情報セキュリティ人材不足の現状:今注目されるスキルセットとは

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情報セキュリティ人材不足の現状

不足の背景:増加するサイバー犯罪

 近年、インターネットの普及とともにサイバー犯罪が急増しています。金融機関や医療機関、教育機関などが標的にされるだけでなく、小規模な企業や個人に対する被害も拡大しています。特にランサムウェアやフィッシング詐欺といった攻撃手法は巧妙化しており、これに対抗するためには情報セキュリティに精通した人材が必要です。しかしながら、この急増する脅威に見合ったセキュリティ人材の確保が十分には進んでおらず、深刻な問題となっています。

世界的な需要拡大と国内状況

 サイバーセキュリティにおける人材不足は、世界的な問題と言えます。特にデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業が増える中で、情報セキュリティの需要はさらに高まっています。日本国内でも、インフラ分野や新たなIT技術の導入を進める中でセキュリティ対策の重要性が増しており、これに応じた人材の確保が急務となっています。しかしながら、一部の専門家によると、国内のセキュリティ人材は特にスキル面で物足りない部分があり、グローバル競争においても遅れを取っていると指摘されています。

影響の範囲:企業や個人へのリスク

 情報セキュリティ人材不足の影響は、企業や個人のあらゆる面に及んでいます。企業においては、サイバー攻撃による情報漏洩やシステム停止が大きな経済的損失やイメージダウンを引き起こすことがあります。また、個人においても、個人情報が流出した場合の被害や詐欺に巻き込まれるリスクが増大しています。これらのリスクを未然に防ぐためには、優れたセキュリティスキルを有する専門家が必要不可欠ですが、現在の人材不足はこれらの対策を困難にしています。

統計データで見る人材不足の深刻さ

 国内外の調査データによれば、情報セキュリティ分野の人材不足は顕著です。一例として、経済産業省の調査では、日本国内で情報セキュリティに携わる人材が約8万人不足していると報告されています。この不足は単に人数の問題だけでなく、必要なスキルを持つ人材が不足している点も深刻です。さらに、グローバルな視点から見ても、国際的な調査機関はセキュリティ人材の需要が今後5年で急増すると予測しており、特に高度なスキルを持つ技術者の育成が急務となっています。

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必要とされるスキルセットの概要

情報セキュリティマネジメント

 情報セキュリティマネジメントは、組織全体におけるセキュリティ対策を計画的に実行する上で欠かせないスキルです。これにはリスクマネジメントの知識が含まれ、重要な情報資産を特定し、それらに潜むリスクを評価の上で適切なセキュリティ対策を立案する能力が求められます。また、セキュリティポリシーの策定や保護体制の維持、社員への教育啓蒙活動など、情報セキュリティを組織文化として浸透させる役割も果たします。

ネットワーク及びインフラセキュリティ

 ネットワーク及びインフラセキュリティに関するスキルは、情報セキュリティの基盤を守るための重要な要素です。サーバーやネットワーク機器の構築・運用だけでなく、ファイアウォールやVPN、IDS/IPSなどのセキュリティ技術についての深い知識が求められます。また、アクセス制御や暗号化技術を用いた安全性向上のほか、サーバーやネットワーク構成の脆弱性を検知し、早急に対策を施す対応力も含まれます。

アプリケーションセキュリティの知識

 今日の多くのサイバー攻撃がアプリケーションを標的にしていることから、アプリケーションセキュリティに関する知識も必須です。セキュリティエンジニアには、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)をはじめとする攻撃への対策に対応できるスキルが求められます。また、安全なコーディングや脆弱性診断ツールの使用など、ソフトウェア開発工程におけるセキュリティ確保の実践も重要な役割となります。

リスク分析と対策の提案能力

 情報セキュリティにおいて、リスク分析と対策の提案能力は企業にとって大きな価値を持ちます。セキュリティエンジニアは、システム全体の潜在的なリスクを評価し、それに対する有効な対策を具体的に提案する力が必要です。たとえば、費用対効果を考慮したセキュリティ技術の導入や、体制の最適化を通してリスクを最小限に抑えるアプローチが求められます。このスキルは、企業の経営層との調整やプレゼンテーション能力とも直結するため、コミュニケーション力も重視されます。

