コトラ（広報チーム） 
総合商社の残業時間の実態とは
平均残業時間のデータから見える現状
総合商社は高い年収やグローバルな業務で注目される一方、「激務」というイメージがつきまといます。その中でも、残業時間に関するデータは、就職活動中の学生や求職者にとって重要な判断材料となります。平均的な残業時間を見てみると、企業や部署によって大きな差がある一方、多くの社員が月30〜40時間程度の残業を経験しているのが実情です。それに加え、特に忙しい月には50時間を超えることも珍しくありません。
7大商社を比較すると、残業時間が比較的短いとされる三井物産に対し、伊藤忠商事は残業が多い企業として知られています。このような差が生じる背景には業務内容や企業文化が関係しています。なお、近年は働き方改革の影響で残業時間削減を推進する動きもあり、全体的に残業時間は減少傾向にあります。
業務内容と残業時間の関係
総合商社の残業時間は、主に業務内容に大きく左右されます。例えば、輸出入関連や海外取引を担当する部署では、時差の関係で現地企業とのやり取りが深夜や早朝に行われることが多く、残業が日常的になる場合があります。また、膨大な資料作成や契約交渉など、慎重さが求められる作業が多い営業部門では、業務が長引きやすい傾向にあります。
さらに、企画や管理部門では、全体の調整業務や緊急対応が発生する場合があり、通常業務に加えて負担が増えるケースも観測されています。こうした業務内容と残業時間の密接な関係を踏まえると、商社での働き方の特徴が浮かび上がります。
部署ごとの残業の偏り
総合商社では、部署による残業時間の偏りが目立ちます。たとえば、営業部門やトレーディング部門では、取引先や顧客とのコミュニケーションが頻繁で、商談や会食などが業務終了後に入ることも多く、残業が増える傾向があります。一方、経理や法務などの管理系部署では、年度末や決算期を除けば比較的計画的な業務が多いため、残業は少なめです。
また、プロジェクトベースで動く部署では、プロジェクト進行状況によって忙しさが大きく変わることがあります。特に新規案件や海外進出案件などの場合、一時的に大幅な残業を強いられることもあります。そのため、配属される部署が残業時間に大きく影響することは認識しておくべきです。
繁忙期と閑散期でどう変わるのか
総合商社の残業時間は、繁忙期と閑散期によっても大きく変動します。一般的に、年度末や決算期、新規事業の立ち上げ時期には特に忙しくなり、帰宅時間が遅くなる社員が増える傾向にあります。一方で、閑散期にはその分残業時間を調整し、休暇を取得しやすくする企業も多いです。これは、社員のワークライフバランスを考慮した取り組みの一環として行われています。
また、海外取引が多い総合商社の場合、市場や取引先の動向によっても忙しさが変わります。たとえば、為替や原油価格の変動が激しい時期には、各部署が迅速に対応しなければならず、長時間労働が求められることもあります。このように、一年を通じて残業と休息のバランスを取る工夫が求められるのが、総合商社で働く上での特徴と言えます。
www.kotora.jp「働き方改革」は総合商社に影響を与えたか
残業削減に向けた具体的な取り組み
総合商社業界では、以前と比べて残業時間の削減に向けた取り組みが大きく進んでいます。この背景には、政府の推進する「働き方改革」が影響しており、企業ごとに独自の方針が取られています。例えば、働き方の効率化を目指したITツールの導入や、フレックスタイム制度の採用が挙げられます。また、残業の事前申請を義務付けたり、月ごとの残業時間を管理するシステムを導入したりすることで、社員一人ひとりの労働時間を可視化する取り組みが進んでいます。
こうした取り組みによって、一部の部署では確かに残業時間が削減されています。ただし、商社特有の「海外取引やプロジェクト進行における時間の制約」などもあり、全ての部署で均等に効果が現れているわけではありません。特に繁忙期などのタイミングでは、依然として長時間労働を余儀なくされるケースがあるのが現実です。そのため、業務内容に応じた柔軟な調整が今後の課題となっています。
テレワーク普及による影響とその現実
新型コロナウイルスの影響をきっかけに、テレワークの導入が総合商社にも広がりました。一見すると、テレワークは通勤時間の削減や自宅での作業環境構築により、社員の負担軽減と効率的な働き方に寄与しているように見えます。しかし、実際には企業や部署ごとに運用状況は大きく異なり、課題も少なくありません。
例えば、海外取引を多く扱う総合商社では、時差の影響を受ける業務も多くあります。そのため、テレワーク環境でも深夜や早朝に会議を行うことが日常的であり、結果的に「勤務時間が不規則になった」という声も聞かれます。また、オンラインでのコミュニケーションが増える一方で、意思疎通におけるストレスや、情報共有の難しさを感じる社員も多いようです。
現実的には、テレワークが完全に残業削減に繋がったとは言い切れず、「自宅でも残業をしてしまう」というケースも見られます。そのため、商社においてはテレワークを活用しつつ、効率的に業務を進める体制の整備が今後の課題と言えるでしょう。
社員の声―改革後の働きやすさ
働き方改革の影響を受けた社員の声には、ポジティブな意見とネガティブな意見が混在しています。「会社が残業削減に積極的になったことで、プライベートな時間を確保しやすくなった」という声もあれば、「働き方自体は変わっていないように感じる」という意見も少なくありません。
特に、部署や上司のマネジメントスタイルによる影響が大きいため、同じ会社内であっても働きやすさの感じ方には差が生じています。一部の社員からは、「働き方改革前より気軽に有給休暇を取りやすくなった」という意見もあがっており、制度が機能している面もあるようです。加えて、テレワークの導入により通勤時間が減少したことについては、多くの社員がメリットとして挙げています。
