会社法監査はなぜ必要?大会社に求められる会計監査とは

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会社法監査とは何か

会社法監査の定義と目的

 会社法監査とは、会社法に基づき特定の企業が実施することを義務付けられている会計監査のことを指します。主に財務諸表が適正に表示されているかを確認することが目的で、株主や債権者といった利害関係者を保護する役割を担っています。この監査により、企業の財務情報の信頼性が向上し、外部ステークホルダーに対する透明性が確保されます。

どのような企業が対象になるのか

 会社法監査の対象となるのは、会社法第328条に基づき「大会社」とされる株式会社です。具体的には、資本金が5億円以上または負債が200億円以上のいずれかの条件を満たす会社が該当します。また、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社も会社法監査の義務があります。このように、一定規模以上の企業に対して、必ず監査が実施される仕組みとなっています。

公認会計士や監査法人の役割

 会社法監査を実施するのは、資格を持った公認会計士または監査法人です。監査法人とは、公認会計士が5人以上集まり設立された法人で、専門的な知識と経験を活かして企業の財務情報を適切に監査します。主な役割としては、企業が提出する財務諸表が法令に準拠しており、かつ信頼性のあるデータとして正しく表現されているかを確認する点が挙げられます。これにより、企業の利害関係者に対する透明性が保たれるのです。

会社法監査と他の監査の違い

 会社法監査は、その名前の通り会社法に基づく法定監査であり、特定の条件を満たした企業において義務付けられています。一方、他の監査としては任意監査や金融商品取引法に基づく監査(いわゆる金融監査)が挙げられます。会社法監査は、「大会社」を中心に企業経営の公正性と健全性を保証する狙いがありますが、金融監査は主に証券市場に上場している企業を対象としており、投資家の保護を目的としています。このように、それぞれの監査には対象となる企業や目的に違いがあります。

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大会社に求められる条件と基準

大会社とはどのような規模の会社か

 会社法における「大会社」とは、一定の規模を超えた株式会社を指します。この指標は、会社の資本金や負債総額に基づいて定められています。具体的には、資本金や負債が一定額以上である企業が対象になります。そのため、大会社は一般的に経済活動が活発で、業績の規模が大きい企業であると言えます。このような企業が会社法監査の対象となることにより、信用性の向上や透明性の確保が期待されています。

資本金と負債による基準

 大会社として分類されるための具体的な基準は、会社法第2条第6号に規定されています。この基準によると、次のいずれかの条件を満たす場合に、大会社とみなされます。

  • 最終事業年度における貸借対照表の資本金が5億円以上であること。
  • 貸借対照表の負債総額が200億円以上であること。  これらの基準は、企業の財務的な規模を客観的に示すものであり、大会社に適用される法的義務を明確にするための根拠となっています。

大会社に適用される法的義務

 大会社に該当する企業には、会社法に基づきいくつかの法的義務が課されます。その中で特に重要なものが会社法監査の実施です。会社法第328条では、大会社に会計監査人の設置を義務付けており、適正で透明な財務報告を求めています。また、大会社は定款による特別な記載や株主に対する説明責任も重くなっており、ステークホルダーへの情報開示を徹底することが求められます。

監査が必要な理由について

 大会社に会計監査が求められる理由は、主に株主や債権者などの外部利害関係者を保護するためです。企業の財務状況を第三者である監査法人や公認会計士が適正に確認することで、財務報告の信頼性が向上します。その結果、投資家や取引先などの関係者は安心して情報を基にした意思決定を行うことができます。また、会計監査の実施は、法令の遵守やリスク管理の強化にも寄与し、企業の健全な経営を支える要素となっています。特に大規模な企業においては、このプロセスが業界全体の安定性にも大きく関わるため、監査が必要な会社には欠かせない仕組みとなっています。