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現場で求められる具体的なスキル

サイバー攻撃に対する防御スキル

 サイバー攻撃の手法は年々高度化しており、それに対抗するための防御スキルは情報セキュリティ分野で最も求められるスキルの一つです。具体的には、ネットワークの監視や脆弱性診断、侵入検知システム(IDS)や侵入防止システム(IPS)の活用などを行い、サイバー攻撃からシステムやデータを保護する能力が重要です。また、最新の攻撃手法やセキュリティ技術に関する知識を常にアップデートし、予防的な対策を講じることが求められます。

セキュリティツールの活用・運用能力

 セキュリティツールの正確な活用と運用能力も、現場で重要視されています。例えば、ファイアウォールやウイルス対策ソフト、EDR(Endpoint Detection and Response)など、セキュリティソリューションの選定や管理のスキルが必要です。これらのツールを活用して不正アクセスやマルウェアを防ぐだけでなく、運用時にはツールのログデータを分析して不審な挙動を発見し、迅速に対応できる能力が求められます。特に、情報セキュリティの現場では効率的なツール運用が組織全体のセキュリティ強化に直結します。

脅威インテリジェンスとレポート技術

 脅威インテリジェンスとは、サイバー攻撃の兆候や動向を分析して予測し、リスクを事前に回避するための情報収集および分析技術です。このスキルは、攻撃者の手口を深く理解し、組織が直面する潜在的なリスクを特定するために必要不可欠です。また、これをもとに分かりやすいレポートを作成し、上層部や他の関係者にリスクの状況を伝える能力も重視されます。この技術により、情報セキュリティ対策の計画を練り直したり、具体的な行動指針を示すことが可能になります。

教育・啓蒙活動への対応力

 情報セキュリティは技術者だけが取り組むものではなく、組織全体の意識向上や社員教育も不可欠です。そのため、セキュリティエンジニアには、教育・啓蒙活動をサポートする能力が求められます。例えば、フィッシング詐欺の手口や安全なパスワード管理など、基本的なセキュリティ知識を社員に分かりやすく伝えるスキルが必要です。また、定期的なセキュリティトレーニングの実施や、セキュリティポリシーに基づいたガイドラインの策定などもこの分野の重要な役割です。社員の情報セキュリティ意識を高めることで、組織全体の防御能力が向上します。

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スキル習得方法とキャリアの構築

資格取得の重要性:おすすめ資格とその内容

 情報セキュリティ分野でキャリアを構築するためには、資格を取得することが効果的です。資格は専門知識やスキルを証明する手段となり、採用担当者や顧客からの信頼を得る大きな要因になります。代表的な資格として、まず「基本情報技術者試験(FE)」や「応用情報技術者試験(AP)」が初心者に向いています。さらに専門的な資格として、「情報処理安全確保支援士(RISS)」や国際的に認知された資格の「CISSP(Certified Information Systems Security Professional)」が挙げられます。

 これらの資格は技術的な知識だけでなく、情報セキュリティマネジメントのスキルも含まれているため、実務における幅広い活躍が見込めます。また、資格取得のための勉強を通じて最新のセキュリティ技術や法令について学べる点もメリットです。

オンザジョブトレーニングの効果

 実際の業務を通じてスキルを習得するオンザジョブトレーニング(OJT)は、情報セキュリティ分野において非常に有効です。座学だけでは理解しにくいネットワークセキュリティや侵入検知システムの運用、脆弱性対策なども現場で経験することで実践的なスキルを得ることができます。さらに、OJTはチームメンバーとの協力を通じて、問題解決能力やコミュニケーション能力を養う場としても役立ちます。

 また、日々変化するサイバー攻撃に対応するためには、最新技術や手法を現場で学ぶ必要があります。OJTを活用して現場の課題に即した形でスキルアップすることは、特に情報セキュリティのような変化の速い分野で大きな価値があります。

