日々、様々なかたちで進化を続けるIoT(モノのインターネット)。いまやインターネットは、パソコンやスマートフォンといったものに限らず、ありとあらゆるサービスや機械とのコミュニケーションを可能としています。IoTにおける「モノ」の定義とは実に幅広く、冷蔵庫や電子レンジといった家電製品から、工場のラインを支える大型機器や管理システムまでもが対象となっています。センサーなどから得られた情報が共有・活用されるIoTの技術は自動車や医療、農業など分野や業界を問わず幅広く導入されており、これまでにも新しい価値やサービスを多く生み出してきました。こういったIoTの技術はこれから先も拡大を続け、私たち人間のライフスタイルやビジネスを根底から変えていくとさえ言われています。各業界ではどのようにIoTが取り入れられているのか、実際の活用事例やその業界の特徴などともにご紹介します。
進化を続けるIoT業界ごとの活用事例
安全な走行をサポートする自動車業界のIoT事例
【出典】http://gazoo.com/article/future/160830.html
クルマは、現代人の移動や物流のためには欠かすことができない乗り物です。自動車業界では比較的早期からインターネットを利用したサービスの模索が進められ、技術の発達とともに様々なサービスが実際に搭載されてきました。特に注目を集めているのが、自動運転技術の実用化とともに加速的な開発が進められている、走行の安全性を高めるためのIoT技術です。
トヨタ自動車の「ITS Connect」は、その代表的な技術システムと言えます。ITS Connectは車同士、もしくは信号機や道路に設置されたセンサーとの直接通信によって、死角から接近する車や歩行者との接触事故を防ぐための安全運転システムです。この技術は交通死傷者ゼロの社会を目指して開発がされました。これまでにも車自体に搭載されたセンサーが接近を感知するシステムは、各自動車メーカーでも導入が進められてきましたが、ITS Connectでは感知した情報を通信機能によって共有することで、さらなる安全性の獲得を実現しています。
自動車にIoT技術を活用しているのは、自動車メーカーだけではありません。損害保険会社の損保ジャパンが提供している「スマイリングロード」では、ドライブレコーダーに通信機能を搭載することで、リアルタイムでの詳細な走行データの記録と分析を可能としました。操縦のクセや交通状況から生まれる危険を数値化してフィードバックすることで、ドライバーの意識改善や負担の軽減を的確にサポートするほか、保険会社による事故発生時の迅速な対応ができるようになっています。
クルマは輸送や移動に便利な反面、事故発生時の損害や死亡につながるリスクが大きいという問題がありました。こういったデメリットの抑制を目的として、安全性向上のためにIoT技術が積極的に導入されているのが、自動車業界の特徴と言えます。将来、すべてのクルマに自動運転技術が搭載されれば、ボタンひとつでクルマを呼び出し、操縦なしで目的地まで移動できる社会がやって来るかもしれません。
安心の在宅治療や健康管理を可能とする医療業界のIoT事例
【出典】https://webrage.jp/techblog/iot_m2m_case_study/
少子高齢化や健康管理に対する意識の低下は、日本を含む多くの先進国のあいだで深刻な問題となっています。現状の医療や介護システムの崩壊、医療従事者の負担増加が懸念されるなか、医療業界ではIoTやAIといった技術が、こういった複雑な問題や状況を解決するのではないかと期待と注目を集めています。
2016年から実証実験が開始されたオプティムのスマートホームメディカルサービス「在宅医療安心パック」は、AIカメラやIoT技術を駆使して、在宅医療を病院と同じ環境に近づけることを目的としたシステムです。自宅に設置されたAIカメラによって、患者に長時間の転倒や不在があった場合には即座に検知し、病院や家族へ通知されるようになっています。これまでの監視システムと大きく違うのは、患者のプライバシーが固く保護されている点です。カメラによる映像は、通常ではAIにしか解析ができないものとなっており、AIが異常を検知した際にも、家族の了解を得なければ病院側が確認できないようになっています。
医療業界ではそのほかにも、薬の服用を管理するシステムや病院外での治療や健康管理をサポートするIoT技術の導入が進められています。グーグルのスマートレンズ技術では、超小型センサーが搭載されたコンタクトレンズによって、血液採取することなく血糖値の測定ができるなど、糖尿病治療をサポートするための商品開発がされています。患者側と病院側の負担をともに減らし、お互いが利用しやすいシステムづくりを目指しているが、医療業界におけるIoTの特徴です。
効率化が進められる農業・製造業のIoT事例
現場管理やデータ収集、監視作業などは重労働や長時間労働となりやすい原因でもありました。こういった問題を解決するため、農業や製造業では生産数や品質、人材管理などにIoT技術を導入することで、作業の効率化を進めています。日本ではスマート農業実現に向けて、技術導入やシステム開発のために、富士通やパナソニック、NECといった大手IT企業も積極的に参入している分野となっています。
