コトラ（広報チーム） 
社労士と中小企業診断士の基本情報
社労士の役割と業務内容
社労士（社会保険労務士）は、社会保険や労働関係法令の専門家として、主に企業の人事・労務に関するサポートを行います。具体的には、従業員の雇用管理や給与計算、社会保険関連の手続き、就業規則の作成や労働問題への対応などが主な業務です。また、社労士には独占業務があり、労働基準監督署や社会保険事務所に提出する書類の作成や提出代行は、社労士でないと行えない点が特徴です。このように「人」に関わる専門的な知識とスキルを求められる社労士は、企業経営において欠かせない存在として重要な役割を果たしています。
中小企業診断士の役割と業務内容
中小企業診断士は、中小企業に対する経営コンサルタントとしての国家資格です。業務内容は多岐にわたり、事業戦略の立案やマーケティング支援、業務プロセスの効率化、財務改善サポートなど、企業経営全般にわたる課題の解決を支援します。独占業務はないものの、幅広い領域で活躍できる点が特徴です。また、中小企業の経営支援だけでなく、行政機関や各種団体から相談を受けて支援を行うこともあります。社労士とは違い、「経営」に焦点を当てた専門的な知識を提供することで、企業の持続可能な発展をサポートする重要な役割を担っています。
資格の取得方法と試験内容の違い
社労士と中小企業診断士の資格取得方法には大きな違いがあります。社労士試験は年に1回実施され、選択式と択一式の試験を1日で受験する形態です。試験範囲は労働基準法や社会保険関連法、労働安全衛生法など非常に幅広く、合格率は約7%と難易度が高いことで知られています。
一方、中小企業診断士試験は筆記試験と口述試験の二段階制です。筆記試験では経済学・財務会計・経営法務など幅広い科目が出題され、さらに二次試験での口述試験が課されます。合格率は総じて5%程度と、こちらも決して簡単ではありません。特に、社労士が労働関係や社会保険に特化した内容であるのに対し、診断士は経営全般にわたる知識を求められる点が異なります。
資格の需要と将来性
社労士と中小企業診断士はどちらも企業経営を支える専門家として需要が高い資格です。社労士は、労務管理の専門家として、複雑化・多様化する雇用形態や社会保険制度への対応が強く求められています。一方、中小企業診断士は、経営コンサルタントとして、特にデジタル化や経営戦略の高度化が進む中で中小企業のニーズに応える存在として重要視されています。
どちらの資格も将来的に安定した需要が見込まれる一方で、両者を組み合わせたダブルライセンスを取得することで、顧客への支援内容を拡充できるため、さらなる付加価値を提供できる点がポイントとなります。このような背景から、今後も社労士と中小企業診断士のスキルを持つ人材の必要性はますます高まっていくでしょう。
難易度と勉強時間の比較
社労士試験の難易度と勉強時間
社労士（社会保険労務士）試験は、国家資格の中でも比較的難易度が高い試験の一つとされています。合格率は毎年7～8%程度と低めで、しっかりとした準備が必要です。試験は労働関係科目4科目と社会保険関係科目4科目を中心に出題され、幅広い知識が求められます。これらの科目をカバーするためには、1,000時間以上の勉強時間を確保することが目安とされています。
重要なのは、単なる知識の丸暗記ではなく、実際の労務管理や社会保険業務に関わる実務的な知識を、理解しながら身につけることです。近年ではオンライン講座や専門の教材も充実しており、効率的な学習が可能ですが、一日に一定時間を確保し、継続的に勉強を進めることが合格への鍵となります。
中小企業診断士試験の難易度と勉強時間
中小企業診断士試験は、経営コンサルタントの国家資格として非常に専門性が高い内容となっています。この試験は一次試験と二次試験の二段階に分かれており、一次試験は7科目もしくは8科目が出題され、経営管理から財務、マーケティングなど多岐にわたる内容を網羅しています。一次試験の合格率は20～25%程度ですが、二次試験では合格率が5%程度に下がり、総合的な難易度は非常に高いものと言えます。
