不動産ファンドで培ったアセットマネジメントやファンド運営、財務分析の経験は、経営戦略を担う経営企画部門でも非常に高く評価されます。不動産ファンドから経営企画へのキャリアチェンジを成功させるには、戦略視点、数値分析力、事業理解の3つの観点からアプローチを整理することが重要です。本記事では、不動産ファンドから経営企画職への転職を実現するための具体的なステップと、志望動機・職務経歴書のサンプルを紹介します。
ステップ1:経営企画の役割とスキル要件を理解する
経営企画は「企業価値の最大化」をミッションとし、以下のような業務を担います:
- 中期経営計画・年度予算の策定
- 経営指標(KPI/KGI)のモニタリング・分析
- 新規事業・投資案件の企画・収益予測
- 全社ガバナンスの整備・改善
- 取締役会や経営会議の資料作成・運営
不動産ファンドでの定量分析やストラクチャリングの経験は、経営企画における事業評価・財務モデリング・KPI管理に直結します。
ステップ2:不動産ファンド経験を「事業会社視点」で翻訳する
不動産ファンドでのスキルを経営企画で活かせるよう、以下のように実務経験を“再定義”して伝えることが大切です:
- 投資分析スキル → 新規事業やM&Aの事業性評価
- アセットマネジメント → PL/CF改善、KPIモニタリング
- ファンドレポート作成 → 経営層向け資料作成・戦略報告
ステップ3:事業構造とPL視点を補完する
経営企画では、単一アセットの収支よりも「事業全体のPL・戦略」の理解が求められます。不動産中心の収益構造から、以下を補完すると良いでしょう:
- 各事業のKPIとPLの関係
- 事業別の損益管理と資源配分
- 業界動向・競合分析のフレームワーク(SWOT、3C等)
ステップ4:戦略的思考と経営層との対話経験を強調する
経営企画においては、経営陣や他部門を巻き込みながら、会社全体に関わる施策を推進することが求められます。次のような経験があると評価されます:
- 投資委員会向け資料作成・プレゼン
- 運用戦略の立案・KPI設計
- クロスファンクショナルプロジェクトの推進
志望動機(例文)
私はこれまで不動産ファンド運用会社にて、アセットマネージャーとして複数の不動産投資案件の運用戦略立案、収支管理、ファンドレポート作成などに従事してまいりました。物件単位での収益改善に留まらず、ファンド全体の収益性分析や予算策定、投資委員会対応などを通じて、より経営に近い視点で意思決定を支援する業務にやりがいを感じてきました。貴社の掲げる中長期的な成長戦略に深く共感しており、これまでの数値管理・戦略提案の経験を活かして、経営層とともに企業価値向上に貢献したいと考えております。
職務経歴書(サンプル)
氏名:川口 悠真 連絡先:yuma.kawaguchi@example.com|080-1234-5678 【職務要約】 不動産ファンド運用会社にて約6年間、アセットマネージャーとしてオフィス・商業・物流施設等の運用業務に従事。個別物件の収支改善からファンド全体の予算策定、KPI設計、投資委員会向けレポート作成まで、戦略・分析・推進の各領域を経験。経営企画部門でのキャリア構築を志向。 【職務経歴】 株式会社〇〇アセットマネジメント(2018年4月〜現在) アセットマネジメント部/マネージャー 主な業務内容: - ファンド物件(オフィス3棟、物流施設2棟)の運用戦略立案・実行 - 年間予算・中期収支計画の策定、KPIモニタリング - 投資家・レンダー向け運用レポートの作成 - AMレポート、IRR/NOI等の指標管理・改善 - 投資委員会向け資料作成、収支分析・Exit戦略報告 主な実績: - 稼働率向上施策によりNOI前年比12%改善(2021年) - ファンド全体収益シミュレーションモデルの構築・展開 - 投資委員会プレゼンで経営層との連携強化 【スキル・資格】 - Excelモデリング(IRR、NPV、DCF)上級 - PowerPointによる経営層向け資料作成 - 宅地建物取引士/ARES認定マスター(受講修了) - 英語(ビジネスレベル)TOEIC:850 【学歴】 早稲田大学 商学部 卒業(2018年3月)
不動産ファンドでの実務経験は、財務管理や戦略立案の基盤として経営企画職にダイレクトに通じます。ポイントは「ファンド運営のプロ」から「企業経営の支援者」へと視座を広げること。視野の広い経営参画を志す方にとって、経営企画は大きなステップアップとなるでしょう。