コトラ（広報チーム） 
リース業界の現状と新たな課題
国内市場規模と成長動向
リース業界の市場規模は現在約8兆円とされており、これは主要企業17社の売上高合計による数字です。この業界は企業の設備投資動向と密接に関連しており、1991年には取扱高が8.8兆円に達するなど好調な時期がありました。しかし、その後「7兆円台」で横ばいが続き、2008年にはリーマンショックや会計基準・税制変更の影響を受けて取扱高が減少傾向に転じました。これにより2010年には4.6兆円まで縮小しましたが、現在では一定の回復傾向が見られています。特に2024年以降、オートリース車両保有台数が約435万台に達すると予想されており、法人向け需要がコロナ前の水準に回復している点は注目に値します。
主要分野ごとの需要と供給の変化
リース業界を支える主要分野ごとに見ると、車両リースを含むオートリースや産業機械、IT機器のリースが重要な柱となっています。特にオートリース分野では、電動車の導入が進みつつあり、環境性能の強化が顕著です。一方、次世代ロボットやAI機能を搭載した最新設備に対する「短期レンタル」の需要も増加しています。企業が高額な機器を購入せず、テスト導入の一環としてリースを利用するケースが広がっているため、供給側にも柔軟な商品設計や新たなサービス体制が求められています。供給面では、必要な設備や車両の供給不足が課題になる一方で、リース企業間の競争激化が見込まれています。
横ばい傾向から成長へ向かう要因
リース業界が横ばいから成長へと向かう鍵となるのは、新たな収益源の確保と持続可能なビジネスモデルの構築です。日本政府が掲げるカーボンニュートラル目標により、電動車やエネルギー効率の高い設備のリースは引き続き需要が拡大すると見られています。また、急速に進むデジタル化やDX（デジタルトランスフォーメーション）も成長の大きな要因となっています。リース業界ではAIを活用した需要予測や顧客体験の向上、さらにはプラットフォーム型ビジネスの展開が重視されており、これらの変化が業界全体を大きく後押しする可能性を秘めています。
持続可能性の実現に向けた取り組み
再生可能エネルギーとリースの融合
リース業界において、再生可能エネルギーの利用拡大は注目すべきテーマです。日本政府が掲げるカーボンニュートラル目標を受けて、再生可能エネルギーは多くの企業にとって既存エネルギーの代替手段として注目されています。リース事業者は、太陽光発電システムや風力発電機器といった再生可能エネルギー関連機器のリース事業を強化しています。これにより、初期投資が高額な設備も低リスクで利用可能となり、顧客の導入障壁を引き下げることが可能です。特に企業の脱炭素化目標達成をサポートする提案型のリースサービスが注目されており、これがリース業界の未来展望にもつながると言えます。
脱炭素化を促進する新しい課金モデル
リース業界は、脱炭素化の推進に向けた新たな課金モデルの開発にも取り組んでいます。近年、従来の固定料金型モデルから、使用量や削減効果に応じた成果報酬型モデルへの移行が進んでいます。例えば、二酸化炭素排出量の削減効果を定量化し、それに応じた料金体系を設けることが考えられます。このモデルにより、顧客とリース事業者双方にメリットが生まれ、脱炭素化の実現が加速します。また、環境配慮型の施策を強化するリース企業は、顧客からの信頼を獲得しやすく、競合他社との差別化にもつながります。これらの取り組みは、リース業界全体の成長や新たなビジネス展望を広げる鍵といえます。
循環型経済に貢献するリース製品
リース業界は循環型経済の実現にも貢献しています。製品や設備を「所有」から「利用」へとシフトするリースの仕組みは、資源の効率的活用を可能にします。特に、使用後の設備や製品をリサイクルまたはリファービッシュして再び利用可能にする取り組みが進んでいます。このような取り組みにより廃棄物を削減し、環境負荷の軽減に寄与できます。加えて、製品のメンテナンスや寿命延長といった付加価値サービスを提供することで、リース事業者は顧客満足度を向上させるとともに、収益の多様化を図ることができます。こうした循環型経済への貢献は、持続可能な社会の構築に欠かせない要素であり、リース業界の明るい未来展望の一翼を担っています。
DXがリース業界にもたらす変革
デジタル化が拡大する新しいサービス
リース業界はデジタルトランスフォーメーション（DX）の進展によって新しいサービスの提供が加速しています。例えば、IoT技術の活用により、リース契約中の設備や機器の稼働状況をリアルタイムで監視するサービスが増えています。このようなデジタル技術に基づくサービスは、顧客に対して機器の適切なメンテナンス時期を提案したり、故障を未然に防ぐことが可能となります。また、短期間のレンタルニーズに対応するため、スマートフォンアプリやクラウドプラットフォームを利用した手軽な契約手続きが注目されています。これにより、リース業界は効率化と顧客満足度の向上を実現し、未来に向けた競争力を高めています。
顧客体験強化のためのAI活用
AI（人工知能）の導入は、リース業界に革新的な変化をもたらしています。AIを活用することで、顧客のニーズに応じた最適なリースプランの提案が可能となり、個々の企業に合わせた柔軟な対応が実現しています。例えば、AIが過去の取引データや設備の使用状況を分析することで、顧客の潜在的なニーズを特定し、新たな提案を提示できます。また、AIチャットボットを活用したカスタマーサポートは、迅速で高品質な対応を実現し、顧客体験をさらに向上させています。このように、AIがリース業界のサービス提供を進化させる中、顧客との信頼関係はより一層強固なものとなるでしょう。
