コトラ（広報チーム） 
自動車産業を取り巻くグローバルトレンド
電動化（EV化）の加速と内燃機関からの転換
自動車産業において電動化、特に電気自動車（EV）へのシフトが急速に進んでいます。世界各国で環境意識が高まり、内燃機関に依存する従来型の車両からの転換が求められています。特に完成車メーカーは、競争力を維持するためにEV市場への大規模な投資を発表し、車載リチウムイオンバッテリーやモーターなどの技術開発を強化しています。一方、自動車部品メーカーにも電動化に対応した製品開発が求められ、企業間の競争やコスト効率改善への取り組みが加速しています。このトレンドは、グローバルな自動車市場全体の変革をもたらす重要な動因となっています。
カーボンニュートラル実現に向けた業界の取り組み
気候変動問題への対応として、自動車産業全体がカーボンニュートラルを目指した取り組みを進めています。完成車メーカーは製造プロセスの見直しや、走行時だけでなくライフサイクル全体でのCO2排出削減を目指しています。また、サプライヤーにおいても、資源の循環利用やリサイクル可能な部品開発といった「持続可能性」を意識した製品設計が進められています。このような取り組みは、環境への貢献だけでなく、規制遵守や新しいビジネスチャンスの創出にもつながっています。
規制と政策の影響：各国の自動車産業向け支援策
各国政府による規制や政策が、自動車産業に大きな影響を与えています。一部の国では内燃機関車の新規販売禁止時期が設定され、電動車両への転換が義務付けられる動きが進んでいます。また、EV購入補助金や充電インフラ整備のための助成金など、消費者や自動車部品メーカーを含む産業全体への支援策も増加しています。これにより、特に完成車メーカーは政策対応を前提とした製品開発を進める必要があります。一方、地域ごとの政策の違いがあるため、柔軟な市場戦略が求められています。
新興市場と先進市場の需要予測
自動車産業において、新興市場と先進市場の需要は異なるトレンドを見せています。先進市場ではEVや自動運転車、コネクテッドカーといった次世代車両への需要が高まっていますが、新興市場では価格競争力のある内燃機関車や簡素な電動車両が依然として中心となっています。特に新興市場では都市化の進展や購買力の向上により、需要のさらなる拡大が見込まれています。一方で、先進市場ではカーボンニュートラル実現を目指す規制が需要の方向性を形作っています。自動車部品メーカーにとっては、これらの需要に応じた技術開発と柔軟な対応が重要です。
テクノロジーが牽引する次世代の車産業
自動運転技術の進化と課題
自動運転技術は、現在の自動車産業における革新の中心となっています。特にAIやセンサー技術が進歩することで、高度な運転支援システム（ADAS）から完全自動運転レベル（レベル5）へと進化が期待されています。完成車メーカーや自動車部品メーカーはこぞって開発競争を進めており、車載カメラや画像処理半導体などの重要なシステムを提供するサプライヤーも市場での存在感を高めています。しかし、自動運転の普及には技術的な信頼性だけでなく、法規制や倫理的課題、事故責任の所在といった新たな問題にも対応する必要があります。これらの課題を乗り越えるため、完成車メーカーから監査法人に至るまで、多方面の連携が求められています。
コネクテッドカーを支える通信インフラ
コネクテッドカーは、次世代のモビリティサービスの要として位置づけられています。車両同士やインフラとの通信を可能にすることで、交通渋滞の緩和や安全性の向上が図られています。この技術の基盤となるのが5Gをはじめとした高速通信インフラです。そのため、自動車部品メーカーだけでなく、通信技術を持つ企業との協業が重要視されています。一方で、リアルタイムで膨大なデータが送受信されることにより、サイバーセキュリティも重大なテーマとなっています。コネクテッドカーの普及に伴い、完成車メーカーと部品サプライヤーがリスク管理に積極的に取り組む必要があります。
AI・データ解析による生産性と効率性の向上
AIとビッグデータを活用した分析技術は、自動車産業の生産性を飛躍的に高めています。完成車メーカーや自動車部品メーカーの製造現場では、AIによる品質管理やラインの異常検知が進んでいます。また、データ解析により需要予測が高度化し、無駄を削減した効率的なサプライチェーンの構築が可能になっています。さらに、車両個々に収集された走行データを活用し、メンテナンス時期や部品交換のサイクルを最適化する取り組みも進行しています。これにより、顧客体験（UX）を向上させるサービス開発にもつながり、業界全体の競争力が強化されています。
ソフトウェア主導の車両設計（SDV）の成長
ソフトウェア主導の車両設計（SDV）は、これからの自動車開発の新しい基準となりつつあります。従来のハードウェア中心の開発から、車両の機能をソフトウェアで自由に更新・拡張できる設計へと移行することで、製品のライフサイクル全体にわたる価値提供が可能になります。この動きに合わせ、自動車部品メーカーもよりソフトウェアに特化した製品開発へとシフトしています。一方で、SDVが成長するにつれて、システムの複雑性やソフトウェアの品質管理の重要性も増しています。こうした背景の中、完成車メーカーや監査法人は、これまで以上に厳密な監査や管理体制を構築することが求められています。