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会計監査の流れとプロセス

会計監査の準備と対象文書

 会計監査をスムーズに進めるためには、準備段階が重要です。この準備には、まず監査法人や公認会計士が監査対象の企業の業務や財務状況を把握するために必要な資料を収集することが含まれます。具体的には、貸借対照表、損益計算書、株主総会の議事録、内部統制に関する資料などが対象となります。さらに、企業の最終事業年度の決算情報や各部署の業務フローも重要な検討材料となります。これらの文書を適切に準備することで、監査における正確性と効率が確保されます。

会計監査の主要なプロセス

 会計監査は以下の主なプロセスを経て進められます。第一に、監査計画の策定です。これは、企業の規模や業務内容に応じて、リスクを評価し監査の重点を決める重要な段階です。次に、実地監査が行われます。実地監査では、収入や支出の適正性、内部統制の有効性などが確認されます。その後、監査手続き終了後に監査法人が全体の結果をまとめ、企業の財務諸表が適正かどうかを評価します。最終的に監査報告書を作成し、株主総会などで報告されるのが通常の流れとなります。

監査報告書の重要性

 監査報告書は、会計監査の結果を明文化したものであり、利害関係者にとって非常に重要な文書です。この報告書には、財務諸表が適正に作成されているかどうか、公正性が確保されているかどうかが記載されます。特に、大会社のように会社法に基づき監査が義務付けられている場合、監査報告書は株主や債権者に信頼を提供する役割を果たします。もし問題が指摘される内容が含まれる場合は、企業に早期の対応が求められることになります。また、監査報告書の提出が遅れると、法的なリスクも生じる可能性があるため、計画的な対応が重要です。

会計監査で指摘される主なリスク要因

 会計監査において指摘されるリスク要因の例として、財務諸表の誤表示、内部統制の不備、不必要または過少な引当金の計上、関連当事者取引の不透明性などがあります。このようなリスクは、企業の経営に重大な影響を及ぼす可能性があるため、監査法人はこれらの問題に重点的に対処します。また、不正や違法な取引が発覚した場合、企業の信用が大きく損なわれることから、リスク管理の徹底が求められます。適切な監査を通じてこれらのリスクを早期に発見し、是正することが、企業の持続的な発展に寄与します。

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会社法監査のメリットと課題

企業にとってのメリット:信頼性向上

 会社法監査を受けることで、企業の財務情報の透明性が高まり、信頼性が向上します。特に、大会社にとっては正確な財務諸表を提示することが、株主や債権者など外部ステークホルダーの信頼を得るために不可欠です。監査を通じて財務状況や内部統制が正確かつ妥当であることが証明されるため、企業全体のイメージアップにもつながります。また、厳格な監査を経た結果、内部規律の整備が促進され、経営の効率化や組織力強化にも寄与します。

外部ステークホルダーへの影響

 会社法監査は、投資家や取引先、金融機関といった外部ステークホルダーに対して信頼性の高い情報を提供するものです。特に、監査法人による監査報告書の提出は、企業が適切な財務運営を行っていることを客観的に証明する手段となります。このため、資金調達や取引交渉の場面で有利に働くことが考えられます。また、ステークホルダーからの安心感を得られるため、長期的な関係構築にも大きな影響を及ぼします。

監査に伴う時間的・金銭的コスト

 一方で、会社法監査の実施には、企業側にとって時間的・金銭的なコストが発生します。監査法人との契約や監査報酬の支払いに加え、財務資料や経営情報の提供準備、監査プロセスへの対応が必要です。大会社にとっては必要不可欠なコストともいえますが、中小企業に比べて監査対象範囲が広範であり、関係者の作業負担が増える点も課題として挙げられます。このため、効率的な内部準備やコミュニケーションが求められます。

中小企業との適用の差異

 会社法監査は主に大会社を対象としており、中小企業には義務付けられていません。そのため、適用される基準や目的に大きな差異があります。中小企業では、コスト負担や体制整備の観点から法定監査が不要とされる場合も少なくありません。しかし、大会社が会社法監査を通じて獲得する信頼性や透明性は、企業規模にかかわらず重要な要素であるため、中小企業でも将来的な成長やステークホルダーとの関係強化を目指して任意で監査を受けるケースもあります。このように、監査は企業規模に応じた選択肢として活用することが可能です。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)