コトラ（広報チーム） 
日本の年収事情：平均と中央値の違い
平均年収と中央値の基本的な意味
日本の年収データを語る際には、平均年収と中央値の違いを理解することが重要です。平均年収とは、全ての年収データを合計し、その合計をデータの数で割った値を指します。一方、中央値はデータを小さい順に並べた場合の真ん中の値を意味します。たとえば、年収が「189万円」「287万円」「367万円」「391万円」「1,061万円」の5人がいる場合、平均年収は459万円ですが、中央値は367万円となります。このように、平均年収と中央値は同じデータから導き出されたものであっても、その計算方法や示す値が異なることが特徴です。
なぜ中央値がよりリアルな実態を示すのか
一般的に、中央値の方が平均年収よりも実態に近い値を示すとされています。その理由は、平均年収は高額所得者の存在に大きく左右されるためです。たとえば、一部の非常に高い年収を得ている人々がデータに含まれると、平均値は相対的に引き上げられてしまいます。一方で中央値はデータの中心に位置する値なので、多くの人が位置する収入水準を比較的正確に反映します。このように、中央値はより一般的な所得層を理解するための重要な指標となります。
日本人の平均年収と中央値データの比較
具体的な日本のデータを見てみると、国税庁の令和5年分調査による平均年収は460万円ですが、中央値は約407万円とされています。dodaの調査ではさらに精密なデータが提供されており、正社員の年収中央値は約380万円、平均年収は403万円です。この違いからもわかるように、中央値の方が多くの人の日常的な収入状況を反映していることが見て取れるでしょう。また、男女別の年収では、男性の中央値が420万円、女性の中央値が340万円とされており、平均値との差が顕著に現れています。
データに影響を与える高額所得者の存在
高額所得者の存在は、平均年収を大きく押し上げる効果を持っています。例えば、1,000万円を超える高額所得者は全体から見れば少数派ですが、その人たちの収入が平均値を引き上げてしまい、実際の中間層の収入レベルを正確に反映しない結果となります。こうした偏りの影響を排除するため、一部の分析では高額所得者を除いた中央値や、より細かい収入分布を取り入れた議論が行われています。収入データを理解する際には、この高額所得者の影響を考慮することが重要です。
収入分布の偏りを読み解くポイント
収入分布を詳しく見ると、日本の年収には約300万～400万円の層が最も多く、その次に200万円台と400万円台が続いていることがわかります。このデータが示すのは、日本の年収分布が右に長い「右裾型」をしていることです。これは高所得層の存在によって収入分布の右端に大きな裾が広がる形状を意味しています。このため、より正確に収入の実態を理解するには、平均年収だけでなく中央値や分布全体に着目することが大切です。特に男性と女性で年収分布の傾向が異なる場合があり、これもまた分析時に考慮すべきポイントです。
年齢別・性別による年収の違い
年齢別平均年収と中央値：若年層から中高年層まで
日本の年収事情を検討する際、年代別にみる平均年収と中央値は重要な視点です。20代の平均年収は300万円台半ば程度であり、この年代では収入額は比較的低く、昇進やスキルアップによる上昇余地が大きいことが特徴です。一方、30代では平均年収が約400万円、中央値も同程度とされており、キャリアの中核に差し掛かる年代特有の収入状況を示しています。さらに、40代になると平均年収・中央値ともに450万円へと上昇し、職責の増加やキャリアの成熟が年収に反映されやすくなります。50代以上では、一部の高額所得者の存在が平均年収を押し上げる傾向がみられ、中央値も500万円程度で安定しています。
男性・女性の年収比較：格差の現状
男性と女性の年収を比較すると、男女間の差が依然として存在しています。男性の平均年収は約481万円であり、中央値もおおよそ420万円とされています。一方、女性の平均年収は366万円、中央値は約340万円と、男性の年収と比較して格差が浮き彫りになっています。この格差の一因とされるのが、女性の労働形態の違いや育児・家庭のために働く時間やキャリア構築に制約がある場合が多いことです。とはいえ、女性の平均年収・中央値はいずれも前年比で改善している点は注目に値します。
ライフステージが収入に与える影響
個人のライフステージは年収に大きな影響を与えます。例えば、20代の独身層は主に初任給や若手の給与体系に収まりやすいですが、結婚を機に昇進や転職を考えるケースが多く見られます。30代から40代にかけては、家庭を持ち育児や教育費が増加する一方で、労働力としての価値が高まり年収が上昇する「稼ぎ盛り」の時期となります。一方、50代以降はキャリアのピークに達するため、過去の経験や役職に基づき年収が安定する傾向にあります。しかし、早期退職や定年後の収入減少もこの年代特有の課題といえます。
近年の年齢別年収トレンドの変化