勉強時間の目安としては、社労士試験と同様に1,000時間程度が推奨されますが、特に二次試験の論述能力や口述試験の対策が重要です。経営理論や財務分析に関する深い理解だけでなく、実務的な応用力も求められるため、効率的な勉強と実践的な問題演習が欠かせません。
どちらがあなたにとって取り組みやすいか？
社労士試験と中小企業診断士試験はどちらも1,000時間程度の勉強時間が必要とされ、それぞれ異なる方向性の難易度を持っています。そのため、どちらが取り組みやすいかは、あなたの興味や得意分野に大きく依存します。
たとえば、「人」に関わる社会保険や労務管理といった分野に興味がある場合は、社労士試験が適しているでしょう。一方で、企業経営や戦略、財務管理に強い関心がある場合は、中小企業診断士が魅力的に感じられるかもしれません。試験そのものの形式や分量を見ると、科目ごとに分けて挑める社労士試験の方が一度の負担が少なく、取り組みやすいと感じる人が多い傾向にあります。
また、「どちらの知識も将来的に活かしたい」と考える方は、初めに社労士資格を取得し、その後に中小企業診断士に挑むことで、お互いの分野を補完し合う形でのスキルアップが可能です。ダブルライセンスにより、より広範な業務の対応ができるだけでなく、顧客やクライアントからの信頼性も向上するため、長期的なキャリア形成に有効です。
収入・年収の違い
社労士の収入傾向と働き方
社労士（社会保険労務士）の収入は働き方や経験年数、顧客数によって大きく異なります。独立開業してクライアントを持つ場合には年収1,000万円を超える社労士も少なくありません。一方、企業内で労務管理や社会保険業務の専門家として働く「企業内社労士」の場合、一般的には年収400万円～700万円程度が相場とされています。
社労士の収入に大きく影響するのは、独占業務の存在です。労働保険や社会保険に関する書類作成や手続きなどは社労士にしかできないため、その専門性が収入に直結します。また、これに加えて労務コンサルティングを行うことで、より高い付加価値を提供することができ、収入をさらに向上させることが可能です。
中小企業診断士の収入傾向と働き方
中小企業診断士は経営コンサルタントとして唯一の国家資格であり、その収入は多様な働き方に依存します。独立してコンサルタント業務を行う場合、1件あたりの契約単価が高いため、高収入を実現しやすい傾向がありますが、安定性にはやや課題があります。フルタイムで独立して活動するコンサルタントの場合、年収は1,000万円を超えることも珍しくありません。しかし、実績や営業力が収入に大きく影響します。
一方で、企業内診断士として中小企業を支援する部門で働く場合や、公的機関に属する場合には、安定性が高まる一方、年収500万円～700万円程度が一般的です。つまり、中小企業診断士は独占業務がないため、持つスキルをどのように活用するかで収入の幅が広がります。
社労士×中小企業診断士のダブルライセンスのメリット
社労士と中小企業診断士のダブルライセンスを取得することで、高収入を目指せるだけでなく、活躍の場も大きく広がります。例えば、労務管理や社会保険の専門知識を武器にした社労士としての業務に、中小企業診断士の経営改善や経営戦略のアドバイスを組み合わせることで、付加価値の高いコンサルティングを提供できます。
実際、社労士として独占業務を行いながら、中小企業診断士の視点でクライアントの経営全般を支援することで顧客満足度が向上し、固定契約や高額契約を結びやすくなる事例が多く見られます。また、ダブルライセンスにより「経営」と「人」に関する領域の総合的な専門家としての強みを持つことで、他の資格者との差別化にもつながります。
さらに、2つの資格取得により学んだ知識を現場で活用し続けることでスキルが一層深まり、経験を通して収入が増加する可能性も高まります。難易度が高い資格であるものの、その努力に見合った将来性と収入増加のメリットが期待できます。
自分に合った資格選びのポイント5選
