この記事では、日本のPE業界の歴史から現状や課題、ビジネスチャンス、展望まで幅広く解説します。
具体的な年表と共に、日本のPE市場の成長やM&A業界におけるPEファンドの現状、国内外の比較に加えて、事業継承問題やグロース投資の動向など、今後のPE業界の展望についても言及していきますので、ぜひご一読ください。
PE業界のこれまでの歴史
1997年 | 日本では、アメリカから遅れを取ること約14年、純粋持株会社の設立が解禁される。 |
1999年 | 株式移転・株式交換制度が商法改正により導入される。 |
1990年代後半〜2000年代初頭 | 日本のPE市場が台頭し、2007年頃まで急速に成長する。 |
2007年〜2015年頃 | 世界金融危機の影響を受け、事業再編案件が激減。案件総額は長期間にわたり低い水準で推移する。 |
2016年〜現在 | 日立製作所や東芝など、大規模な事業再編の動きが活発化した影響を受け、PE市場は急成長。ここ数年は年間200億ドル超(約2.6兆円超)の案件総額を記録している。 案件総額は大規模案件の有無によって大きく左右されるため、市場は変動しやすいものの、案件総数は近年、安定して推移し増加している。 |
M&A業界におけるPEファンドの現状
ベイン・アンド・カンパニーのレポートによると、近年、バイアウトファンドの取引高は年間3兆円前後となっており、国内のM&Aの13%はバイアウトファンドが関わっています。
これは、米国のM&Aに占めるPEファンドの割合約15%に迫る勢いであり、日本のM&A市場でPEファンドが大きな役割を果たしているかということを示しています。
さらに、同レポートでは、500億円未満の案件は過去5年間で約2倍に増加し、500億円以上の案件は約5倍に増加しているというデータも発表されており、PE業界が急成長していることが伺えます。
日本におけるPEファンドの立ち上げから四半世紀が経過した今、PEファンドの実績は評価され、大企業を含む、多くの企業の事業再編の重要な役割を果たす「メインプレイヤー」として大きな注目を集めています。
世界における日本のPE市場の現状と課題
2023年に日本企業が関わったM&A(合併・買収)の金額は約17兆9000億円と2022年から5割増加しました。
M&A件数は減少しましたが、日本産業パートナーズ(JIP)陣営による東芝買収や日本製鉄のUSスチール買収などの大型案件が金額を底上げしました。
併せて、MBO(経営陣が参加する買収)での株式非公開化を選ぶ大手企業も目立ちました。
一方で、世界のPE市場をGDP比で見ると、先進国と比較した場合、ドイツやアメリカなどと比べて3分の1から7分の1程度となっているなど、日本のPE市場は小規模に留まっています。
この主な要因は、M&A案件に占めるPEの割合が低いことよりも、そもそも他国に比べて、M&A案件自体がまだまだ少ないことが挙げられます。
アジア各国と比較した場合は、アジア太平洋地域全体のPE市場に占める日本のシェアは小さいものの、アジア太平洋地域における大規模PEバイアウト市場の大きな割合を占めています。
日本のPE市場は、近年の成長実績や今後の成長余地に加え、日本企業の収益性や公開市場でのバリュエーションも比較的低いことから、海外の投資家にとって魅力的な市場となっています。
一方で、日本におけるPE投資のエントリー時のバリュエーションは、公開市場ほど低くはないため、EBITDAマルチプルは年々上昇し、特に大規模案件では、高マルチプルになっています。
また、PEファームによる案件規模に関しては、ファンドの規模に比例している場合が多いため、これまで大規模案件の多くは、日本に拠点のあるアジアまたはグローバルファームが担ってきました。
しかし、近年は国内PEファームのファンドサイズも大きくなってきており、大規模な案件に参加する国内ファンドも台頭してきております。
PE業界のビジネスチャンスと今後の展望
日本のPE市場の台頭から約20年が経過し、PE市場は拡大してきました。
さらにPE市場は、次のような3つのビジネスチャンスによって、今後さらに発展していくものと予想されます。
コーポレートカーブアウト
1つ目は、日本政府の推進するコーポレート・カーブアウト(大企業による事業売却)や、ROE(自己資本利益率)による、大企業の積極的な事業売却傾向です。
コーポレート・カーブアウトは特に大規模案件との関連性が高く、ガバナンスと透明性の継続的な改善とともに、事業売却の増加が見込まれるため、重要なPE案件ソースとなっています。
事業継承問題
2つ目は企業のオーナーや創業者の事業継承問題解決のための、PEの活用です。
PEは、経営権をプロフェッショナルな経営陣に移行して事業承継を支援するだけでなく、新たな資本を提供してオーナーや創業者の資産を現金化することもできるため、事業継承問題解決において注目を集めています。
日本には一族または創業者が株式の5%以上を有し、かつ社長/CEOが60歳超の企業が300社を超えています。
これは、事業継承の大きな機会と共に、PEの大きなビジネスチャンスがあることを示しています。
グロース投資
3つ目は、2016年以降著しく増加傾向にあるグロース投資です。
スタートアップ企業はこれまで、バリュエーションが数億ドルに達した時にIPOに踏み切る傾向がありました。
しかし近年では、IPO 時のバリュエーションを向上させ、市場・投資家との四半期毎のコミュニケーションに伴う手間を先送するために、追加の資金調達ラウンドを実施することで、IPOを遅らせるケースが増えてきています。
日本ではスタートアップ市場が2000年代後半から活発化し、大規模なファンドレイズを行うことができる事業規模のスタートアップ企業が増加していることから、今後さらなるPE市場の成長が見込まれます。
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コンサルタント紹介
エグゼクティブコンサルタント 加賀 達也
[ 経歴 ]
一橋大学商学部を卒業後、大手生命保険会社に入社。投資用不動産におけるリスク管理の業務に従事。その後、現職に至る。
[ 担当業界 ]
保険業界、不動産業界、投資銀行、投資ファンド、財務アドバイザリー(FAS)
エグゼクティブコンサルタント 松原 大蔵
[ 経歴 ]
東京大学法学部卒業。シンクタンクで研究職を経験後、ヘッジファンドを経て現職。ヘッジファンドでは投資案件の調査、分析、金融商品の組成に従事。
[ 担当業界 ]
アセットマネジメント、ファンド
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