0からの挑戦!サステナビリティ推進室の立ち上げマニュアル

heart - 0からの挑戦!サステナビリティ推進室の立ち上げマニュアルloading - 0からの挑戦!サステナビリティ推進室の立ち上げマニュアルお気に入りに追加

サステナビリティ推進室とは

サステナビリティ推進室の定義と役割

 サステナビリティ推進室とは、企業や組織が持続可能な社会の実現に向けた事業活動を推進するために設置される専門部署です。この部署は、環境・社会・ガバナンス(ESG)の分野で求められる取り組みを戦略的に進め、企業全体の経営における持続可能性の強化を目指します。

 具体的な役割としては、企業全体のサステナビリティ戦略の立案・実行、炭素排出量削減などの環境目標の設定と対策、社会課題への取り組み、ESG情報の開示・報告などが挙げられます。また、ステークホルダーとの対話やマテリアリティの特定、内部の意識改革を支援するのも重要な任務です。

企業経営におけるサステナビリティの重要性

 現代において、サステナビリティは単なる選択肢ではなく、企業経営の重要な柱となっています。株主や投資家が非財務情報を重視するESG投資が拡大しており、企業が持続可能な活動を実現することは市場での評価を左右する鍵となります。

 また、環境規制の強化や、社会的責任を果たす企業が消費者や取引先から選ばれる時代になっています。これらの背景から、サステナビリティ推進室の果たすべき役割はますます重要となり、事業戦略と社会的価値の両立が求められています。

推進室立ち上げの背景と目的

 サステナビリティ推進室が立ち上げられる背景には、多様化する社会課題や市場・規制環境の変化があります。政府や国際機関による気候変動対策の促進や、非財務情報開示の義務化などが企業に大きな影響を与えており、これに対応する専門部署の設置が重要視されています。

 目的としては、企業全体で持続可能な事業活動を推進し、環境および社会課題に対する責任を果たすことが挙げられます。また、サステナビリティ推進室を通じて経営陣によるリーダーシップを発揮し、長期的な企業価値の向上を目指すことも狙いの一つです。

他部署との役割分担と連携

 サステナビリティ推進室は企業全体の取り組みを統括する役割を持ちながらも、他の部署との緊密な連携が成功の鍵となります。例えば、環境部門や人事部門、広報部門、法務部門などとの協業は、それぞれの専門知識を活用し、より具体的な施策を形にするために重要です。

 役割分担としては、サステナビリティ推進室が方針や計画を策定し、関連部署がその実行をサポートする形が一般的です。これにより、企業全体で統一感のあるサステナビリティ活動を推進しながら、各部署が専門分野での貢献を果たす仕組みが生まれます。

転職のご相談(無料)はこちら>

立ち上げの準備段階で必要なステップ

プロジェクトチームの編成と責任者の選定

 サステナビリティ推進室を立ち上げる第一歩は、プロジェクトチームの編成と責任者の選定です。実務を担うメンバーや統括する責任者には、サステナビリティに関する知識や経験が求められます。また、各部署と円滑な連携を図るため、組織全体を見渡せる視点を持つことも重要です。チーム編成の際には、多様性を意識し、専門的なスキルを持つメンバーや現場に精通したメンバーをバランスよく選ぶことが成功の鍵となります。

目標設定と戦略の策定

 推進室の活動を効果的に進めるためには、具体的な目標と、それを達成するための戦略を策定することが欠かせません。目標は、自社の事業内容や社会的な課題を踏まえて現実的かつ挑戦的な内容に設定することが重要です。たとえば、温室効果ガス排出量の削減や資源循環型のビジネスモデルへの移行といった目標が考えられます。また、戦略を立案する際には、短期と長期のバランスを取りながら具体的なアクションプランを明確にしていきます。

関連規制や基準の把握

 サステナビリティ推進室を成功へ導くには、関連する規制や基準の把握が不可欠です。国内外で拡大するESG投資や非財務情報開示の義務化に対応するため、環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する法規制を把握し、適切に対応することが求められます。さらに、グローバルな基準として注目される国際的フレームワーク(例:SDGsやTCFD推奨事項など)も参照し、自社の活動にどう活用するか検討することが重要です。

利害関係者(ステークホルダー)との対話

 サステナビリティ推進室の活動を効果的に進めるためには、利害関係者(ステークホルダー)との対話を重ねることが非常に重要です。株主や従業員、顧客、地域社会といった主なステークホルダーとのコミュニケーションを通じて、期待される役割や企業の社会的責任を明確化します。この対話を通じて得られた情報は、サステナビリティ活動の計画や施策に反映し、期待に応える活動を進めるための基盤となります。

ベンチマーク企業の事例調査

 同業他社や先進的な取り組みを行う企業の事例を調査することは、サステナビリティ推進室の設置や活動における貴重な参考資料となります。他社の成功事例や課題を学ぶことで、自社にとってどのような方針や施策が有効かを具体的にイメージすることが可能です。また、最先端の取り組み事例やベンチマーク企業の成果は、自社の差別化や戦略的な目標設定にも役立ちます。情報収集を通じて、自らの活動に独自性と信頼性を加えることがポイントです。

