コトラ（広報チーム） 
1. 現代日本における大卒女性の年収状況
男女間の収入格差：最新データで見る現実
近年、大卒女性の年収に関して注目が集まっていますが、最新データを見ると、男女間での収入格差は大きな課題として残っています。日経転職版の2022年から2023年の調査によれば、男性の平均年収が823.4万円であるのに対し、女性の平均年収は501.8万円と、その差は約320万円に上ります。この数字は平均年齢が男性43.9歳、女性37.4歳という違いもありますが、それだけでは説明しきれない深刻な格差を反映しています。
また、20代では105万円の差だった年収格差が40代になると300万円に拡大しており、昇進昇格の速度やキャリア形成の違いが格差を広げている現実が見て取れます。これは女性が管理職に就く機会の少なさや、契約社員比率の高さが影響していると考えられます。男女間での収入格差解消には、これらの構造的な課題を解決することが求められます。
女性の平均年収とは？大卒者の基準を知る
厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査によると、大卒女性の平均年収は294万円でした。一方、大卒者全体の平均年収は362.8万円であり、男性大卒者の平均年収392.1万円と比べると女性の収入は明らかに低い水準にとどまっています。この背景には、女性が非正規雇用や契約社員として働く割合の高さが挙げられます。
さらに、大卒女性の20代前半の平均年収は約278万円、20代後半では約307万円と徐々に増加しますが、男性とは依然として大きな差があります。これらのデータからも、大卒女性がキャリアをスタートする時点で年収面でのハンデを抱える状況がはっきりと見て取れます。
年齢別データで見る大卒女性の収入の推移
大卒女性の年収は年齢によって変化しますが、その増加幅には限度があります。例えば、20代後半の平均年収は約307万円であり、それに対し40代の平均年収は597.9万円に達します。一方、同世代の男性と比較すると、その収入格差は依然として大きく、キャリア途中での昇進やキャリアアップ機会の違いが影響していると考えられます。
また、厚生労働省のデータでは、30代の女性の平均年収は約466.9万円ですが、これが男性では703万円と、約240万円の差があることが判明しています。この格差は年を重ねるごとに広がる傾向があり、特に40代では約300万円近い差になっています。これは、女性が育児や介護に直面することが多い年代でもあり、働き方の選択が年収に大きな影響を与えていると言えるでしょう。
業界別に異なる年収：女性に有利なセクターはどこ？
業界ごとに年収の差は大きく異なり、女性にとって有利なセクターも存在します。例えば、IT業界や医療関係の職種では、資格取得や専門スキルの活用によって女性が高収入を得やすい傾向にあります。また、外資系企業や海外市場をターゲットとする企業では、男女間の年収格差が比較的少ないケースも増えています。
一方で、伝統的な製造業や建設業のように、男性比率が高い業界では年収が高水準である一方で、その恩恵を受ける女性の割合は低めです。これに対し、女性が多く働く福祉や教育業界では、全体的な賃金水準が控えめであることが課題として挙げられます。女性が高収入を目指すためには、業界選びや適切なスキルの獲得が重要なポイントとなります。
地域別で見る年収格差：都市部と地方の違い
地域差も大卒女性の年収に影響を与える大きな要因です。一般的に、都市部で働く女性の方が地方で働く女性よりも高収入を得る傾向があります。たとえば、東京や大阪といった大都市圏では、給与水準が高い企業が多く集まっているため、大卒女性も比較的高い年収を得やすい条件が整っています。
一方で、地方では産業構造の違いや、労働市場の規模による影響で給与水準が低くなる傾向があります。また、都市部では女性向けの職種や働き方の選択肢が豊富である点も、地域別年収格差の原因として挙げられます。このため、地方における女性のキャリア形成を支援し、収入格差を縮小するための取り組みが求められると言えるでしょう。
2. なぜ年収格差が存在するのか：原因と背景
伝統的な価値観とキャリア形成への影響
日本社会では、依然として伝統的な価値観がキャリア形成に大きな影響を与えています。特に、「男性が働き、女性が家庭を守る」という性別役割分担の意識が強く残っており、これにより女性はフルタイムの仕事を続けることが難しい場合があります。このような価値観は、女性が高収入を得るために必要なキャリア形成のチャンスを制限し、結果として男女間の収入格差を生む要因となっています。
