アセットマネジメント業務で培った財務分析力、投資判断力、定量思考力は、経営企画への転職において大きなアドバンテージになります。経営企画部門は、企業の中長期戦略を描き、全社最適を目指して各部門を横断的に支援する役割を担います。本記事では、アセットマネジメント(以下AM)から経営企画へのキャリアチェンジを成功させるためのステップ、必要なスキル、志望動機、職務経歴書の作成例までを解説します。
ステップ1:経営企画の役割と業務を理解する
経営企画の業務は企業によって幅広いですが、代表的な業務は以下の通りです:
- 中期経営計画、年度予算の策定・進捗管理
- KPIの設計とモニタリング
- 経営層への報告資料作成
- 新規事業の検討・推進
- M&Aやアライアンス戦略の立案
- IR・ESG・サステナビリティ対応
これらは、AM業務で行ってきた「企業価値分析」「投資意思決定」「市場モニタリング」と通ずる要素が多くあります。
ステップ2:自分のスキルを経営企画視点で翻訳する
AM経験を、経営企画の業務でどのように活かせるかを言語化しましょう。たとえば以下のような変換が考えられます:
- 投資判断力 → 事業ポートフォリオ分析、資本配分提案
- 企業分析 → 競合分析、市場環境評価、経営判断材料の提供
- パフォーマンス管理 → KPI設計・進捗評価
ステップ3:管理会計・経営管理の理解を補強
AMでは主に財務会計ベースでの分析を行いますが、経営企画では管理会計(セグメント別収益管理、原価管理など)への理解が求められます。以下のリソースを活用して基礎を固めましょう:
- 書籍『図解でわかる 管理会計入門』
- 公認会計士・中小企業診断士のテキスト
- ビジネススクールのeラーニング講座
ステップ4:経営視点でのストーリー構築力を磨く
経営企画では、経営陣への提案力・資料構成力も重視されます。「なぜ今この提案なのか」「どう利益に寄与するのか」という論理の組み立てを明快に示すスキルが求められます。日々の業務やプレゼン資料を作る際にも、経営者視点を意識するトレーニングが有効です。
ステップ5:志望動機とキャリアの一貫性を整理する
転職理由として、「投資家目線から経営者目線へ」「企業の価値創造を自らの手でリードしたい」という意志を明確にし、キャリアチェンジの納得感を持たせることが重要です。
志望動機(例文)
私はこれまでアセットマネジメント業務を通じて、企業の財務・戦略・市場環境を多面的に分析し、長期的な企業価値の向上に資する判断を行ってきました。そうした中で、企業の外からの視点だけでなく、経営の内側から戦略を描き、意思決定の実行に関与したいという思いが強くなり、経営企画へのキャリアチェンジを志すに至りました。貴社は非連続成長を目指した事業投資やM&Aにも積極的であり、これまでの財務分析力や事業ポートフォリオ評価の経験を活かして、戦略立案と実行支援の両輪で貢献できると考えております。
職務経歴書(サンプル)
氏名:佐々木 翔 連絡先:sho.sasaki@example.com|080-0000-5678 LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/shosasaki 【職務要約】 大手アセットマネジメント会社にて約6年間、国内外の株式・REITを中心としたファンド運用に従事。投資判断のための財務・市場・業界分析に加え、運用レポート作成、投資家対応も担当。社内の事業戦略部との連携を通じて、事業分析・KPI設計にも関与。 【職務経歴】 〇〇アセットマネジメント株式会社(2018年4月〜現在) 役職:アナリスト(2018〜2021)→ファンドマネージャー補佐(2021〜現在) 業務内容: - 国内外上場企業の財務・業界調査(年200社以上) - 投資対象企業のビジネスモデル分析、株主価値評価 - ESG対応レーティング業務の立ち上げに参画 - 社内運用レポート・経営層向け運用報告資料の作成 - 自社内の新規事業検討プロジェクトにおいて財務支援を担当 実績: - 運用資産における組み入れ比率の見直しでリターン5%向上 - 外部ESG格付けにおける自社スコア2段階アップを実現 【スキル】 - 財務分析(PL/BS/CF)/DCF・マルチプル評価 - 投資委員会向け資料作成/プレゼンテーション - 管理会計基礎(勉強中)/KPI設計支援経験あり - Excel・PowerPoint上級、Tableau基礎 - TOEIC 880点、英語での投資先ヒアリング対応可 【資格・学習歴】 - 証券アナリスト資格(CMA) - 管理会計検定2級学習中 - ビジネススクール戦略立案講座受講 【学歴】 一橋大学 商学部 卒業(2018年3月)
アセットマネジメント出身者は、財務や戦略の視点から経営に貢献できる即戦力として経営企画に求められています。自身の経験を経営にどのように応用できるかを明確に示すことで、スムーズなキャリアチェンジを実現しましょう。