2023年度最新データから読む!リース業界の未来と現状

リース業界の市場現状と成長動向

2023年のリース取扱高と市場規模

リース業界は企業の設備投資需要と密接に関わり、重要な役割を果たしています。2021年度にはリース取扱高が4兆2186億円(前年対比91.9%)に低下しましたが、2022年度には4兆3106億円とわずかに回復しました。この増加の背景には、新型コロナウイルスによる景気後退からの反動や、半導体不足の解消が影響しています。2023年度もリース業界は設備投資需要の高まりに支えられ、持続的な伸びが期待されています。また、情報通信機器分野はリース取扱高の約4割を占めており、この分野での投資が市場拡大を牽引しています。

業界別の成長率と動向分析

リース業界は業界別に異なる成長率を示しており、特に情報通信機器やオートリース市場での成長が顕著です。情報通信機器分野では、企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進が需要を押し上げています。一方、オートリース市場では2025年までに保有台数が約435万台に達すると予測されており、堅調な成長が見られます。電動車やハイブリッド車などの需要増加も、このセグメントの拡大に寄与しています。一方で、特定の製造設備や重機などの分野では需要減少の兆候も見受けられ、市場動向を注視する必要があります。

主要リースプレイヤーの市場シェア

日本のリース業界における主要プレイヤーには、三井住友ファイナンス&リース、オリックス、三菱HCキャピタルなどが存在します。これらの企業は、ファイナンス・リースやオペレーティング・リースといった多様なサービスを提供し、広範な業界ニーズに応えています。また、リース業界全体のシェアを見ると、中小企業が53.9%を占め、大企業が34.9%、官公庁が11.2%という構成になっています。このような市場シェアのデータからも、大企業や中小企業による設備投資の重要性が明らかです。

リース・レンタルの違いと契約の特徴

リースとレンタルはしばしば混同されますが、それぞれ異なる特徴を持っています。リースは、企業や個人が長期的に使用する設備や車両などを対象とする契約形態で、利用者が期間全体にわたりリース料金を支払う仕組みです。一方、レンタルは短期間の利用を対象としており、より柔軟な契約内容が特徴です。加えて、リースには「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類があり、例えばファイナンス・リースは設備の購入代金を含む料金設定となります。これらの契約の違いを理解することは、リース市場規模の分析や企業戦略に役立ちます。

国内外リース市場の比較

日本のリース市場では、情報通信機器や製造機器の需要が市場の中心となっていますが、海外市場では異なる特徴が見られます。例えば、欧米では商用車や航空機などの分野がリース需要の大半を占めており、レンタルとリースの区別も日本以上に明確です。また、日本では官公庁や中小企業を対象としたサービスが盛んなのに対して、海外市場では大企業向けの包括的なソリューションが主流です。このような国内外の違いを理解することは、リース業界がグローバル展開を図る上での重要なデータポイントとなります。

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リース業界における主要トレンド

サステナビリティとリースの役割

昨今の環境意識の高まりを背景に、サステナビリティへの対応がリース業界でも注目されています。特に、リース業は資源の効率的利用を促進する仕組みとして評価されており、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが進んでいます。企業はリースを通じて、設備の使い捨てを回避し、ライフサイクル全体を通じて環境負荷を軽減することが可能です。また、電動車や再生可能エネルギー関連設備のリース需要が増加しており、これがリース業界の市場規模の拡大に寄与しています。このような背景から、環境配慮型リース商品を提供する企業が今後さらに成長すると予測されます。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の導入進展

リース業界では、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の導入が加速しています。AIやIoTを活用して、契約プロセスの効率化、資産管理の透明化、データ分析によるサービスのカスタマイズが進められています。例えば、顧客の利用状況をリアルタイムで把握し、最適なリースプランを提案するサービスが登場しています。また、ペーパーレス化やクラウドサービスの導入も進み、業務効率の向上が図られています。これにより、リース会社は顧客満足度を向上させつつ、競争優位性をさらに高めています。

新型コロナウイルス後の需要変化

新型コロナウイルスの影響を受け、一時的にリース取扱高が落ち込む時期もありましたが、2022年度以降は顕著な回復傾向がみられます。特に、法人向けリース需要はコロナ禍以前の水準に戻りつつあり、情報通信機器や建設機械分野で高い需要が見られます。一方、半導体不足や物流遅延の影響は完全には解消されていないため、調達の迅速化が引き続き課題となっています。また、テレワーク普及に伴う需要の変化や予想外のパンデミックリスクに対する事業継続計画(BCP)の重要性が改めて浮き彫りになり、これに対応するリース商品の需要が増加しています。

オートリースの成長と課題

オートリース市場は今後も堅調な成長が見込まれています。特に法人向け需要はコロナ禍前の水準に回復し、個人向け市場も引き続き堅調に推移しています。また、電動車やハイブリッド車の普及に伴い、環境配慮型車両のリース需要が増加しており、これは脱炭素社会への移行を支える要因となっています。しかしながら、オートリースは競争が激化しており、各リース会社は独自の付加価値を提供する必要に迫られています。また、リサイクル部品の活用や車両のライフサイクル全体を通じた環境配慮も課題となっています。

企業の設備投資との連動性

リース市場の成長は企業の設備投資と密接に関連しています。2022年度は設備投資需要の復調が進み、リース取扱高が拡大しました。特に、情報通信機器や製造設備といった分野での需要が顕著に見られます。リースを活用することで、企業は高額な初期投資を避け、キャッシュフローを安定化させることが可能です。一方で、景気の影響を受けやすいため、市場の変動を見越した計画的なリース提供が求められています。今後も企業の設備投資意欲の高まりが、市場規模のさらなる拡大を後押しするでしょう。