プラットフォームビジネスへのシフト
リース業界では、DXの進展に伴い、プラットフォームビジネスへのシフトが進んでいます。従来のリース契約だけでなく、オンラインプラットフォームを通じて貸与可能な設備情報を一元化し、企業間で自由に取引できる仕組みが増加しています。このようなサービスによって、使い勝手の良い予約機能や透明性のある価格設定が実現し、利便性が大きく向上しています。また、プラットフォームビジネスは、利用者の行動データを活用することで、需要予測や新サービスの開発にも役立っています。これにより、リース業界はこれまで以上に柔軟かつ効率的に市場のニーズに応えることができ、成長を加速させています。
グローバル視点で見るリース業界の未来
海外市場の成長動向と日本への影響
近年、リース市場は世界的に成長を続けており、特にアジアや北米、欧州の主要市場での拡大が著しいです。例えば、中国では急速な経済成長を背景にリースの需要が伸びており、最新のテクノロジーや大型設備に対するリースサービスが積極的に利用されています。また、欧州では環境規制の強化やカーボンニュートラルへの取り組みが進む中、再生可能エネルギー分野でのリース需要が増加しています。
こうした海外市場の成長傾向は、日本のリース業界にとっても大きな影響を与えています。特に、日本企業が国際展開を進める中で、現地市場に合わせた柔軟なリースサービスの提供が求められています。さらに、日本国内でも海外の成功事例を参考にした新しいビジネスモデルの導入が進むことで、市場競争力の向上が見込まれています。
規制や法改正が市場に与えるインパクト
リース業界において、各国の規制や法改正が市場に与えるインパクトは非常に大きいです。例えば、会計基準におけるリース契約の扱いが変更されることで、企業の財務戦略に影響を及ぼす可能性があります。具体的には、リース契約を資産負債計上する基準が主流化したことで、長期契約のリースに対する需要に変化が見られました。
また、環境規制もリース業界に新たな課題を投げかけています。特に欧州では、脱炭素化を目指した厳しい規制が導入されており、リース企業は持続可能性を重視した製品やサービスの提供を求められています。日本でも同様に、法改正や政府方針の転換が業界に与える影響は見逃せません。これらの変化は、リース業界が環境負荷を低減しつつ新たなチャンスを模索するきっかけとなっています。
競争の激化と差別化戦略
グローバルな視点で見たとき、リース業界は強力な競争の中にあります。市場の成長とともに新規参入者も増加しており、既存のリース企業は競争力を維持するための差別化戦略が急務となっています。特に、単なる設備の貸与にとどまらず、付加価値の高いサービスの提供が鍵となっています。
たとえば、デジタル技術を活用したリースプロセスの効率化や、顧客にとっての利便性を重視したプラットフォームの構築が進んでいます。また、環境に配慮したサービスや、エネルギー効率を向上させる製品のリース提供も差別化の重要な要素となっています。日本においても、他国の動向を取り入れながら、独自の強みを活かした戦略を展開することで、市場での競争力を高める必要があります。
未来に向けたリース業界の展望
企業と顧客の関係性の進化
リース業界では、企業と顧客との関係性が進化しつつあります。従来は単なる「モノを提供する」関係にとどまっていましたが、現在では顧客の課題解決に向けたパートナーシップを構築する方向性が重要視されています。たとえば、企業は顧客のビジネスニーズを深く理解し、最適な設備の提案や柔軟な契約条件を提供することで、付加価値を高めています。また、アフターサービスの強化やテクノロジーを活用したリース管理システムの提供など、パーソナライズされたサービスが競争力を左右する要素となっています。このように、リース業界では関係性の深化が将来的な成長の鍵となるでしょう。
持続可能な社会に必要なリース戦略
持続可能な社会の実現に向けて、リース業界はその重要な役割を担っています。特に循環型経済の実現に向けた動きが加速しており、リース製品の再利用やリサイクルを組み込んだ新たなビジネスモデルが注目されています。加えて、再生可能エネルギーや脱炭素化に向けた設備のリース需要も増加しており、リース企業にとっては大きなビジネスチャンスとなっています。また、このような持続可能性を実現するための戦略には、長期的な視点での設備導入支援や、環境負荷を軽減するための製品提案などが含まれます。リース業界が持続可能性を念頭に置いた戦略を実行することで、社会の期待に応えながら新たな成長を遂げる可能性があるのです。
新しい働き方が与える影響
新しい働き方の浸透は、リース業界にも大きな影響を与えています。リモートワークの促進やオフィススペースの縮小が進む中、企業が必要とする設備やサービスの形態も変化しています。例えば、従来の大規模オフィス向け設備の需要は減少する一方で、小規模で柔軟なオフィス設計に対応した家具やIT機器のリースニーズが増加しています。また、持続可能な働き方を支えるために、省エネ性能の高い機器や、リース期間が柔軟に設定可能なサービスへの需要も顕著です。リース業界がこうした変化に敏感に対応し、柔軟で革新的なサービスを提供することが、新しい働き方の中で顧客のニーズを満たす重要なポイントとなります。