金利債券のセールスおよびトレーディング業務で培ったマーケット感覚、取引執行力、ポジション管理スキルは、マーケットリスク管理業務においても大いに活かされます。リスク管理部門では、ポジションの健全性確認、VaR等の計量管理、ストレステストなどを通じて、企業全体のリスクマネジメントに貢献します。本記事では、金利債券セールスやトレーダーからマーケットリスク管理職への転職ステップと、志望動機・職務経歴書の記載例をご紹介します。
目次
- 1. セールス・トレーダーとマーケットリスク管理の違い
- 2. 活かせるスキルと経験
- 3. 転職を成功させるステップ
- 4. 求められる知識と補完方法
- 5. 職務経歴書の記載例
- 6. 志望動機の記載例
- 7. まとめ
1. セールス・トレーダーとマーケットリスク管理の違い
項目 | セールス・トレーダー | マーケットリスク管理 |
---|---|---|
目的 | 収益機会の創出 | リスクの定量管理と適正化 |
業務内容 | 価格提示、ポジション構築・解消 | VaR計測、P&L分析、ストレステスト、ポリシー管理 |
視点 | 取引・収益視点 | 統制・リスク耐性視点 |
2. 活かせるスキルと経験
- 金利・クレジット市場への深い理解
- 価格変動リスクの感度(DV01、CS01等)
- トレーディングポジションに対するリスク評価能力
- マーケットイベントの迅速な解釈と影響分析
- フロント部門との調整力
3. 転職を成功させるステップ
- リスク管理業務の基本を理解:VaR、P&Lアトリビューション、バックテストなどの実務を学ぶ
- フロント視点からリスク統制視点への転換:リスクを取る側から、抑制・評価する側への思考の切り替え
- データ分析・数理統計的手法の補完:Excel VBA、Python、SQLなどの活用による効率的なモニタリング
- 志望動機では“フロントの知見を活かし、守りの最前線に立つ”姿勢を明確に
4. 求められる知識と補完方法
- リスク指標(VaR、グレード別リスク量、PV01、CS01、Greeks)
- 金融商品評価(債券、金利スワップ、クレジットデリバティブなど)
- リスク統制の枠組み(リスク限度、ストレスシナリオ等)
- 内部統制・バーゼル規制などのコンプライアンス知識
- 参考書籍:『金融リスク管理のすべて』『マーケットリスクの計量分析』
5. 職務経歴書の記載例
氏名:佐藤 智也 生年:1989年生まれ ■職務要約: 外資系証券会社にて金利債券トレーディング業務を中心に約10年従事。国債・社債等の価格形成・ポジション管理に携わり、収益管理とマーケットリスクへの理解を深める。今後は、これまでの取引知見を活かし、リスク統制・P&L分析の立場から組織全体の健全な運営に貢献したいと考えている。 ■職務経歴: ○○証券株式会社(2014年4月〜現在) ・金利債券(国債・社債)トレーディング、ポジション管理 ・VaRベースのリスクモニタリング協力 ・デイリーP&L報告作成支援、トレーディング評価へのフィードバック ・市場イベント時のボラティリティ報告・レポート執筆 ■保有資格: ・CFA(Level II 合格) ・証券アナリスト ・TOEIC 940点 ■学歴: 一橋大学 経済学部 卒(2012年3月)
6. 志望動機の記載例
トレーディング業務を通じて、マーケット変動のリアルな影響と、そのコントロールの重要性を強く認識するようになりました。今後は、リスク管理という視点から金融市場の健全な運営に貢献すべく、フロント業務で培った感覚と判断力をリスクの定量評価と統制に活かしていきたいと考えております。
7. まとめ
金利債券セールスやトレーディングの経験は、マーケットリスク業務でも大きな武器となります。市場知見と分析能力を兼ね備えた人材は、金融機関における“攻めと守り”のバランスを支える重要な役割を担うことができます。