転職のご相談(無料)はこちら>

実践的な組織運営のポイント

人材のスキルアップと教育

 サステナビリティ推進室を成功に導くためには、専門知識とスキルを持った人材を育成することが不可欠です。特に、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)に関する深い知識が求められるだけでなく、業界別の課題や規制にも精通する必要があります。社員教育プログラムの導入や外部セミナーへの参加支援など、適切な学びの場を提供することで、サステナビリティの実現に向けた社員の意識と能力を高めることができます。また、リーダーシップを発揮する人材を育成するための研修も効果的です。

内部コミュニケーションと理解促進

 サステナビリティ推進室が立てた戦略を実現するためには、社内全体での理解と協力が欠かせません。そのためには、透明性を重視したコミュニケーションが重要です。例えば、社内向けの説明会やレポートを通じて、サステナビリティ活動の意義や進捗状況を共有することが効果的です。また、従業員が自分の業務において具体的にどう関わるべきか理解できるよう、明確な目標や役割を示すことが大切です。これにより、サステナビリティ推進室の取り組みが全社的なテーマとして浸透しやすくなります。

KPI(重要業績評価指標)の設定と管理

 サステナビリティ推進室の活動が効果的であるためには、適切なKPIの設定とその管理が必要です。KPIは、企業の目指すゴールとサステナビリティ目標との間の進捗を数値化して示す重要な指標です。例えば、CO2排出量の削減率や再生可能エネルギーの利用割合といった具体的な数値目標を設定し、それを定期的にモニタリングします。こうしたKPIを管理することで、自社の取り組みの現状を把握するとともに、改善が必要な箇所を特定しやすくなります。さらに、KPIの達成状況を社内外に公開することで、透明性の向上にもつながります。

外部パートナーとの協働

 サステナビリティ推進室の取り組みをさらに効果的なものにするためには、外部パートナーとの連携も重要です。例えば、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出削減に向けた協働や、地域社会と連携した環境保護活動などが考えられます。また、専門知識や経験を持つ外部コンサルタントを活用することで、自社では対応が難しい課題にも効率的に取り組むことが可能です。さらに、他の企業や非営利団体と積極的に交流することで、新しいアイデアや革新的な方法を取り入れる機会を得ることができます。このような協働を通じ、サステナビリティの推進活動を広げていくことが鍵となります。

転職のご相談(無料)はこちら>

成功の鍵となるポイントと課題克服

経営陣のコミットメントとリーダーシップ

 サステナビリティ推進室を成功させる上で、経営陣のコミットメントとリーダーシップは欠かせません。トップレベルでの明確な意思表明と行動は、組織全体にサステナビリティの重要性を浸透させるために必要不可欠です。特に、経営陣が積極的にサステナビリティ戦略の方向性を示し、自らが模範となる姿勢は、従業員からの信頼を得る鍵となります。また、経営層の関与がなければ、サステナビリティ推進室の取り組みが他部署と連携しにくくなり、組織全体の変革には繋がりません。具体的な例として、エプソンでは社長直轄のサステナビリティ推進室を設置し、経営陣自らが中長期戦略の策定にも関与しています。

短期と長期の目標バランス

 サステナビリティ推進室が推進する活動では、短期的な成果と長期的なビジョンをバランスよく設定することが重要です。短期的な目標として、排出量削減やリサイクル率向上といった具体的なアクションプランを策定・実行することが求められます。一方で、社会や環境に与える長期的な影響を考慮した持続可能な戦略も同時に設計する必要があります。例えば、伊藤忠商事は2017年にサステナビリティ推進室を立ち上げ、持続可能な社会づくりを企業理念に据えた戦略を策定しています。このように短期と長期のバランスを取ることで、企業が一貫性を持ってサステナビリティ推進に取り組むことが可能となります。

従業員の意識改革と文化形成

 サステナビリティ推進の成功には、全従業員を巻き込んだ意識改革と新しい文化の形成が求められます。特定の部署だけでなく、企業全体でサステナビリティを重視する風土を作り上げることで、活動が持続可能になり、組織全体の協力を引き出せます。ルミネを例に挙げると、「WE ILLUMINATE THE FUTURE」のスローガンのもと、明確な方針を掲げながら文化形成に取り組んでいます。このような取り組みには、従業員への教育や啓蒙活動が欠かせません。具体的には、サステナビリティに関する知識やスキルを深める研修の実施や、社内イベントを通じて実践的な理解を促進することが効果的です。

継続的な進捗確認と柔軟な対応

 サステナビリティ推進活動を成功させるには、継続的な進捗確認と柔軟な対応が必要です。活動が計画通り進んでいるかを確認するためには、明確なKPI(重要業績評価指標)の設定が役立ちます。進捗を定期的に評価することで、課題が浮き彫りになり、必要な改善策を迅速に講じることができます。また、社会や環境の変化に応じて戦略や目標を見直し、新たな課題に柔軟に対応していく姿勢が求められます。例えば、学研グループのように取締役会の直下にサステナビリティ委員会を設置し、全体戦略を監督・調整する仕組みを持つことは、柔軟な意思決定の助けとなるでしょう。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)