不動産業界において、プロパティマネジメント(PM)での実務経験を積んだ後、より上流の投資業務である不動産ファンド(AM/アセットマネジメント)へのキャリアアップを目指す方が増えています。現場管理の視点を持った人材は、ファンド業務においても重宝される傾向があり、適切な準備と自己PRによって転職成功の可能性は十分にあります。本記事では、PMから不動産ファンド業界への転職ステップ、業務の違い、求められるスキル、志望動機の作成方法、職務経歴書の記載例まで、網羅的に解説します。
目次
- 1. PMと不動産ファンドの業務の違い
- 2. PM出身者がファンド業界で求められる理由
- 3. 転職を成功させるための具体的なステップ
- 4. 求められるスキル・知識
- 5. 職務経歴書の書き方
- 6. 志望動機の作り方
- 7. まとめ
1. PMと不動産ファンドの業務の違い
まずは、プロパティマネジメントと不動産ファンド(アセットマネジメント)の業務の違いを整理しておきましょう。
業務項目 | PM(プロパティマネジメント) | AM(アセットマネジメント) |
---|---|---|
役割 | 物件の運営管理、テナント対応 | 投資家目線での不動産運用、収益最大化 |
収益意識 | 収支管理(主に現場視点) | IRR、NOI、売却戦略等(投資視点) |
関与範囲 | 現場実務全般 | バリュエーション、ファンド組成、売買 |
2. PM出身者がファンド業界で求められる理由
PM業務で培った現場の運用知識は、AM業務における「実務の裏付け」として高く評価されます。
- 物件管理の実務に明るく、現実的な改善提案ができる
- PM会社のマネジメントや指導に強みがある
- 現場目線での収支シミュレーションに説得力がある
- テナント対応経験が、リーシング施策の実行に活きる
特に近年は、若手の即戦力AM人材不足が続いており、PM出身者への門戸が広がっています。
3. 転職を成功させるための具体的なステップ
- AM業務の理解を深める:運用レポート、ファンド組成、売却戦略など基本用語を学習
- 数字で語れる準備:NOI、IRR、LTV、キャッシュフローなど、数値感覚を磨く
- 業務の「翻訳」:現場業務を、AM業務でどう活かせるかの視点に転換
- 志望動機を磨く:「上流に挑戦したい」ではなく、「どのように貢献できるか」を軸に
- Excel/PowerPointスキルを強化:AMは資料作成が多く、ドキュメンテーション力も評価対象
4. 求められるスキル・知識
不動産ファンド業界で求められる代表的なスキルは以下の通りです。
- バリュエーション:DCF法、直接還元法の理解
- Excelスキル:キャッシュフロー表やシミュレーションモデル作成
- ドキュメント作成力:投資家報告、物件概要書など
- 業界知識:REIT、私募ファンドの運用スキーム
- 資格:宅建士、簿記、ビル経営管理士、不動産証券化マスターなど
5. 職務経歴書の書き方
下記のような切り口で、単なる管理業務の羅列でなく「投資視点に近い実績」としてアピールしましょう。
- 担当物件:オフィス5棟、延床面積◯万㎡、NOI ◯億円
- 収支改善施策:修繕費圧縮、リーシング支援、原状回復費見直し
- PM会社のマネジメント:委託先変更、業務品質向上のためのKPI導入
- 投資家やオーナーへの報告:月次・四半期レポートの作成
6. 志望動機の作り方
「PMの経験を活かして、AMとして投資家に価値提供したい」という志向と、「投資視点を獲得する意欲」が両立している内容に仕上げましょう。
【志望動機例】
私はこれまで、オフィスビル・商業施設を中心としたプロパティマネジメント業務に従事してまいりました。管理運営の最適化に加え、テナント対応や収支改善策の立案など、物件の収益性向上に向けて積極的に取り組んでまいりました。現場で得た知見を活かしながら、より上流の立場から不動産の価値創出に携わりたいと考え、不動産ファンド業界を志望しております。今後は投資家目線での運用や収益戦略の設計に挑戦し、信頼されるAM人材として貢献してまいります。
7. まとめ
プロパティマネジメントで培った「物件を守る力」は、不動産ファンドで「資産を育てる力」として転用可能です。現場を知るAM人材は、ファンドの収益最大化において非常に重要な役割を果たします。数値感覚やファンド業務の理解を深めながら、「実務で貢献できるAM」を目指すことで、着実にキャリアアップを実現することができます。
あなたの現場経験を、次は投資家の視点で活かすフェーズへ。ぜひ、不動産ファンド業界へのチャレンジに踏み出してみてください。
【職務経歴書(サンプル)】
氏名:山本 太一 生年:1990年生まれ ■職務要約: 総合不動産管理会社にて約6年間、オフィスビル・商業施設のプロパティマネジメント業務に従事。収支管理、修繕計画の策定、テナント対応、PM会社の指導・評価を担当。物件価値向上に貢献した実績を多数有し、今後は不動産ファンド業界にて投資家目線での資産運用・収益改善に取り組むべく転職を希望。 ■職務経歴: 株式会社●●マネジメント(2018年4月〜現在) 担当業務: ・オフィス/商業施設 計8棟(延床面積計約5.6万㎡)のPM業務 ・年間NOI予算作成、実績管理、オーナー報告 ・原状回復費用の適正化施策により、年間800万円のコスト削減 ・PM会社選定・契約管理・業務品質向上施策 ・修繕計画(中長期)策定と大規模修繕の進行管理 ■保有資格: ・宅地建物取引士 ・ビル経営管理士(取得予定) ・簿記2級 ■学歴: 明治大学 商学部卒(2013年3月)