不動産アクイジション(物件取得)は、案件のソーシングから収益性分析、クロージングに至るまで、M&A仲介と多くの共通点を持つ業務です。不動産ファンドやREITなどでのアクイジション経験は、業界・企業分析、交渉力、スキーム理解などの観点から、M&A仲介業務においても即戦力として評価されやすいバックグラウンドです。本記事では、不動産アクイジションからM&A仲介へ転職するためのステップを解説し、志望動機・職務経歴書のサンプルも紹介します。
1. 不動産アクイジションとM&A仲介の共通点と違い
- 共通点:投資判断に関わる調査・分析業務、ソーシング、DD、条件交渉、クロージングまでの推進力
- 相違点:不動産は物件単位、M&Aは企業単位。ステークホルダーも投資家・金融機関から経営者・株主へ
業界・対象が異なるだけで、ビジネスプロセスには大きな共通点があります。これまでの実務経験をベースに、企業買収の世界にも応用が可能です。
2. 活かせるスキルと経験
- 案件ソーシング、投資家・売主との折衝力
- 収益性・キャッシュフローの分析能力(IRR、DCF等)
- 不動産DD・契約実務の経験
- 投資スキーム(匿名組合、信託受益権等)に対する理解
- レポート・プレゼン資料作成スキル
3. 転職準備のステップ
- M&A仲介業務の理解:FAと仲介の違い、DDの範囲、買収スキームなどを学ぶ
- 中小企業M&Aに関する基礎知識の習得:中小企業庁や業界団体の資料を活用
- アクイジション経験のM&Aへの置き換え整理:物件→企業、投資家→経営者、NOI→EBITDAなど
- 志望動機の言語化:「ハードアセットから企業の価値創造を扱う仕事へ」という軸で整理
- 資格取得や知識補完:中小企業診断士、事業承継・M&Aエキスパートなど
4. 面接で問われるポイント
- なぜ不動産アクイジションからM&A仲介へ?
- ソーシング力・分析力・交渉力の実績
- 経営者との信頼構築に対する考え方
- 企業価値評価・財務知識のレベル感
- 数値責任に対する耐性・コミットメント
5. 志望動機(サンプル)
これまで不動産ファンドにて、収益不動産のアクイジション業務に携わり、案件のソーシングからクロージングまで一貫して担当してまいりました。特に、情報収集力や投資家・売主との交渉、収益性分析に強みを持ち、常にスピード感と実行力を意識して業務にあたってきました。今後は、ハードアセットだけでなく企業そのものの価値に向き合い、より経営者に近い立場で価値あるマッチングを実現したいという思いから、M&A仲介業務に挑戦したいと考えております。貴社が大切にされている「人と企業の成長を支える」姿勢に共感し、私の経験を活かして中小企業の未来に貢献したいと考え、志望いたしました。
6. 職務経歴書(サンプル)
氏名:三浦 翼
生年月日:1990年10月5日
最終学歴:中央大学 商学部 卒業
職務経歴:
2015年4月 ~ 現在:株式会社◯◯アセットマネジメント 投資部 アクイジション担当
- 年5~6件の不動産取得プロジェクトを担当(累計取得額500億円超)
- 案件の発掘・売主との交渉・金融機関との協議
- 不動産デューデリジェンス対応(建築・法務・会計)
- 物件収支(NOI、IRR、キャップレート等)シミュレーション
- 投資委員会向けレポート・プレゼン資料の作成
保有資格・スキル:
・宅地建物取引士
・不動産証券化マスター
・Excel(DCF、IRR、VBA)、PowerPoint、Word
・ソーシング力・交渉力・レポーティング能力
7. まとめ
不動産アクイジション経験者は、ハードアセットへの投資経験を活かして、M&A仲介業務においても高い実行力と調整力を発揮できます。企業価値というより複雑で人間味のある対象に向き合う領域で、自身のキャリアの幅を広げる絶好の機会となるでしょう。金融スキームの理解と交渉経験を活かし、次のキャリアへとつなげてください。