サプライチェーンと製造プロセスの進化
キーワードは「持続可能性」：資源の循環利用
近年、自動車産業では、持続可能性を重視した資源の活用方法に注目が集まっています。リサイクル可能な素材の利用や、使用済み部品の再利用といった取り組みが進行中です。特に、リチウムイオンバッテリーのリサイクル技術開発や、軽量で環境負荷の低い車体素材の採用などが、完成車メーカーや自動車部品メーカーの間で広がりを見せています。これらの取り組みは、単なる環境保護の観点だけでなく、資源枯渇リスクの軽減やコスト効率化にもつながっています。
地域ごとの部品調達とグローバル供給網の変化
自動車産業のサプライチェーンは、世界的な経済状況や地政学的変化によって大きな影響を受けています。一方で、地域ごとの部品調達にシフトする動きも出ており、この傾向は「地産地消」のサプライチェーンとして定着しつつあります。完成車メーカーは、予期せぬ供給網の混乱を回避するため、自国または近隣地域のサプライヤーとの連携を強化しています。また、メガサプライヤーの台頭により、より一層効率的なグローバル供給網の構築が進められています。
製造ラインのデジタル化とスマートファクトリーの導入
製造プロセスの効率改善に向けた取り組みとして、スマートファクトリーの導入が加速しています。IoTデバイスやセンサーを活用し、製造ライン全体をデジタル化することで、リアルタイムのデータ分析や、生産性向上に寄与しています。AIやロボット技術を組み合わせることで、人的ミスを減らし、品質の向上も実現しています。これにより、完成車メーカーから自動車部品メーカーまで、製造現場の最適化が進んでいます。
危機管理：半導体不足や物流課題への対応
近年の半導体不足問題や物流の混乱は、自動車産業全体に大きな影響を及ぼしました。自動車産業における半導体の需要が増加する中で、主要メーカーや自動車部品メーカーは安定供給の確保に向けた新しい戦略を模索しています。一部の企業は半導体の自社開発や長期契約を進め、供給リスクを緩和しています。また、物流面では、予測可能な供給計画の確立や、重要な部材の在庫を確保する取り組みが進んでいます。これらの努力が、業界全体の危機管理能力を向上させる鍵となっています。
新ビジネスモデルと業界の未来
シェアリング経済がもたらす車の利用スタイルの変化
自動車産業ではシェアリングエコノミーの浸透が進み、車の所有から利用への移行が顕著になってきています。車の利用方式が変化することで、個人所有の車両需要は減少する一方で、カーシェアリングやライドシェアといったサービスの需要が高まっています。特に都市部では駐車場の確保が難しいことや、環境負荷を減らす意識の高まりから、この傾向が加速しています。これにより、完成車メーカーや自動車部品メーカーはシェアリングサービス向けの車両設計やメンテナンス体制の構築が求められています。
サブスクリプションモデルに基づくサービスの提供
近年、自動車業界においてサブスクリプションモデルが注目されています。これにより、消費者は月額料金を支払うことで複数の車両やオプションにアクセスできるようになります。このサービスは、利用者にとって初期投資を抑えられる利点があり、ライフスタイルに合わせた柔軟な選択が可能です。一方で完成車メーカーにとっては、安定した収益源となるため、新たな事業機会としての可能性が期待されています。また、自動車部品メーカーも、このモデルにおける部品の保守・交換需要の増加に対応する必要があり、契約期間中のサービス提供体制を整備する動きが見られます。
従来型自動車メーカーとテクノロジー企業の競争
自動車産業では、従来型の完成車メーカーとテクノロジー企業の競争が激化しています。特に自動運転やコネクテッドカーの分野では、AIやデータ解析などの技術力を持つテクノロジー企業の優位性が際立っています。一方、完成車メーカーは長年培ってきた製造技術や自動車部品メーカーとの強固な連携を活用し、新技術への適応を図っています。この競争は、単に製品開発や市場シェアを争うだけでなく、新たなユーザー体験を創造する競争にまで広がっています。
顧客体験（UX）の向上に焦点を当てたサービス開発
現代の自動車産業では、単なる「移動手段」としての車から、より高度な顧客体験（UX）を提供するサービスへと進化しています。たとえば、車内エンターテインメントやAIを活用したドライバーアシスト機能、乗車前後のスマートフォンアプリによる操作性向上など、多岐にわたるサービスが展開されています。これにより、完成車メーカーやサプライヤーは、単なる製品提供の枠を超え、長期的な顧客満足度を最大化するソフトウェアやサービスの開発に注力しています。この新潮流は、従来型の自動車産業を大きく変えると予測されています。