コトラ（広報チーム） 
リース業界の現状と背景
リース業界の基礎知識：仕組みと役割
リース業界とは、企業や個人が必要な機器や設備を所有する代わりに、それを一定期間借りる取引を提供する業界です。リース業には、大きく分けて「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類の取引形態があります。ファイナンス・リースは、リース会社が物件を購入し、顧客に貸し出す方法で、中途解約ができないのが特徴です。一方、オペレーティング・リースは、自社で保有している物件を貸し出し、契約終了時には物件がリース会社に返却される仕組みです。
リースは、企業にとって多額の初期投資を抑える手段となる点が大きな利点です。また、リース契約には設備の保守管理サービスが含まれる場合もあり、利用者は事務管理の負担軽減やコストの把握が容易になるメリットがあります。リース業界は、銀行系、メーカー系、独立系といった多様な形態の事業者が参入しており、企業の設備ニーズに柔軟に対応しています。
2020年代のリース業界を取り巻く市場動向
2020年代に入ってからのリース業界は、新型コロナウイルスの影響を受けながらも徐々に回復基調を見せています。2022年度のリース契約高は前年比0.04%増の3兆2,593億円となり、リース取扱高も7.4%増の4兆6,299億円と拡大しました。特に、航空機リース市場は世界的な渡航需要の回復に伴い、成長が期待されています。
さらに、シェアリングエコノミーの潮流を受けて、自動車や高額な設備リースが拡大してきています。新しいリースの形として注目されるのが、カーシェアリングや設備の共同利用による運用効率化です。また、環境への配慮やサステナビリティの観点から、再生可能エネルギー関連の設備や脱炭素社会に向けた持続可能なリース商品の需要も増加しつつあります。
主要企業の動向と市場シェア
リース業界の主要企業として、オリックス、三井住友ファイナンス＆リース、東京センチュリー、芙蓉総合リース、NTTファイナンスなどが挙げられます。これらの企業は、各分野で市場シェアを拡大しており、特に航空機や車両リースにおいては大規模な投資を行っています。たとえば、大手企業の中には航空機リースに1兆円以上を投資するケースも見られ、グローバルな市場拡大が進んでいます。
また、銀行系リース企業は金融資源を活かして低コストで市場をリードし、メーカー系企業は自社設備の活用により競争力を発揮しています。一方、独立系リース会社は業界横断型の柔軟なサービス展開が特徴で、中堅・中小企業向けのリースサービスにも注力しています。このように、各企業はそれぞれの強みを活かした分野で競争を繰り広げており、リース業界のマップは多様性に富んでいます。
技術革新とリース業界への影響
技術革新が進む中で、リース業界にも大きな影響を与えています。特にデジタルトランスフォーメーション（DX）の進展により、リース契約のデジタル化やオンラインプラットフォームの活用が加速しています。また、IoTを活用した設備の監視や運用管理が可能となり、リース利用者が効率的に設備を運用できるサービスが注目されています。
さらに、AI技術を活用することで、利用者のデータ分析や契約条件の最適化が実現しつつあります。このような技術革新は、リース業界の競争環境を変革するとともに、利用者の満足度向上や業務効率化を促進しています。技術の進展に対応することで、リース業界はさらなる成長の可能性を秘めています。
2025年に向けたリース業界の主要トレンド
シェアリングエコノミーの台頭とその影響
近年、シェアリングエコノミーが急速に拡大しており、リース業界にも多大な影響を与えています。特に、自動車や不動産といった分野では、シェアリング型サービスの需要が増加傾向にあります。この動向は、リース業界のマップを大きく書き換えつつあります。たとえば、従来のファイナンス・リースに加え、より柔軟で短期間の使用が可能なオペレーティング・リースの需要が高まっています。2025年に向けて、リース業界はこのシェアリング経済の革新を活用し、モビリティやエネルギー分野で革新的なサービスを提供することが求められるでしょう。
サステナビリティと環境配慮型リースの進展
環境問題への関心が高まる中、サステナビリティ指向のリースサービスがリース業界の新たなトレンドとして注目されています。具体的には、再生可能エネルギー機器や環境配慮型車両など、持続可能性に寄与する設備のリースに対する企業のニーズが急増しています。また、リース業界内ではカーボンフットプリントの削減や、資源の再利用を推進する取り組みが進んでいます。2025年までに、環境配慮型リースは業界全体の競争優位性を左右する重要なポイントとなるでしょう。
デジタルトランスフォーメーション（DX）の加速
リース業界でもデジタルトランスフォーメーション（DX）が急速に進行しています。電子契約やデータ分析の活用、AIやIoTと連携したソリューション提供が、業界の競争力向上につながっています。特に、IoTを用いたリアルタイムの設備利用状況の把握や、AIを活用した顧客管理の効率化は、リース業者にとって大きな利点となります。DXの進展により、リース契約のプロセスも効率化され、顧客体験の向上が実現されつつあります。これにより、リース業界はさらなる成長機会を獲得することが期待されます。