近年では、若年層から中高年層まで年齢別の年収トレンドにも変化が見られます。特に20代から30代の年収中央値が伸びており、これは柔軟な働き方や新興業界での収入増が影響していると考えられます。また、40代から50代では、役職付きの社員や特定の業界で働く個人の収入が平均を押し上げている一方、他の年代と同じくデジタルスキルの重要性が増しており、スキルを磨いた個人への収入集中が観察されています。さらに、人口の高齢化に伴い、シニア層の雇用確保とその収入の実態にも注目が集まっており、年齢層全体において年収中央値が少しずつ改善する傾向があります。
地域別の年収格差
都道府県別にみた年収の平均値と中央値
日本では都道府県によって年収の平均値や中央値が大きく異なることが確認されています。たとえば、大都市圏である東京都や大阪府などでは企業規模や所得水準の高さから、平均年収が高い傾向にあります。一方、地方都市や農村部などでは産業構造や雇用機会が異なるため、平均年収や中央値がやや低くなる場合が一般的です。
国税庁やdodaの調査によると、全体の平均年収は約460万円、中央値は約380万円とされています。しかし、このデータを地域別に分けると、東京都では平均年収が500万円を超える一方で、地方の一部では平均年収が300万円台となるケースもあります。また、この格差は平均値だけでなく、中央値にも反映されており、より正確に地域ごとの所得実態を示しているといえます。
都市部と地方における収入格差の要因
都市部と地方における収入格差の大きな要因の一つは、地域ごとの産業構造の違いです。都市部ではITや金融、製造業など高収入を生む業界が多く集まる一方で、地方では農林水産業や中小規模のサービス業が中心となることが多いため、全体的な収入水準に差が生じます。
また、雇用機会の数や企業の規模も収入格差に影響を与えています。大企業が多い都市部では厚待遇のポジションが多く設定されているのに対し、地方では中小企業が多いため、平均年収や中央値が低くなる傾向にあります。さらに、物価や生活コストの違いも考慮すると、地方在住者が都市部と同等の収入を得ることが難しい状況も影響しているといえるでしょう。
地域格差と転職・移住の選択肢
地域別の年収差は転職や移住の選択肢を考える上で非常に重要な要因といえます。都市部への転職を検討する場合、条件が良ければ年収が向上する可能性が高く、キャリアアップを目指す多くの人にとって魅力的な選択肢となります。ただし、都市部での生活コストも高くなるため、実際に手元に残る金額を考慮した慎重な計画が必要です。
一方で、地方移住を選択する場合、所得の水準が都市部より低い場合が多いですが、生活費が抑えられることや豊かな自然環境の中での暮らしが見込まれることから、自分の価値観に合った生活を選択する人も増えています。特に、リモートワークの普及により職場環境が柔軟化した結果、都市部に住み続けなくても良いというケースも増加しており、このような働き方改革が年収格差の受け止め方を変えるきっかけとなるかもしれません。
年収を伸ばすためのヒント
収入アップのために重要なスキルとは
収入を増やすためには、収入につながるスキルの習得が重要です。近年、ITスキルやデータ分析能力、プロジェクトマネジメントなどの専門スキルが特に高い需要を誇っています。これらのスキルは、多くの業界で求められ、平均年収や職種ごとの年収中央値を引き上げる要因となります。また、コミュニケーション能力や問題解決力といったソフトスキルも、職場での評価を上げる大きなポイントです。
職種・業界選びで年収に差が出る理由
職種や業界の選択が年収に直接影響することは多くのデータで証明されています。例えば、医師やITエンジニアなど専門性が高い職種では、年収中央値や平均年収が他の職種と比較しても高い傾向にあります。また、業界によっては需要の高まりや景気の影響を強く受けることがあります。たばこ業界や医療業界のように安定的な収益を上げやすい分野に属すると、高年収につながりやすいでしょう。
転職で年収アップを実現するポイント
転職は年収を上げるための効果的な方法の一つです。現在の年収が業界の平均年収や中央値を下回っている場合、より良い条件の企業へ移ることで年収アップを目指せる可能性があります。特に、他社で求められている専門スキルを持ち、自身の市場価値を正確に伝えられることが成功のカギです。また、転職活動では、年収だけでなく賞与や福利厚生などのトータルの報酬を考慮することが重要です。
副業やスキルアップでキャリアを強化
副業は本業以外での収入源を確保するための有力な手段です。副業の選択肢としては、フリーランスの仕事やオンラインビジネス、アフィリエイトなどさまざまなものがあります。また、副業を通じて新しいスキルを習得すれば、本業と副業の双方で収入を伸ばせる可能性があります。さらに、スキルアップのために資格取得や専門的なトレーニングを受けることで、職場での評価を高めることができ、収入アップにもつながります。