企業の昇進プロセスが女性に及ぼす影響
企業の昇進プロセスにおいても年収格差の一因が見られます。データによると、30代で管理職に昇進している割合は男性16.9%に対し、女性はわずか5.5%と大きな差があります。この背景には、昇進対象となる役職や職種につく女性の割合が少ないこと、また長時間労働が求められる職場環境が影響していると考えられます。その結果、業務経験や昇進機会の格差が年収差に直結しています。
女性活躍推進法の効果とその限界
2016年に施行され、2022年には改正された女性活躍推進法は、企業における男女間の賃金格差是正を目的としています。特に、社員301人以上の企業には賃金格差データの公表が義務付けられ、透明性の向上が図られました。しかし、効果の及ぶ範囲が大企業に限られることや、各企業の意識改革が進まないなどの課題が指摘されています。そのため、特に中小企業における平均年収の男女差が大きな改善には至っていないのが現状です。
育児・介護と年収：働き方の選択肢が収入に与える影響
育児や介護を担う割合が高い女性にとって、働き方の制約が収入に大きく影響しています。特に、出産や育児のためにキャリアを一時的に休むケースが多く、これが昇進の遅れや年収の減少につながる場合が多いです。また、育児後に復職しても非正規雇用の割合が高くなる傾向があり、契約社員として働く女性は50代で9.9%に達します。一方で、企業の柔軟な働き方制度の整備が進めば、育児や介護を行いながらも収入を高い水準で維持できる可能性が広がるでしょう。
3. 年収向上の鍵：大卒女性が注目すべきポイント
収入アップを叶えるキャリア設計の重要性
大卒女性が年収を向上させるためには、長期的なキャリア設計が欠かせません。一般的に、女性の収入は男性よりも低く、その差は年齢とともに拡大する傾向があります。例えば、30代における女性の平均年収は466.9万円とされており、男性の703.0万円と比較すると約236万円もの差があります。この格差を縮めるためには、自らのキャリア目標を明確にし、それに向けて着実にスキルや経験を積むことが重要です。また、近年では企業の女性管理職登用を増やす動きが進んでおり、キャリアアップを目指す女性にとってチャンスが広がっています。収入アップのためには、可能な限り高い役職を目指したり、中長期的なキャリアプランを練ったりする努力が必要です。
給与の高い業界・職種を狙うための戦略
女性が収入を増やすためには、高年収が期待できる業界や職種を積極的に目指すことが効果的です。年収調査データでは、特にIT・金融などの専門性が求められる業界が高い給与水準を誇っています。また、大卒女性が多く活躍する教育・福祉系分野は社会的意義が強いものの、給与水準が業界全体で比較するとやや低いことが課題とされています。こうした背景から、自身の適性や興味と共に、収入アップに直結する産業領域を見極めてキャリアを選択していくことが大切です。また、中途採用市場での需要が高い職種に転職することで、年収アップを実現することも可能です。
資格やスキルアップがもたらす年収への影響
資格やスキルを獲得することも年収向上の鍵となります。専門性の高い資格を有することで、給与の高いポジションへのアクセスが容易になります。例えば、医療、法律、ITなどの分野では、専門資格を持つことで大きな収入の増加が見込めます。厚生労働省の調査によると、大卒者の平均月収は約30.2万円ですが、資格やスキルを活用することで、これを大きく上回る成果も期待できます。さらに、語学力やプログラミングスキルといった汎用性の高いスキルも、多様な職場で重宝されるため、収入アップに直結しやすいスキルとして注目されています。
副業や資産運用で生む追加収入の可能性
近年では副業解禁の動きが進み、大卒女性にとっても副業や資産運用が追加収入を得る重要な手段となっています。例えば、ブログやYouTubeなどのパーソナルブランドを活かした副業や、クラウドソーシングを通じたライティングやデザインといったスキル依存型副業が人気です。また、資産運用では株式投資や投資信託などの手段があり、定期的な収入を構築することも可能です。ただし、副業や資産運用には時間的負担やリスクが伴う場合もあるため、十分な情報収集と計画が求められます。こうした追加収入の手法を活用することで、平均年収の向上や将来の安定した収入基盤の確立を目指すことができます。
4. 方針と展望：社会全体で取り組むべき課題
政府の施策が年収格差是正に果たす役割
