巨大ビジネスと社会課題解決を両立、「ウォーターPPP」のモメンタム

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10年間で30兆円規模のビジネスの可能性。その中枢を担うウォーターPPPとは

PPP(Public Private Partnership)とは

PPPとはPublic Private Partnershipの略で、官民一体となって公共事業に取り組む事業化手法であり、ウォーターPPPはPPPの中でも水道、下水道、工業用水道の領域を指している。

民間企業には水インフラ事業継続のためのより効率的な事業運営(民間企業のノウハウ・創意工夫)が求められている。

ウォーターPPPのビジネス拡大を政府も後押し

このウォーターPPPを活用する形で、国は水インフラ問題に大胆なプランを発表した。
内閣府が発表している、「PPP/PFI 推進アクションプラン」では令和4年から10年間で、事業規模30兆円という目標を設定しており、225/575件の事業件数がウォーターPPPに振り分けられている。
このように具体的な件数や事業規模を見ても、国の推進しようという姿勢を見て取ることができ、巨額のビジネスチャンスがある。

クボタ、オリックスなど有名企業によるウォーターPPPの取り組み事例

株式会社クボタ

クボタは祖業である水道管の製造からIoT技術を駆使した漏水や水質の管理のノウハウを強みとして、ウォーターPPPに参画している。
クボタは長期ビジョン「GMB2030」において、「食料・水・環境分野における新たなソリューション」を挙げており、「水」分野では安心安全でレジリエントな水インフラを構築すべく、「水環境プラットフォーム」の実現を目指している。

クボタは日本の水事業に対して、下記の課題に直面している。

①施設の老朽化

②人口減少による水道料金の減収

③現場の人手不足

この現状を受け、①に対してクボタの祖業である水道管事業の技術を活かして対応している。
②③に対してはDXを活用し、水道管からの漏水や水質の変化など今まで人が行っていた仕事に関して、より少ない人数で施設の管理・維持を行うことで対応している。

また、クボタは日本の水インフラに対して、
「このまま何も手を打たなければ、水道料金が今の何倍にもなる可能性もある。
子や孫の代になっても、蛇口をひねれば安全な水が潤沢に使える社会を持続させるためには、行政や民間企業が大変な努力をして水インフラを維持していく必要がある」

と語っており、PPP(官民連携)が進めば子供たちが水の大切さを学ぶ取組みも一層進展するなどと、ウォーターPPPに対して期待を示している。

オリックス株式会社

オリックスは国内で初めて、空港運営をPPP/PFI手法を用いて行った企業であり、関西国際空港の運営を担っている。
このようにPPP/PFI手法の活用に積極的であり、令和4年から宮城県上工下水一体官民連携運営事業という、宮城県の水インフラ事業の運営にも携わっている。

具体的には、水道用水供給事業工業用水道事業などの業務に対して、予定では20年ほどの運営で契約しており、その契約金額は1,562億円にも上る。
この事業には合計10社ほどが参画しており、日立製作所、東急建設などが代表的な企業として挙げられる。

ウォーターPPPで事業に参画する企業は、一つのプロジェクトに地元企業も合わせて10社以上になることが多く、業界として、PPP手法導入の検証を行うコンサル業界、設備の設計を担当する製造業、出資を行う金融業界、DX・IoTを導入するIT業界など幅広い業界・企業が関わっているケースが多い。

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なぜここまでウォーターPPPが注目されているのか

ここまで紹介したような大企業がウォーターPPPに注目している背景には、ウォーターPPPの特徴が関係している。
ウォーターPPPには民間企業にとって3つの利点と水インフラの社会課題がある。

公共事業の長期運営権による運営権収入

以前まで、3〜5年程度の契約であった従来のPPP契約とは異なり、10年程度の長期契約である。
ウォーターPPPは、以前まで自治体で管理していた水インフラを民間企業に運営してもらうことによって、上下水道の維持管理効率を上げることが目的の1つなので、長期的な事業になる。

投資家からの資金調達によるビジネスの広がり

上下水道の更新工事を伴う事業であれば、PPP/PFI事業契約の下、民間事業者が特別目的会社を組織し投資家やプロジェクトファイナンスから資金の調達が可能で、ビジネスの広がりが期待できる。

国の強い思い

ウォーターPPPは、国が注力しており、2022〜31年度の10年間で水道100件、下水道100件、工業用水道25件の計225件の具体化を狙うという野心的なターゲットが設定されている。

以上の要因から、ウォーターPPPとは、自治体が抱える水インフラの課題を民間に運営権を渡すことによって解決するもので、そこには莫大なお金が動くビジネスチャンスがある。

水インフラの社会的課題

日本は世界的に見ても水インフラが整っている国である。
日本全国どこへ行っても、蛇口をひねれば綺麗な水が出るが、この水インフラの環境を支えている水道管や浄水場の大半が、1960~70年の高度経済成長期に建設されたもので、現在老朽化が深刻化している。

さらに設備の老朽化だけでなく、地方の過疎化による水道料金収入の減少や、工事・管理の人手不足、地震・災害などの問題により、日本の水インフラは維持が困難になる未来が予想される。

この問題の解決のために、水インフラの効率的な運営が求められ、民間企業の技術力・ノウハウが求められている。

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最後に

ここまで紹介した「ウォーターPPP」という手法を用いて行われるプロジェクトの多くは、プロジェクトごとに地元企業も併せて10社以上の企業で特別目的会社を設立して運営される。

1つのプロジェクトに対して、PPP手法の導入の検証を行うコンサル業界、事業運営に対して出資やリースを行う金融業界、ダム・水道管などの設備を担当する建設・製造業界、漏水早期発見や水道使用量の見える化などのネットワーク機能を担当するIT業界まで、幅広い業界が力を合わせてプロジェクトが行われ、ウォーターPPPの盛り上がりによって幅広い事業チャンスがある。

日本の水インフラを維持するためのウォーターPPPという手法は、令和5年6月2日に「PPP/PFI推進アクションプラン」が決定されるなど、これから盛り上がるであろう取組みである。
かつて水大国であった日本は、人口減少・災害などの問題により失われつつある。

この現状を打開する「ウォーターPPP」の取組みにぜひジョインしてみてはいかがだろうか。

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この記事を書いた人

宮崎達哉

信州大学工学部卒、ゼネコンでの施工管理者を経験した後、三重県庁にて産業政策の企画・運営業務に従事。県庁在籍中に、経済産業省資源エネルギー庁及びNEDOにてエネルギー政策に係る新規事業立案や規制・制度の合理化に従事。デロイトトーマツグループでの地方創生及び教育分野のコンサルティング業務を経て現職。
【担当業界 】ESG/サステナビリティ領域、シンクタンク、コンサルティングファーム、監査法人、パブリックセクター、教育、経営層、管理系人材、技術者