金融商品開発は、投資信託や保険、仕組債、ETF、年金向けファンドなど、さまざまな金融商品の組成・設計・改善を担う“金融の企画職”です。顧客ニーズ、規制対応、市場環境を踏まえた高度な設計力と、運用・リスク・販売の知見が求められる専門性の高い領域です。
一方、ファンドマネージャー(FM)として、日々資本市場と向き合い、運用戦略を構築・遂行してきた方々にとって、金融商品開発は「運用の知見を商品という形で届ける」新たなキャリアとして注目されています。
本記事では、ファンドマネージャーから金融商品開発職へ転職するためのステップや、活かせるスキル、志望動機・職務経歴書のサンプルまでを詳しく解説します。
金融商品開発の仕事内容とは
- 公募・私募ファンド、投資信託、仕組商品などの組成・設計
- 新規商品の企画立案・開発プロセス管理
- 運用部門・販売部門・コンプライアンスとの調整
- 金融庁など規制対応・ディスクロージャー対応
- 商品改善(パフォーマンス評価、リスク分析、リファイン)
ファンドマネージャー出身者が活かせるスキル
- マーケット知識:金利・為替・株式・クレジットなどに関する深い洞察
- 投資家目線:顧客ニーズに合った商品設計の感覚
- 運用戦略構築経験:投資哲学やアロケーションの組み立てスキル
- リスク管理意識:ボラティリティ、最大ドローダウン、VaRなどの運用管理指標理解
転職ステップ
ステップ1:金融商品開発の「立ち位置」を理解する
金融商品開発は「運用」と「販売」、「法規制」と「市場実態」の橋渡し役です。専門性だけでなく、マルチステークホルダーとの調整力や発信力が求められます。
ステップ2:自身の経験を「商品設計」に変換する
- 「ポートフォリオ構築」→「商品構成の組成・比率設計」
- 「アセットアロケーション戦略」→「ターゲットリターン・リスク商品設計」
- 「ファンドモニタリング」→「商品改良・特性比較・収益性評価」
ステップ3:補足知識を身につける
- 投信約款、適合性原則、販売体制(IFA・銀行チャネルなど)
- 法令対応(金融商品取引法、FIEA、レギュラトリーリスク)
- ドキュメント作成力(目論見書、販売資料、パフォーマンス説明)
ステップ4:志望動機と職務経歴書で「プロダクトマインド」を示す
「投資知見を商品に転換して届けることへの関心」や、「運用の先にある顧客価値を考える姿勢」を表現することが鍵です。
志望動機(サンプル)
私はこれまでファンドマネージャーとして、投資信託や年金ファンドの運用・ポートフォリオ管理に従事してまいりました。投資成果の最大化に努める中で、顧客にとって本当に使いやすく、意図が伝わる“商品設計”の重要性を強く実感するようになりました。
御社の金融商品開発は、運用現場の知見をベースにしながらも、販売・法務・経営との連携を重視し、実効性の高いプロダクトを実現されている点に魅力を感じています。これまでのマーケット知見と運用設計力を活かし、より多くの顧客に届く商品を形にする立場で貢献したく、志望いたしました。
職務経歴書(サンプル)
氏名:山口 裕太(仮名)
現職:●●投信投資顧問株式会社(2015年〜現在)
役職:ファンドマネージャー(債券/バランス型担当)
主な業務内容
- 公募投信・私募年金ファンドのポートフォリオ運用(AUM:300億円)
- クレジット、ソブリン、外国債券などのリサーチおよび銘柄選定
- アロケーション戦略立案とバックテスト
- 月次レポート、顧客説明資料の作成・運用報告
実績
- 5年間でベンチマークを上回る年率平均リターン(+2.4%)を記録
- バランス型ファンドの組成改善提案が採用され、新商品としてリリース
- 営業部門と連携し、ファンド特性の説明補助資料を作成
スキル・ツール・資格
- Excel VBA、Bloomberg、FactSet、Tableau(パフォーマンス分析)
- 日商簿記2級、証券アナリスト(CMA)
- 投信法規、金融商品ガイドライン、販売適合性ルールの理解
まとめ:投資知見を、商品という“かたち”に
ファンドマネージャーとして培った投資の目と分析力は、金融商品開発というステージでも大きな武器になります。「市場を読む力」から「顧客に届く金融商品を設計する力」へ──その転換には、運用の知見に加えて、企画・発信・規制対応の視点が求められます。
投資の現場から一歩前へ。“届ける金融”を実現する商品開発のキャリアへ、ぜひチャレンジしてみてください。