監査法人から事業会社のコンプライアンスに転職するためのステップ【志望動機、職務経歴書】

監査法人でのキャリアを積んだ後、事業会社のコンプライアンス部門へと転職を希望する人が近年増えています。内部統制やリスク管理への専門知見を活かし、より経営に近いポジションで組織づくりに携わりたいという動機は非常に自然なものです。

本記事では、監査法人出身者が事業会社のコンプライアンス部門へと転職するために必要な知識やステップ、アピールポイントについて詳しく解説します。また、最後に志望動機と職務経歴書の例文もご紹介します。

コンプライアンス部門とは?

事業会社のコンプライアンス部門は、法令遵守・社内規程の管理・不正防止などを担う組織です。主な役割は以下の通りです:

  • 法令・業法・ガイドラインへの対応
  • 社内ルール・規程の整備と周知
  • 社内監査・内部通報制度の運用
  • 贈収賄防止・反社チェック等のリスク対応
  • 当局(金融庁、監督官庁等)との対応

「守りの部門」とされがちですが、近年では企業価値向上のための重要な戦略部門として位置づけられることも増えてきました。

監査法人出身者がコンプライアンスに向いている理由

監査法人出身者は、内部統制・リスクマネジメント・法令遵守に関する高度な知見を有しており、事業会社のコンプライアンス部門にとって非常に有用な存在です。以下の点が特に評価されます:

  • 内部統制報告制度(J-SOX)に関する実務経験
  • クライアント企業への監査・助言経験
  • リスクアセスメント、監査手続、文書化のスキル
  • 第三者的視点での課題発見力

これらは、事業会社におけるガバナンス強化や社内整備に直結するスキルです。

転職に向けたステップと準備

ステップ1:コンプライアンス業務の全体像を理解する

監査業務で得た知識をコンプライアンス領域に応用するには、まず実務の構造を知ることが必要です。以下の観点で情報収集・学習を行いましょう。

  • 業界別の規制(例:金融商品取引法、個人情報保護法)
  • 社内規程や業務フローの整備手順
  • 内部通報・調査の運用ルール
  • ISO37001、COSO ERMなどのフレームワーク

ステップ2:コンプライアンス領域の知見を補完する

監査の知識に加えて、以下のような資格取得や学習があると転職時のアピールになります:

  • 公認不正検査士(CFE)
  • コンプライアンス・オフィサー認定試験(ACFE、金融財政事情研究会)
  • 内部監査士(CIA)
  • 個人情報保護士

ステップ3:事業会社の文化や業務特性を理解する

監査法人と異なり、事業会社では「リスクと事業活動の両立」が求められます。ルールの押し付けではなく、現場との対話を通じて実効性ある体制を構築する視点が重要です。転職活動では以下を意識しましょう:

  • 経営層・事業部門とのコミュニケーション力
  • ルールを「実行可能な形」に落とし込む柔軟性
  • 現場視点と統制視点のバランス感覚

ステップ4:志望動機・職務経歴書で「監査経験の汎用性」を伝える

職務経歴書では、「指摘・評価する立場」から「実行・推進する立場」への転換をどう捉えているかを言語化することがカギです。また、具体的にどのような業務改善・提案を行ってきたかを示すことで実務能力も伝わります。

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志望動機(例)

私はこれまで監査法人にて、主に上場企業に対する財務諸表監査およびJ-SOX内部統制監査に従事してまいりました。その中で、各社のコンプライアンス体制や内部統制の整備状況を間近に見る中で、単なる第三者的評価に留まらず、実務の現場に入り込んで制度設計や改善支援を行う立場に強く魅力を感じるようになりました。

監査業務を通じて得た法令遵守・リスクマネジメント・内部統制の知見を活かし、今後は事業会社の一員として、現場と連携しながら健全で持続可能な組織づくりに貢献していきたいと考え、貴社を志望いたしました。

職務経歴書(例)

■職務要約

監査法人にて公認会計士補として約5年間勤務。主に上場企業・金融機関等の会計監査および内部統制監査(J-SOX)を担当。クライアントのリスクアセスメント、業務プロセス評価、文書化支援に従事。現在は事業会社のコンプライアンス部門でのキャリア転換を志向中。

■職務経歴

〇〇有限責任監査法人(2019年4月 ~ 現在)

  • 財務諸表監査
    – 上場企業(製造業・IT・金融など)の年次監査チームに所属
    – 監査調書作成、往査対応、経営者ヒアリング実施
  • 内部統制監査(J-SOX)
    – 全社的統制、業務プロセス統制、IT統制の評価
    – 文書化支援(業務フロー、RCMの作成指導)
  • 業務改善提案
    – 発見された内部統制不備に対する是正案の提示
    – コンプライアンス・教育体制の改善事例共有

■保有資格

  • 公認会計士試験 論文式合格
  • 公認不正検査士(CFE)※受験準備中
  • コンプライアンス・オフィサー認定試験 合格(2023年)

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まとめ:監査経験を活かして、リスクをコントロールする側へ

監査法人での経験は、事業会社におけるコンプライアンス業務でも大きな価値を発揮します。視座の高さ、制度理解、ドキュメンテーションスキル、論理性といった要素は、現場での信頼構築にも直結します。

「評価する側」から「整備・運用する側」へ——。その転換には勇気と準備が必要ですが、監査法人出身者だからこそ担える役割があります。ぜひご自身の経験を武器に、次のステージを目指してみてください。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)