製造業のセールスエンジニアとして技術とビジネスを橋渡ししてきた方にとって、ベンチャーキャピタル(VC)への転職は意外性があるように見えて、実は大きな親和性を持つキャリアチェンジです。スタートアップ支援というフィールドで、技術を見る目、顧客との折衝力、課題解決志向といった現場的な感覚が重宝される場面が増えています。本記事では、セールスエンジニアからVC業界への転職ステップを詳しく解説します。
1. ベンチャーキャピタルにおける役割と必要なスキル
VCにおける投資担当者(アソシエイト〜プリンシパル)の主な役割は以下の通りです:
- 投資先(スタートアップ)の発掘・評価・デューデリジェンス
- 市場リサーチや技術トレンドの分析
- 経営陣との面談、事業計画の精査
- 投資実行後のモニタリング・経営支援
このような業務においては、以下のようなスキルが求められます:
- 事業・技術に対する理解力
- 定量的分析能力(ファイナンス、モデリング)
- スタートアップの成長ドライバーを洞察する力
- 起業家との信頼関係を築ける共感力・提案力
2. セールスエンジニアの経験がVCで活きる理由
- 技術的理解があるため、ディープテック系スタートアップの事業価値を見極めやすい
- 顧客折衝・ニーズ把握の経験が起業家対応に直結
- 製造業のサプライチェーンや現場課題への知見があると産業特化VCにマッチ
- 課題解決型の営業スタイルが、投資後支援業務で活きる
3. 転職に向けたステップ
- 自身の技術的専門領域を言語化: どのような製品・技術・産業課題に携わってきたかを明確に
- 事業視点での実績整理: 顧客の課題をどう捉え、どのように解決したかのストーリーがVCで重視される
- VCやスタートアップの基礎理解: 書籍・セミナー・ネットワーキングイベントで学ぶ
- ファイナンス知識の補完: コーポレートファイナンスやVC投資モデルの理解(Udemy/CFA/中小企業診断士など)
4. 成功事例
大手製造業にて精密機器のセールスエンジニアとして活躍していた30代の方が、ディープテックVCに関心を持ち、技術評価のフレームワークを独自に学習。スタートアップピッチイベントへの継続参加を通じて知見とネットワークを蓄積し、最終的に大学発ベンチャー支援に強みを持つ独立系VCに転職。現在は、製造・ロボティクス系スタートアップへの投資・支援を担当。
5. 志望動機例
これまで製造業にてセールスエンジニアとして、製品の技術的理解をもとに、顧客の課題を把握し、最適なソリューションを提供してまいりました。多くの現場課題に直面する中で、技術を通じて社会課題を解決するスタートアップの可能性に強く惹かれ、ベンチャーキャピタル業界を志すようになりました。VCでは、これまで培った技術的な視点とビジネス実装力を武器に、技術起業家と共に価値創造に取り組みたいと考えております。貴社のように製造・技術系スタートアップへの深い知見と支援体制をお持ちのファームで、社会にインパクトを与える支援をしていきたいと強く願っております。
6. 職務経歴書サンプル
【職務要約】 製造業にてセールスエンジニアとして約6年間、精密機器・装置の提案・技術支援を担当。顧客課題の構造化と技術的ソリューション提案に強みを持つ。スタートアップ領域への関心からVC業界を志望。テックイベントやVC関連勉強会に積極的に参加中。 【職務経歴詳細】 ●株式会社○○製作所(2018年4月〜現在) 部門:営業技術部 役職:リーダー ・B2B顧客向け精密制御装置の技術提案・導入支援 ・技術仕様の調整、設計部門との橋渡し、プロジェクト管理 ・年間数億円規模の新規案件開拓および導入支援 ・スタートアップ展示会出展、技術評価支援プロジェクト参画 ・VC業界セミナー受講(JAFCO・Beyond Nextなど) 【保有資格・スキル】 ・機械工学科卒/機構設計・制御理論の基礎知識 ・中小企業診断士一次試験合格 ・ビジネス英語(TOEIC 840) ・技術資料の読み書き、プレゼンテーション力 【希望職種】 ・ベンチャーキャピタル(製造・ディープテック特化) ・技術評価/投資後支援担当
7. おわりに
セールスエンジニア出身者にとって、VCというフィールドは「技術を見る目」+「ビジネスを動かす力」の双方を存分に活かせる舞台です。スタートアップの支援は、技術者と投資家の言語を繋ぐ仕事でもあり、製造業の現場経験を持つ方にこそ担ってほしい役割とも言えます。自らのバックグラウンドに自信を持ち、ぜひ挑戦してみてください。