しかし、依然として「激務である」というイメージや実際の経験が根強く残っており、改革が全体的な業務負担の軽減に及んでいるとは限りません。社員たちの本音としては、「給与や待遇が良いからこそ、仕事量には納得できる」という声も多い一方で、「もっとストレスの少ない環境が望ましい」という意見も見受けられます。
社員の本音に迫る―現場の声
「激務」への捉え方と実際の状況
「総合商社は激務である」というイメージは根強く、多くの就職活動生にも広く認知されています。実際、業務量や時間外労働が多いことは否定できません。営業担当者や海外案件を扱う部署では、取引先との調整や急な対応が求められる場面が多く、残業時間が増加する要因となっています。また、海外取引では時差の影響から深夜帯の対応が必要になることも珍しくありません。
一方で、これをネガティブに捉えるだけでなく、「自己成長の機会」や「グローバルな仕事の醍醐味」として前向きに考える社員も多いようです。特に若手の間では、自身のスキル向上や昇進のチャンスと捉えているケースが目立ちます。このように、激務が全員にとって辛いものばかりではないというのが現場の現実です。
給与や待遇と見合う働き方か
総合商社の高額な給与は業界内でも際立つ特徴であり、激務を伴うとしてもその見返りが大きい点は多くの社員が認めるところです。たとえば、三菱商事の平均年収は2,000万円を超えており、これを動機に入社を希望する人も少なくありません。この待遇の背景には、残業代を含む手厚い報酬体系や海外赴任時の特別手当などが挙げられます。
実際、現場の社員からは「忙しい分、給与や福利厚生が充実しているため、モチベーションを保ちやすい」という意見があります。ただし、逆に「給与が高くとも、それ以上の負荷を感じる」という声も一定数存在します。要するに、給与と労働条件のバランスについては個人の価値観による部分が大きいといえます。
周囲との協力で見える改善の兆し
総合商社の職場では、激務を抱える中でもチームでの連携が重要視されています。特に近年では、残業時間削減に向けた業務分担の見直しや効率化が進められており、仕事の負担をチーム全体でシェアする文化が浸透しつつあります。
一例として、繁忙期にはベテラン社員が若手のサポートに回ることで、負担の分散が図られているケースも見られます。これにより、若手社員も「孤独に仕事を抱え込まなくなった」といったポジティブな変化を感じるようになっています。また、テクノロジーを活用した効率化ツールの導入も業務負担の軽減に寄与しています。
本音トーク：どこまで改善されているのか
現場の社員たちは、「働き方改革」や残業時間削減の取り組みについて、一定の改善が進んでいると認める一方、まだ完全には理想的な働き方には到達していないと考える人が多いようです。一部では、「部署間の残業時間の差が大きく、まだ不公平さが残っている」という声も挙がっています。
それでも、以前と比べて業務の進め方に柔軟性が生まれた点や、リモートワークなど新しい働き方の普及は評価されています。現場の本音としては、「完全には満足していないが、着実に改善が進んでいる」というのが率直な感想だといえるでしょう。
今後の課題と展望
残業の削減と業務効率化への取り組み
総合商社の「残業」はよく話題に挙がりますが、近年では働き方改革の影響もあり、残業削減に向けた取り組みが進んでいます。具体的には、IT技術の活用による業務効率化が挙げられます。例えば、デジタルツールを活用したプロジェクト管理や社内報告の簡略化は、多忙な社員にとって大きな助けとなっています。また、ある商社では一部業務を外部委託することで、社員の負荷を軽減する工夫が行われています。残業代が全額支給される制度などは維持されつつも、効率的な働き方へのシフトが進んでいます。
グローバル化による新たな課題
総合商社はその特性上、海外取引や駐在が多くを占めています。そのため、時差による仕事の効率低下や、多言語・多文化環境での調整が、今後ますます課題となっていくでしょう。特に、現地社員とのコミュニケーションや業務協力体制の構築には時間がかかり、結果として長時間労働を招く要因にもなり得ます。今後は、オンラインコミュニケーションツールを活用して時差の影響を最小限に抑えることや、現地で自主的に動ける体制の構築が求められます。さらに、グローバル化に伴う労働環境の格差についても、一層の改善が必要です。
社員満足度向上のための施策
社員のモチベーションを維持しながら「激務」を乗り越えるためには、適切な待遇や柔軟な労働環境の提供が重要です。業界全体で高水準の給与が維持されていますが、それに加えて近年では、社員の自己成長を支援するための研修プログラムやキャリア支援制度も重視されています。また、テレワークやフレックス勤務の導入によって、働きやすさが大幅に向上しています。さらに、育休や介護休暇の取得促進など、ワークライフバランスを尊重した制度設計を導入することで、社員満足度の向上が図られています。
未来の総合商社の働き方に期待すること
未来の総合商社に期待されるのは、効率的かつ柔軟な働き方のさらなる進化です。テクノロジーの進化に伴い、AIやデータ分析を駆使した業務の効率化が加速することで、これまで以上に時間の使い方に自由が生まれるかもしれません。また、国際的な規模での働き方改革が浸透することで、グローバルな「働きやすい」仕組みが整備される可能性もあります。一方で、社員同士や取引先との人間関係づくりにも重点を置きつつ、適度な「働き甲斐」を感じられる労働環境の整備が不可欠です。そして、こうした環境を通じて、商社独自の魅力を活かしながら多様な働き方を実現できる未来が訪れることが期待されています。