農業や製造工場など、24時間体制での管理が必要となる現場で導入が進められているのが、ビッグローブの「BL-01」です。BL-01は、現場管理や作業員の位置確認、センサーによる情報収集など、幅広い用途のある小型IoTデバイスとして使用することができます。スマートフォンでも広く普及しているAndroidOSが搭載されており、専用アプリケーションの開発やカスタマイズも容易となっています。
農作物の監視や作業現場の管理では、サーコム・ジャパンが提供しているIoTカメラ「RC8110J」なども活用されています。暗視撮影やmicroSDカードへの録画機能のほか、スマートフォンのアプリケーションからでも映像の確認ができるなど、使いやすさにこだわった設置型カメラとなっています。
農業や製造業では、BL-01やRC8110Jのように使いやすさや耐久性の優れたIoTデバイスが導入されやすい傾向にあります。低コストの商品やシステムも増えており、大規模な工場や従業員数が多い企業でも導入がしやすくなっています。IoT技術を活用することで作業の効率化が可能となるだけではなく、管理面でのコスト削減にもつなぐことが期待できます。
セキュリティから子育てまで幅広い通信業界のIoT事例
【出典】http://tech.s-cubism.jp/blog/archives/1217
様々な分野や業界で導入が進んでいるIoTですが、私たちの生活と最も密接な関係にあるのは通信業界と言えるかもしれません。通信業界では主にスマートフォンなどを活用したIoT技術が導入されており、自宅の鍵管理や離れた場所からのコミュニケーションなど、毎日の生活で役立つ様々な機能やアイデアが次々と生み出されています。
ユカイ工学株式会社から販売されている「BOCCO」は、留守番中の子供を見守ったり、メッセージのやり取りができるコミュニケーションロボットです。スマートフォンを使ったメッセージや音声の送受信ができるほか、専用のセンサーによって、ドアの開閉や室温を確認することができます。まだスマートフォンを持たせるのが不安という小さなお子様にも使いやすいIoTデバイスとなっています。
また、鍵の管理だけではなく、スマートフォン自体を鍵にすることができる「Qrio Smart Lock」といった商品も販売されています。外出先からでも鍵の施錠や解錠ができるほか、LINEやFacebookのテキスト送付機能を使って、知り合いや家族に一時的に合鍵を発行することもできます。
IoTは複雑で難しいというイメージをお持ちの方でも、通信業界で導入されているシステムや商品を一度使ってみると、大きく見方が変わるでしょう。共働きの家庭や外出中のペットの管理、離れて暮らす家族とのコミュニケーションなど、今後も幅広い活用が期待される分野です。
最先端のテクノロジーとオシャレが楽しめるコンシューマ向けのIoT事例
IoTが導入されているのは企業やビジネスの現場だけではなく、個人の消費者を対象とした商品も多く販売がされています。中でも人気や注目を集めているのが、体の一部に装着することで使用することができるウェアラブル端末です。主な種類としては、拡張現実(AR)や通信機能を搭載したメガネ型端末「スマートグラス」や、日々の運動や健康管理をサポートする腕時計型端末「スマートウォッチ」などがあります。
スマートグラスの開発で有名なのはソニーやグーグルといった大手企業によるものです。メガネ型のウェアラブル端末にはGPSやディスプレイ、カメラやスマートフォンとの通信といった機能が搭載されており、メガネ越しに見るだけで目的地までの道案内が表示されたり、メンテナンスや組立作業の指示を受けることが可能となります。
スマートウォッチの代表的なブランドとしてはFitbitなどがあり、心拍数や睡眠時間の測定、GPSやセンサーによるランニングやウォーキングの記録管理などが主な機能として備わっています。スマートウォッチ開発にはタグホイヤーといった高級時計ブランドも参入しており、機能性だけではなくデザイン性においても各企業による競争が進んでいます。
そのほかにも衣服型のウェアラブル端末も開発が進められているなど、まるでSFや漫画の世界のようなアイテムが、IoTや小型化技術の発展によって次々と実用化されています。スマートフォンなどの通信機器も、そのうち持ち歩くモノではなく、身につけるモノとなる時代が来るかもしれません。
まとめ
各業界におけるIoTの活用事例やその特徴についてご紹介しました。その業界や分野によって、IoTが導入されているかたちや目的は多少異なりますが、いずれにも共通しているのは、新しい技術がユーザーの負担を減らすために役立っているという点です。これは18世紀後半から始まった産業革命以来、人類が継続して掲げてきた目標とも言えるかもしれません。実際に、IoTやAIといった技術の発展をドイツ政府は、第四次産業革命(インダストリー4.0)だと提唱しています。ありとあらゆるモノがインターネットを通してつながり、AIによって管理される未来、そこでは一体どのようなライフスタイルやビジネスが生まれていくのでしょうか。進化を続けるIoTから、今後も目が離せません。
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