中小企業向けリースとファイナンスサービス
中小企業に向けたリースおよびファイナンスサービスの拡充は、リース業界における重要な課題および成長機会を提供しています。中小企業はしばしば資金繰りが難しい状況に直面するため、大規模な設備投資よりも、リースを通じて資産を利用することが魅力的な手法となります。特に、車両、IT機器、再生可能エネルギー設備といった分野で、リースの活用が進んでいます。さらに、柔軟なリースプランとデジタル化された手続きが、中小企業の利用を促進しています。2025年に向けて、リース業界は中小企業のニーズに対応し、地元市場に密着したサービスを展開することが求められるでしょう。
リース業界が直面する課題とリスク
市場成長の鈍化と競争の激化
近年、リース業界は着実に規模を拡大してきましたが、成長率の鈍化が懸念されています。企業の設備投資需要が弱まる中、特に中小企業では金利上昇による資金調達への影響が大きく、リース契約を控えるケースが増えています。また、大手企業間の競争が激化しており、市場シェアの拡大を目指した価格競争が繰り広げられています。このような状況では、リース業界に新たな価値を提供できるサービスや差別化戦略が必要不可欠です。
規制強化とリース会計基準の影響
リース業界における規制強化や会計基準の変化は、事業運営に大きな影響を与えています。特にIFRS16（国際財務報告基準第16号）の導入により、従来のオフバランス処理からオンバランス処理への移行が進んでいます。これにより、企業の財務諸表に関する透明性が向上する一方で、利用者側にとっては財務負担が増大する可能性があります。また、規制適応のコストがリース企業に発生するため、業界全体での収益性にも影響を及ぼしています。
環境問題への対応とコスト負担
環境問題への対応は、リース業界にとって避けて通れない課題の一つです。グリーンリースや再生可能エネルギー分野の設備リースの需要が増加している中、対応するための新規設備投資やサービス体制の整備に多大なコストがかかります。また、サステナビリティに配慮した運営を行う上で、環境基準の遵守やカーボンニュートラルの取り組みが求められます。このような圧力は、特に中小規模のリース会社には大きな負担となるでしょう。
市場ニーズの多様化によるオペレーションの複雑化
リース業界では、多様化する顧客ニーズに迅速かつ柔軟に対応することが求められています。従来のファイナンス・リースやオペレーティング・リースに加え、シェアリングエコノミーやデジタルトランスフォーメーション（DX）を活用した契約形態が増えています。これにより、新たなサービスの開発やオペレーション管理手法の見直しが余儀なくされています。特に、リース業界全体のマップを再構築するような戦略的な視点が必要であり、これが業界の複雑化をさらに進める要因の一つとなっています。
未来への展望とリース業界の潜在的チャンス
新市場の開拓とグローバル化の可能性
リース業界が新たな成長を遂げるためには、新市場の開拓とグローバル化が重要な戦略となります。特に、新興国市場は経済成長とともに設備投資需要が高まっており、リースサービスに対する需要も増加する見込みです。航空機や自動車分野においては、これらの市場がリース業拡大の鍵を握るといえます。また、グローバル市場におけるネットワークの構築や現地企業との提携により、各地域の特性を活かしたサービス展開が求められています。このような取り組みは、リース業界全体の市場マップのさらなる拡充にも寄与すると期待されます。
IoT・AIを活用したソリューションの変革
IoTやAIを活用することで、リース業界の提供するサービスが大きく変革を遂げています。例えば、IoTを活用してリース物件の稼働状況やメンテナンス情報をリアルタイムで把握する仕組みを構築することで、効率的な運用が可能となります。また、AIを活用した需要予測やリスク評価によって、より精度の高いリース契約の提案が実現可能です。これにより、顧客満足度を向上させると同時に、業界内での競争力を高めることができます。このような技術革新がリースビジネスにおける新たな価値を創出し、さらなる成長の原動力となるでしょう。
持続可能なビジネスモデル構築の重要性
近年、サステナビリティへの意識の高まりとともに、環境配慮型のビジネスモデルがますます重要視されています。リース業界でも、環境負荷を低減する持続可能な取り組みが求められています。例えば、再生可能エネルギー機器のリースや、リース終了後の物件のリユース・リサイクル活動の促進がその一例です。加えて、環境に配慮したリースの仕組みによって企業価値を高めることが可能になります。このような持続可能なモデルは、リース業界の新たなビジネスチャンスを生み出す鍵となるでしょう。
業界間連携による新たなビジネスチャンス
リース業界がさらなる成長を遂げるには、他業界との連携が不可欠です。たとえば、自動車業界との連携により、カーリースやカーシェアリングの市場拡大が実現しています。同様に、通信業界との協力によってIoTを活用した管理システムが開発されるなど、専門分野を融合させた新たなソリューションが可能になります。また、再生可能エネルギー分野や医療機器分野など、成長分野との提携によるシナジーも注目されています。このような業界間連携は、新たなサービスや市場の創出に直結し、リース業界全体の発展を後押しするでしょう。