PEから投資銀行業務(IBD)に転職するためのステップ【志望動機、職務経歴書】

投資銀行(Investment Banking Division:IBD)とプライベート・エクイティ(PE)は、どちらもハイファイナンス領域で活躍するキャリアですが、役割やスタンスは大きく異なります。そのため、PEからIBDへの転職には、明確な動機とスキルの変換が求められます。

本記事では、PEファンド出身者がIBD(M&Aアドバイザリーなど)への転職を成功させるためのステップ、必要な視点、転職時のアピールポイントについて解説します。記事の最後には志望動機と職務経歴書のサンプルも掲載しています。

PEとIBDの違いを理解する

PEファンドは「自己資金または投資家資金を使って企業に出資し、価値向上後にEXITを目指す投資家」であり、IBDは「他社のM&Aや資金調達を助言・実行支援するプロフェッショナル」です。

  • PE: 投資の当事者、企業価値向上が主業務、ミドル~ロングターム
  • IBD: M&Aの仲介・助言、取引の成立が主業務、ショート~ミドルターム

PEでの視点を、IBDの助言業務にどう転用できるかを明確に整理することが、転職活動の第一歩です。

PE出身者がIBDに向いている理由

PE出身者は、IBDが求める以下のようなスキルや視点をすでに備えているケースが多く、高いポテンシャルを持つ人材とされています。

  • 財務モデリング・DCF/マルチプル評価に精通
  • 業界分析・ビジネスDDの実務経験
  • 経営者・CxOクラスとの交渉経験
  • ストラクチャリングやSPA等の契約面の理解

特に中堅・中小企業向けのM&Aにおいては、実務に強いPE出身者が即戦力として期待される傾向にあります。

転職のためのステップ

ステップ1:IBD業務の深い理解と役割認識の変化

IBDでは、常にクライアント(売り手または買い手)の利益のために動く必要があります。PEでは投資家目線でしたが、IBDでは「中立的な助言者」という立場に切り替える必要があります。

  • M&Aマーケットの変遷と主要プレイヤーの理解
  • FA業務のプロセス:Teaser→LOI→DD→契約→クロージング
  • 業界知見やシナジーの整理・資料作成スキル

ステップ2:成果ではなく「支援」のスタンスにシフト

PEでは「自社利益」が最優先でしたが、IBDでは「顧客にとっての最適解」を提示する役割が求められます。これまでの実績は、顧客企業の意思決定をサポートする材料として提示しましょう。

ステップ3:履歴書・職務経歴書での表現の工夫

実績や担当案件を、「アドバイザーの視点」で表現するのがポイントです。

  • 案件の目的や背景、意思決定プロセスに関与した経験
  • 企業価値分析・レポーティングの経験
  • 業界分析や競合評価を含む提案書の作成経験

特に資料作成(Pitch BookやIMのような)スキルの有無は、IBDで高く評価されます。

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志望動機(例)

私はこれまでPEファンドにて、投資先の選定・デューデリジェンス・バリュエーション・経営改善支援・EXIT戦略まで一連の投資業務に携わってまいりました。その中で、企業オーナーやCxOとの対話を通じ、単なる投資判断ではなく「意思決定の支援」という観点に魅力を感じるようになりました。

今後は、より多くの企業の変革や成長に関わりたいと考え、M&Aアドバイザリー業務に挑戦したいと考えるに至りました。PEでの経験を通じて培った業界分析・財務モデリング・ストラクチャリングの知見を活かし、貴社にてクライアントの意思決定を高い次元で支援できるプロフェッショナルを目指してまいります。

職務経歴書(例)

■職務要約

独立系PEファンドにて投資担当として3年半従事。投資検討、財務・ビジネスDD、バリュエーション、条件交渉、バリューアップ支援、EXIT戦略の策定まで幅広く経験。現在はIBD(M&Aアドバイザリー)へのキャリア転換を志向し、支援者としての価値提供に関心を持っている。

■職務経歴

〇〇キャピタル株式会社(2020年7月~現在)

  • 中堅企業向けバイアウト投資業務全般
    • 担当案件数:6件(内2件クロージング、1件EXIT済)
    • 業界:製造業、BtoB SaaS、物流、小売
    • 役割:DD、財務モデリング、投資委員会資料作成、ストラクチャリング
    • 経営会議・PMIにおける改善KPI策定支援

■スキル・資格

  • Excel財務モデリング(LBO, DCF, Sensitivity分析)
  • PowerPoint:IM・提案資料・投資委員会資料作成経験
  • 英語:TOEIC 890点(英語DD資料読解・契約レビュー経験あり)
  • 公認会計士(論文式合格)、簿記1級

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まとめ:視点を切り替え、「支援する側」へ

PE出身者にとって、投資銀行業務(IBD)への転職は「自己の意思決定者」から「顧客の意思決定を支える助言者」への視点の転換が必要です。しかし、財務・戦略・ストラクチャリングの知識と経験は、IBDでも即戦力として高く評価されます。

PE経験を「深い理解力」として、IBDでの「広い支援力」へ変換すること。それが、キャリア転換成功の鍵になります。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)