自分の興味や目指すキャリアを考える
資格選びにおいて、まず大切なのは「自分の興味」と「目指すキャリア」との一致です。社労士は社会保険や労務管理といった「人」に関わる分野での専門知識を修得する資格であり、人事や労務部門で活躍したい方に向いています。一方、中小企業診断士は経営や戦略、財務に強い関心があり、経営コンサルタントとして企業を支えたい方に適しています。自身が興味を持つ分野と将来的に目指すキャリアを見定めることで、より適した資格が見えてくるでしょう。
学習スタイルや得意分野で選ぶ
学習の進め方や得意分野も重要なポイントです。社労士試験では、労働基準法や健康保険などの法律や制度を正確に覚える必要があり、暗記が得意な方に向いています。一方、中小企業診断士試験では経営理論や財務会計といった実践的なテーマが多く、思考力や分析力が求められます。これらの性質を踏まえ、自分の学習スタイルや得意分野に合った資格に取り組むことで、より効率的な勉強が可能です。
将来の市場や需要を意識する
資格を取得するうえで、将来の市場での需要を考えることも欠かせません。社労士は「人」に関する専門性を持ち、制度改正や働き方改革などに伴い、ますます需要が高まっている資格です。一方、中小企業診断士は経営コンサルタントとして、様々な業界での企業支援が期待されています。特に中小企業の経営課題が多様化している現代においては、両資格とも将来性が見込まれていますが、自身がどの分野に貢献したいかを明確にすることが大切です。
勉強時間を確保できるか確認する
資格取得の成否を分けるのは、試験に向けて十分な勉強時間を確保できるかどうかです。社労士試験・中小企業診断士試験ともに難易度が高く、一般的に合格には1,000時間程度の学習が必要とされています。仕事や家庭の状況を考慮し、まとまった時間を確保できるかどうかを事前に確認しましょう。特に中小企業診断士試験は筆記試験と口述試験の両方に対応する必要があるため、計画的な学習が求められます。
ダブルライセンスも視野に入れる
社労士と中小企業診断士を単独で取得する道に加え、両方を取得する「ダブルライセンス」の選択も一考の価値があります。この2つの資格は相性が良く、それぞれの知識を組み合わせることで付加価値の高い専門家として活動することが可能です。たとえば、社労士の「労務管理」の視点と、中小企業診断士の「経営戦略」の視点を融合することで、企業に包括的な提案ができるようになります。将来のキャリアアップを見据えて、ダブルライセンスも選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。
まとめ：自分に最適な資格を選ぶために
自身の目的に合わせて最善の選択を
社労士と中小企業診断士は、それぞれ異なる専門性を持つ国家資格です。社労士は労務管理や社会保険の専門家として「人」に関わる分野で活躍します。一方、中小企業診断士は経営コンサルタントとして、企業の経営課題を幅広く支援する役割を担います。これら2つの資格はどちらも高い需要があり、難易度の高い試験を突破する必要があります。そのため、まず自身が目指すキャリアや関心のある分野を明確にし、その方向性に合った資格を選ぶことが重要です。労務管理に強みを持ちたい方は社労士を、経営課題に特化した支援を行いたい方は中小企業診断士を優先すると良いでしょう。
継続的な学習とスキルアップの重要性
資格を取得した後も、継続的なスキルアップが求められます。特に社労士と中小企業診断士は、時代や法改正、経済環境の変化に柔軟に対応することが必要です。また、これらの資格はダブルライセンスを取得することで互いの専門知識を補い合い、より高い付加価値を提供できる点も魅力です。例えば、社労士の持つ労務知識が中小企業診断士の経営コンサルティングに深みを加えられるほか、中小企業診断士としての経営視点が社労士業務にプラスの影響をもたらします。資格取得をゴールとするのではなく、その後も積極的な学習を続けることで、市場価値の高い専門家として活躍し続けることが可能です。