売上高は2兆2927億円と業界トップを誇ります。また、三井住友ファイナンス＆リースや東京センチュリーといった企業もそれぞれ1兆円を超える売上高を記録しており、高い存在感を示しています。
リース業界の主なサービス分類
リース業界では提供されるサービスが多岐にわたりますが、大きく分けると「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類されます。ファイナンス・リースは、契約期間中にリース物件の購入代金全額が回収される仕組みで、主に長期的な設備投資に利用されます。一方、オペレーティング・リースは所有物件を短期間提供するもので、自動車やIT機器、場合によっては再生可能エネルギー関連機器などにも適用されています。また、リース物件が多様化しており、環境配慮型の機器やシェアリングサービスとの連携も注目されています。
リースとレンタルの違い
リースとレンタルは似ているように見えますが、契約期間や利用目的などに明確な違いがあります。リースは、長期的な利用を目的とし、主に企業が設備投資の代替手段として利用することが多いです。一方、レンタルは短期間の利用に適しており、契約条件が柔軟な点が特徴です。たとえば、オフィスで使用される複合機の導入では、長期間使用する場合はリース契約を選択し、必要に応じて中古品や短期利用を求める場合はレンタルサービスを利用するケースが一般的です。このように、利用者のニーズに応じてリースとレンタルが使い分けられています。
リース業界を取り巻く課題と機会
シェアリングエコノミーの影響
シェアリングエコノミーの台頭は、リース業界に新たな影響を与えています。例えば、自動車や機械設備を所有せずに共有することを選択する企業や個人が増えることで、リースサービスの需要が変化しています。このような社会的な潮流は、リース業界にとって一部の市場で競争を激化させる一方、新たなビジネスモデルを構築する機会にもなります。上場企業であるオリックス等は、既にシェアリングモデルと融合したサービスの開発を模索しており、その対応力が業界内での競争優位性を左右すると見られています。
金融市場の変化によるリース業界への影響
金融市場の変化もリース業界には大きな影響を与えます。金利の上下動や金融規制の強化は、ファイナンスリースを中心とした収益構造に直接的な影響を及ぼします。例えば、低金利政策が続く中で、大手リース会社である三菱HCキャピタルや東京センチュリーは、国内外での資金調達力を活かし、業界の成長を支える戦略を打ち出しています。また、急速に発展する海外市場や再生可能エネルギー事業への進出など、これらの企業の柔軟な対応が注目されています。
カーボンニュートラルとサステナビリティ対応
近年、カーボンニュートラルやサステナビリティが企業経営の重要なテーマとなっています。この背景のもと、リース業界も環境負荷の低い資産やエネルギー効率の高い設備をリースする取り組みが求められています。三菱HCキャピタルのような企業は、再生可能エネルギー分野でのリース提供に注力しており、これが企業の社会的責任（CSR）を果たすだけでなく、新たな収益源ともなっています。また、ESG投資の流れが強まる中、環境に配慮したリース製品を提供する企業には、投資家からの注目が集まる可能性があります。
技術革新がもたらす新たな機会
IoTやAIなどの技術革新は、リース業界にとって新たな価値を生み出す重要な要素です。例えば、IoT技術を活用することでリース物件の利用状況をリアルタイムで把握する仕組みが可能となり、リース契約の効率化を実現できます。また、AIを活用することで顧客ニーズを的確に分析し、より柔軟なリースプランの提供が可能となります。中でも、オリックスのような大手企業は、技術革新を積極的に取り入れることで業界全体をリードする役割を果たしています。これらの技術革新は、リース業界の競争力を強化し、新たな市場の拡大を後押しすることでしょう。
リース業界を牽引する大手企業
オリックス、三井住友ファイナンス＆リースのビジネスモデル
リース業界を代表するオリックスと三井住友ファイナンス＆リースは、それぞれ独自のビジネスモデルを築き、業界を牽引しています。
オリックス（銘柄コード:8591）はプライム市場に上場しており、リースを基盤としながら保険や信託などの金融業務にも多岐にわたる事業展開を行っています。2021年度の売上高は業界トップの約2.3兆円を記録しており、国内外問わず多様なサービスを提供しています。また、オリックス自動車、オリックス・レンテックといった子会社を通じて、多角的なリースサービスを提供しています。
