皆さんは「不動産ファンド」について、どのくらいご存知でしょうか。
金融業界出身の方であればなんとなくイメージはついているかもしれません。
今回は、不動産ファンドについてじっくり解説していきます。
・不動産ファンドの仕組みや特徴
・不動産ファンドの会社と年収
・不動産ファンドへの転職の最近の動向
不動産ファンドとは?
不動産ファンドとは「投資家から集めた資金を元に不動産へ投資を行う投資のプロ集団」のことです。
プロが不動産に投資し、そこから得られる収益を投資家に還元しています。
もう少し具体的に解説していきます。
「参考:ファンドとは?成功させるための7つのポイント|不動産投資の教科書」
不動産ファンドの仕組み
以下は不動産ファンド業界の簡略化した図です。
このように不動産ファンドでは投資家から集めた資金を不動産に投資し、そこから得られる収益を投資家に還元しています。
また、不動産ファンドの歴史は浅く、日本で解禁されたのが2000年で、翌2001年に初めて上場しました。
不動産ファンドの種類
不動産ファンドは大きく分けて「公募」と「私募」があります。
公募とは不特定多数の投資家を対象に募集することで、みなさんのような個人投資家でも買うことができます。
一方で私募とは、50人未満などの少数の投資家のみに募集をかける方法です。
ここからは種類別に「J-REIT」「私募REIT」「私募ファンド」について解説していきます。
J-REIT
J-REITは公募型の不動産ファンドで、証券取引所に上場しています。
もともとは米国で「Real Estate Investment Trust」と呼ばれる「不動産投資信託」を指す用語ですが、日本では頭に「Japan」を加えて公募の不動産投資信託を指します。
上場しているため、不動産の価値以外にも金利や経済の影響を受け価格が変動します。
また、換金もしやすく流動性が高いことも特徴的です。
私たちでも証券会社等を通じて購入できる金融商品の一種です。
私募REIT
私募REITは、50人未満などの少数の投資家を募集して運用する不動産ファンドです。
J-REITとの違いは「上場しているかどうか」です。
私募REITは上場していないため、不動産価格をより適切に反映することができます。
一方で、換金のしやすさはJ-REITと比較するとやや劣ります。
私募ファンド
私募ファンドも、文字通り私募型の不動産ファンドです。
私募REITとの主な違いは「運用期間」です。
私募REITは運用期間が限定されていないですが、私募ファンドは比較的短い期間(3~10年程度)が定められています。
運用期間が定められているため、償還時の市況によっては「購入価格>売却価格」となりキャピタルロスが生じる場合があります。
まとめ:不動産ファンドの種類
以上でご紹介した3つの不動産ファンドの比較は以下の図のようになります。
一つの会社内で私募も公募も募集している場合もあれば、私募と公募を分けている会社もあります。
不動産ファンドの仕事内容
不動産ファンドの仕事内容を4つに分けてご紹介します。
アクイジション(物件取得)
投資対象となる不動産を探し、取得する業務です。
投資対象となり得る不動産購入を検討した後は、デューデリジェンス(DD)を行います。
具体的には、不動産の情報をもとに期待される収益や利回りを考え、いくらで購入するかの分析・評価をします。
その後、関係者への資料作成やプレゼンなどを経て、実際に契約を結びます。
ここでいい物件を取得できるかどうかがファンド収益にも関わってくる重要な部分になります。
アセットマネジメント
不動産ファンドのアセットマネジメント業務では、不動産から得られる収益や売却時の価格を最大化することが求められます。
実際の管理はプロパティマネジメント会社と連携しながら行っていきます。
アクイジションの際に立てた計画を軌道修正しながら、不動産の価値を高める重要な業務です。
IR・ファンドレイジング
IR・ファンドレイジングは投資家からお金を集める業務です。
具体的には、ファンドに関するプレゼン資料を作成し、投資家に対して実際にプレゼンを行います。
不動産に投資をするためには、当然ながらそれだけ多くの額が必要になります。
ファンドの魅力を伝え、出資を取り付ける重要な業務です。
ミドルオフィス・バックオフィス
不動産ファンドの運用をサポートするのがミドルオフィス・バックオフィスです。
運用パフォーマンスの分析をしたり、コンプライアンス管理をしたりと幅広い業務をこなす必要があります。
不動産ファンドの会社概要と年収レンジ
ここでは、代表的な不動産ファンドの運用会社についてご紹介します。
より詳しい企業一覧をご覧になりたい方はこちらの記事もご参照ください。
国内の不動産ファンド
歴史があり知名度も高いJ-REITの運用会社としては
- 日本ビルファンド
- ジャパンリアルエステイト
などがあります。
他にも、
- デベロッパー系(三井不動産投資顧問 等)
- 金融機関系(みずほ不動産投資顧問 等)
- 商社系(丸紅アセットマネジメント 等)
など日系大手の子会社としても多く存在しています。
国内の不動産ファンドだと年収は800万円~1,500万円程度が一般的です。
部長レベルで1,000万円~2,000万円と、投資銀行などよりは高くないですが、通常の不動産会社よりは高い傾向があります。
外資系不動産ファンド
外資系の不動産ファンドも多くあります。
- サービスプロバイダー系(ラサール、CBRE等)
- 物流系(GLP、プロロジス等)
- 投資銀行系(モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス等)
外資系の不動産ファンドだと年収レンジは幅広く、アナリスト、アソシエイトクラス(若手)は800万円程度から、ディレクターレベル(部長クラス)では5,000万円程度の方もいます。
大きく幅はありますが、一般的には日系の不動産ファンドより年収は高い傾向があります。
不動産ファンドの用途別構成比
下の図はJ-REIT保有不動産の用途別構成比です。
2001年の解禁当初はオフィス100%でしたが、20年以上経ち、物流や住宅などが増えてきました。
なお、割合で見るとオフィスは減っていますが、“投資額”で見るとオフィスも増加しています。
不動産ファンドへの転職動向
まずはこちらのグラフをご覧ください。
ご覧のように、日本の人口ピラミッドは若い世代が凹むような形をしています。
企業単位で見てもおおよそこのような形をしているため、将来の企業を支える20代後半~30代前半の方は転職市場でも特に求められています。
このような背景もあり、不動産ファンドでの「未経験採用」が増えてきています。
今まではそもそも中途採用自体が少なく、経験者のみが求められていましたが、近年では中途での採用人数も増えています。
また、業界を変更するキャリアチェンジでの転職も多々あります。
不動産金融業界に少しでもご興味がありましたら、ぜひコトラのコンサルタントまでご相談いただければと思います。
業界出身のコンサルタントが転職のご支援をさせていただきます。