はじめに
統合リスク管理(ERM)に従事してきた方の中には、金融市場との関わりが深く、より定量的な分析やリスク評価を専門に行うマーケットリスク部門へのキャリアチェンジを志す方が増えています。金融工学・統計解析・資産運用の知識に加え、企業の統治・レポーティング経験を持つ人材は、金融機関のマーケットリスク管理部門で高く評価されます。本記事では、統合リスク部門からマーケットリスク業務に転職するための準備とステップをご紹介します。
1. マーケットリスクの主な業務
- 市場リスク(為替・金利・株価・商品)の計測と分析
- VaR(バリュー・アット・リスク)やストレステストの実施
- ポートフォリオのリスクモニタリングとリミット管理
- リスク報告書の作成および経営層・当局への提出
- 市場動向に関するシナリオ分析およびリスク評価
2. 統合リスク出身者がマーケットリスクに向いている理由
- ERM経験:統合リスクの中で市場リスクも評価対象として扱っており親和性が高い
- ストレスシナリオ分析の経験:統合リスクでの分析スキルが応用可能
- 経営への報告経験:リスク情報を可視化し、経営層に伝える能力に優れる
- ガバナンスと規制対応力:リスク統制や監査への対応スキルが活かせる
3. 求められるスキルセット
- 金融工学・統計学・計量経済学などの定量分析スキル
- VaRやストレステスト等のリスク指標の理解
- Excel/VBA、R、Pythonなどの分析ツール操作能力
- 金融商品(デリバティブ・債券・株式等)に関する知識
- バーゼル規制(FRTBなど)への対応知識
4. 転職成功のためのステップ
- 統合リスク部門での市場関連業務・分析経験を棚卸し
- 金融工学やVaRに関する学習を強化(講座・書籍など)
- 定量分析ポートフォリオ(Python等でのシミュレーション)を準備
- 金融機関・証券会社・アセットマネジメント会社等のリスク部門求人を比較
- 職務経歴書で「統合リスク → 専門リスク」への応用力を強調
5. 志望動機(例文)
これまで統合リスク管理部門にて、財務・非財務を含めた全社的リスク評価、ストレスシナリオの策定とレポーティング業務に従事してまいりました。特に市場関連のシナリオ設計やKRIの分析を通じて、金融市場の動向とリスク管理の深い関係性に関心を持つようになりました。 今後は、より専門性の高いリスク分野であるマーケットリスクの領域において、定量的分析とERMでのマネジメント経験を活かし、貴社の健全な資産運用と経営判断を支える役割を担いたいと考えております。
6. 職務経歴書(サンプル)
【氏名】中西 拓哉(仮名) 【連絡先】takuya@example.com / 080-xxxx-xxxx 【職務要約】 大手金融グループにて統合リスク管理に5年間従事。市場・信用・オペリスクの統合評価、ストレステストシナリオ策定、経営向けレポート作成などを担当。金融リスクモデリングやVaR計測スキルの習得に向けてPythonや金融工学の自主学習を進行中。 【職務経歴】 株式会社○○ホールディングス(2018年4月~現在) 所属:リスク統括部 職位:主任 ■主な実績: ・統合リスクレポート作成(月次・四半期) ・ストレステストの策定(市場変動・政策金利・地政学リスク想定) ・KRI分析によるリスク兆候の早期警告体制の構築 ・取締役会向けプレゼン資料の作成・報告補佐 【資格】 ・証券アナリスト2次試験合格 ・TOEIC 825点 ・Python金融データ分析講座修了 【学歴】 ○○大学 経済学部 経済理論専攻 卒業(2018年3月)