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課題と展望:リース業界の未来を形作る要因

法規制の動向とその影響

リース業界は、法規制の変化が直接的に事業運営に影響を及ぼす分野の一つです。例えば、税制優遇措置の適用範囲が変更される場合、リース取引の魅力が大きく変わる可能性があります。また、環境に関する規制が進む中、脱炭素社会の実現に寄与するサービスへのリース需要が高まる一方で、環境性能を満たさない設備の需要が減少するリスクもあります。さらに、リース業務に関連する会計基準の変更も業界全体の動向を左右する要因となります。リース会社はこれらの法規制の変化を見据え、柔軟に対応することが必要です。

市場競争激化への対応戦略

リース業界では大手企業を中心とした市場競争が年々激化しています。この背景には、顧客ニーズの多様化や新規プレイヤーの参入が挙げられます。特に、情報通信機器やオートリースといった成長分野では競争が熾烈化しています。競争に勝ち抜くためには、単に設備をリースするだけでなく、付加価値の高いサービスを提供することが重要です。例えば、設備のメンテナンスや導入後のサポートを組み込んだサービスモデルや、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を活用した効率的な運営体制の構築が求められます。

リースに求められる新たな価値提案

リース業界が持続的に成長するためには、従来の「物を貸す」という枠を超えた新しい価値提案が必要です。例えば、サステナビリティを重視する顧客のニーズに応じて、環境配慮型のリース商品を提案することが挙げられます。また、AIやIoT技術の進化を活用して、利用状況データを解析し、最適な利用プランを提案するなど、テクノロジーを組み込んだサービス設計も有効です。このような差別化されたリース商品は、顧客の課題解決につながり、リース会社への信頼性を高める要因になるでしょう。

海外市場への進出の可能性

国内市場の成長が鈍化する一方で、海外市場への進出はリース業界の活路として注目を集めています。特に、アジア地域では急速な経済成長に伴い、設備投資需要が高まり続けています。このような地域でのリース需要を取り込むことで、新たな収益源を確保することが可能です。ただし、海外進出には各国の法規制や市場文化の違いを深く理解し、それに対応した戦略が求められます。例えば、ローカルパートナーとの連携や現地に適したリース商品の開発が成功の鍵となります。

顧客ニーズに応じた柔軟なサービス設計

リース業界が顧客満足度を向上させるためには、ニーズに合わせた柔軟なサービス設計が欠かせません。例えば、コロナ禍後に増加したテレワーク需要に対応するため、短期間で利用可能なIT機器リースプランや、解約条件を柔軟に設定した契約形態を提供することが考えられます。また、大企業だけでなく中小企業やスタートアップ企業向けのニッチなリースサービスを展開することも重要です。このような多様な選択肢を用意することで、幅広い顧客層を取り込むことが期待されます。

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未来への挑戦:リース業界の今後の予測

2025年までの市場成長予測

リース業界の市場規模は、2025年に向けて引き続き成長が見込まれています。直近のデータでは、新型コロナウイルスの影響で一時的に取扱高が減少したものの、企業の設備投資需要の復調やDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進によって回復傾向が見られます。特にオートリース市場では、2025年3月末までに保有台数が約435万台に達すると予測されており、法人だけでなく個人による利用も堅調に進んでいます。リース業界におけるこうした成長動向は、企業の資金計画や設備投資戦略と密接に関連しているのが特徴です。

AIやIoT技術の導入がもたらす影響

AIやIoT技術の進化は、リース業界に大きなインパクトをもたらしています。リース事業では、IoT技術を活用することで設備や車両の使用状況や劣化状態をリアルタイムで管理することが可能になり、効率的な保守管理や運用が実現します。また、AIを活用した顧客需要の予測やリスク分析の精度向上により、契約プロセスの効率化やサービスの質向上が期待されています。これらの技術革新は、リース会社が顧客に対して高度で柔軟なサービスを提供するための大きな武器となっています。

脱炭素社会でのリースの役割

脱炭素社会の実現に向け、リース業界はサステナビリティ推進の重要な役割を担っています。特にオートリース分野では電動車の需要が急増しており、企業や地方自治体が環境負荷を削減するために活用しています。また、リースは設備のライフサイクル管理が容易であるため、リユースやリサイクルの促進にも寄与しています。これにより、企業が持続可能なビジネスモデルを構築する上で、リースサービスは重要なパートナーとなっています。

共有経済の台頭とリース業の変化

近年、共有経済の台頭により、リース業界にも新たな変化が訪れています。これまでの所有に基づくモデルから、利用にフォーカスしたビジネスモデルへの移行が進んでおり、企業や個人が必要な時だけ利用する「サブスクリプション型リース」への需要が増加しています。特に、短期間の利用が前提となる設備や製品については、このような柔軟な契約形式が市場を拡大する要因となっています。

各プレイヤーによるイノベーション事例

リース業界の主要プレイヤーは、顧客ニーズの変化に応じた多様なイノベーションを展開しています。たとえば、三井住友ファイナンス&リースやオリックスは、脱炭素関連のリースプログラムやDXを活用した新サービスを提供し、競争優位性を高めています。また、三菱HCキャピタルは、IoT技術と連携したリースソリューションを展開することで、顧客の効率的な設備運用をサポートしています。これらのイノベーションは、リース業界が単なる「貸出事業」から「価値創造事業」へと変化していることを象徴しています。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)