一方、三井住友ファイナンス＆リースは、リース業界の2位に位置し、売上高は約1.4兆円を誇ります。特に大規模な設備リースや法人向けサービスに強みを持ち、安定した成長を続けています。そのビジネスモデルは、三井住友フィナンシャルグループの一員として金融スキームを活用した高度なリースサービスを提供する点が特徴的です。
東京センチュリー、三菱HCキャピタルの戦略
東京センチュリー（銘柄コード:8439）と三菱HCキャピタル（銘柄コード:8593）もまた、リース業界を牽引する重要な企業です。この2社は異なる方向性で企業戦略を展開しています。
東京センチュリーは、売上高1.2兆円でリース業界第3位のポジションに位置しています。同社はリースにとどまらず、航空機リースや再生可能エネルギー分野での事業展開も積極的です。また、国内企業との連携を進めることでシナジー効果を創出し、さらなる成長を目指しています。
三菱HCキャピタルは2021年に日立キャピタルとの経営統合を経て誕生しました。再生可能エネルギー事業や海外コンテナ事業に強みを持つことが同社の大きな特徴です。再生可能エネルギーの需要増加を背景に、環境対応型リースサービスの提供を強化しており、これが同社の市場での競争力を高める要因となっています。
中小企業におけるリースサービスの展望
リース業界は大手企業だけでなく、中小企業向けにも重要なサービスを提供しています。中小企業が抱える課題としては、資金調達の制約や設備投資リスクの回避が挙げられます。これらの課題に対して、リースサービスは有効な解決策として機能しています。
特に中小企業においては、初期投資を抑えることがビジネスの成長に直結すると考えられています。この点で、リースサービスは柔軟性が高く、多様な業種において需要があります。また、ファイナンス・リースやオペレーティング・リースといった取引形式を活用することで、企業のニーズに合わせた資産運用が可能です。
さらに、現在の市場環境ではIoT機器やITインフラといった最新技術を中小企業が導入する際にも、リースサービスが重要な役割を果たしています。これにより、競争力を維持しつつ効率的な事業運営が実現されています。
今後、リース業界の主要プレイヤーが中小企業向けの支援をさらに強化することで、業界全体の成長に寄与することが期待されています。
リース業界の未来予測と可能性
IoT・AIの導入による効率化
リース業界では、IoTとAIの導入が急速に進んでいます。IoT技術を活用することでリース物件の稼働状況や状態をリアルタイムで把握できるようになり、効率的な管理が可能となります。また、AIを活用した需要予測やリスク分析は、企業の意思決定を支援し、業務プロセスの効率化を後押ししています。例えば、オリックスや三菱HCキャピタルといった上場企業は、こうした技術を積極的に採用し、運用資産の最大化を図る取り組みを進めています。これにより、リース業界ではさらなるコスト削減とサービス向上が期待されています。
新サービス分野の拡大予測
リース業界は、従来の設備や車両のリースに加え、新しいサービス分野にも拡大を続けています。再生可能エネルギー分野やIT機器リース、さらにはサブスクリプション型サービスの提供がその例です。特に三菱HCキャピタルが手がける国内外の再生可能エネルギー事業は、環境問題への意識が高まる中で注目を集めています。また、ビジネスニーズの多様化に対応した柔軟なサービスが求められており、スマート技術やデジタル化を駆使した新たな付加価値の創出が加速する見込みです。
業界全体を通じた統合と再編の可能性
リース業界では業界全体を通じた統合と再編が今後進むと予測されています。顧客のニーズが複雑化する中で、リース企業はより包括的なソリューションを提供する必要があります。その結果、大手企業同士の経営統合や、専門分野に特化した中小企業の吸収といった動きが活発化すると考えられます。たとえば、過去には三菱HCキャピタルが日立キャピタルとの統合を通じて事業基盤を拡大しました。こうした再編は市場の複雑化に対応するだけでなく、企業ブランドの強化や持続可能な成長を支える重要な手段となるでしょう。
企業成長を支えるファイナンスの役割
リース業界では、企業が資金を効率的に活用するためのファイナンスの役割が非常に重要です。ファイナンス・リースやオペレーティング・リースといった多様なスキームは、企業が大規模な設備投資を行う際のリスク軽減に寄与しています。さらに、環境対策やデジタル化への対応が求められる中、高度化するリースサービスを支えるには、資金面での支援も欠かせません。市場規模約8兆円ともされるリース業界において、特に大手のオリックスや東京センチュリーは、豊富な資金力を武器に顧客ニーズに応じた柔軟なサービスを展開しています。結果として、これらの企業が業界全体の成長を牽引していくことが期待されています。