勉強法とリソースの活用

 情報セキュリティのスキルを学ぶためには、効果的な勉強法とリソースの選択が重要です。まず、基礎的な知識を習得するための独学用の書籍やオンラインコースを活用することが推奨されます。また、問題集や模擬試験を繰り返し解くことで知識を定着させることが可能です。

 実践的なスキルが求められる場合は、ハンズオン形式の学習を提供するプラットフォームを活用することをおすすめします。たとえば、「TryHackMe」や「Hack The Box」などのオンラインサービスを利用すれば、実際のサイバー攻撃シナリオを模擬的に経験することができます。こうしたリソースをうまく活用することで、幅広い情報セキュリティスキルを実践的に学ぶことができます。

異業種から転職成功のポイント

 異業種から情報セキュリティ分野への転職を目指す場合、計画的なスキル取得と適切なアピールが重要です。まずは基礎的なITスキルを学ぶことから始め、それを証明する資格を取得することがおすすめです。情報セキュリティ関連の基礎資格や短期間で取得可能な認定資格を選ぶと良いでしょう。

 さらに、これまでのキャリアで培った強みを情報セキュリティ分野に関連づけてアピールすることが効果的です。例えば、営業経験者であればコミュニケーション能力を、また分析職の経験を持つ人であればリスク分析スキルなどをアピールポイントとして挙げることが可能です。加えて、転職活動前に趣味や独学で技術を習得し、ポートフォリオを作成するなど実績を準備しておくことで、採用される可能性をさらに高めることができます。

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情報セキュリティ人材不足解消への取り組み

企業・行政が提供する支援プログラム

 情報セキュリティのスキルを持つ人材不足が深刻化する中、企業や行政は多くの支援プログラムを実施しています。例えば、行政が主導するサイバーセキュリティ研修や助成金制度は、個人や企業がセキュリティスキルを習得しやすいように設計されています。また、一部の企業では、社内外向けのセキュリティ勉強会やトレーニングプログラムを提供しており、これにより専門知識を持つ人材の育成を目指しています。このようなプログラムは技術者の能力向上だけでなく、全体的な情報セキュリティ意識の普及にも大きく貢献しています。

教育機関と連携した人材育成の事例

 情報セキュリティ人材不足を解消するために、企業や行政は教育機関との連携も強化しています。大学や専門学校では、セキュリティ分野を専門としたカリキュラムや講座を設置する動きが広がっています。また、企業が教育機関に講師を派遣し、実務経験に基づいたセキュリティスキルを直接指導するケースも増えています。例えば、特定企業が学生向けのインターンシップを提供し、実際のネットワークセキュリティやサイバー攻撃対策に関する経験を積ませる取り組みは効果的です。このような連携により、即戦力として活躍できる人材が着実に増えています。

DX化による需要の変化と対応策

 デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、情報セキュリティ分野の需要はますます高まっています。企業はDXによって新しい技術やサービスを導入する一方で、そこに潜むセキュリティリスクにも直面しています。このため、DXに特化したセキュリティスキルを持つ人材の育成が求められています。企業では、自社のDX計画に合わせたセキュリティ研修プログラムを設計する動きが進んでいます。また、DX化によるリスクを洗い出し、適切な対策を講じる専門チームを立ち上げる企業も増えています。

コミュニティ・ネットワークの活用

 情報セキュリティに関するスキルアップの場として、コミュニティやネットワークの活用が注目されています。業界団体やセキュリティエンジニアの活動する専門コミュニティでは、最新のサイバー攻撃事例や対策技術についての情報共有が行われています。これらの場は、技術者同士が経験を交換し合う貴重な学びの機会として機能しています。また、オンラインフォーラムやハッカソンの開催により、物理的な制約を超えてスキルを習得できる環境も整っています。このようなネットワークへの参加は、最新の技術をキャッチアップするだけでなく、現場で役立つ実践的なスキルの習得にもつながります。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)