政府は年収格差の是正に向けた施策を進めています。その代表的な取り組みとして、女性活躍推進法が挙げられます。この法律は、企業規模の大きい会社を中心に男女賃金格差の公表義務を課すことで、収入格差の透明性を高めることを目指しています。2022年7月の改正では、社員301人以上の企業に男性と女性の賃金格差データの公開が義務付けられ、20代では105万円、40代では300万円の賃金格差が明らかになっています。このようなデータの公開は、企業が積極的に女性の平均年収を向上させ、格差を縮小させるインセンティブになると期待されています。
企業のダイバーシティ推進に向けた取り組み
企業側でもダイバーシティ推進に取り組む企業が増えています。男女間の昇進昇格スピードやポジション比率の違いが年収格差の一因であることが明らかになっており、その対策として、女性社員の管理職登用や研修プログラムの強化が進んでいます。また、ワークライフバランスの向上を図るため、時短勤務やフレックスタイム制など、柔軟な働き方を導入する企業も増えています。さらに、契約社員比率の上昇や正社員との年収格差も課題とされていますが、これに対しても待遇改善が求められています。
ジェンダー平等の実現に向けた国際トレンド
ジェンダー平等は日本国内だけでなく、国際的にも重要な課題として位置づけられています。世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ指数」では、日本は依然として低い順位にとどまっていますが、年収格差の是正はこの指数に直接影響を与える要素の一つです。一方で、北欧諸国などでは、政府主導での育児休暇の充実や女性の労働参加率向上が平均年収の向上につながっています。日本でもこれらの取り組みを積極的に取り入れることで、長期的な効果が期待されます。
次世代へつなぐ取り組みとキャリア支援
次世代の女性たちがより良い環境で活躍できるよう、教育やキャリア支援の充実も重要です。特に、女性に人気のある業界だけではなく、平均年収が高いとされる分野への進出が注目されています。STEM（科学、技術、工学、数学）分野への進路選択は、長期的に高い収入を得られる可能性が高いとされています。また、キャリアカウンセリングやメンター制度の導入により、昇進スピードの改善や自己実現に向けた環境が必要です。企業だけではなく、家庭や教育現場でもジェンダーにとらわれない価値観を育む取り組みが次世代のために欠かせません。
5. 労働市場の未来と大卒女性が求めること
AIやDXが女性に与えるキャリアの可能性
AIやDX（デジタルトランスフォーメーション）の浸透が、労働市場に大きな変革をもたらしています。特に近年、大卒女性のキャリアにおいてもこれらのテクノロジーが新たな可能性をもたらしています。例えば、AIによる業務の合理化により、テクノロジースキルを持つ女性がリーダーシップを発揮する場面も増えつつあります。また、リモートワークやフレキシブルな働き方が浸透することで、育児や介護との両立が必要な大卒女性が今まで以上に活躍できる土壌が整いつつあります。
しかし一方で、平均年収においても示される通り、女性と男性の間には依然として大きな年収格差があります。こうした格差の是正には、DXによる従来の働き方の変革だけでなく、女性特有のニーズを考慮したフレームワーク構築が求められています。大卒女性がデジタル知識を活かして競争力を持つことは、年収アップに直結する要因となるでしょう。
今後の労働市場で有利になる資格やスキル
デジタル技術の進展に伴い、今後の労働市場では、プログラミングやデータ分析といったIT系スキルがますます重要になっていきます。大卒女性がこうしたスキルを身につけることは、自身の平均年収を向上させるうえで有利な武器となります。また、リーダーシップスキルやプロジェクトマネジメント能力も高年収の職種に求められる傾向が強まっています。
さらに、AI活用の増加に伴い、倫理的な視点や人材開発能力を持つ人材の需要が高まると考えられます。これに対して、大卒女性はキャリア設計時にこれらのスキル獲得を目指すことで競争力を強化できるでしょう。特に管理職や専門職といった高収入ポジションでは、従来の職能に加え新しい分野への適応力が重要です。こうした分野にシフトすることで、女性の年収を社会全体として押し上げることが期待されます。
大卒女性の働き方改革の必要性とその目標
大卒女性の働き方を根本的に見直すことは、日本の労働市場全体の発展につながります。これまでの調査データによると、男性の平均年収と比べた女性の平均年収は依然として低く、その格差を埋めるための対策が急務です。そのためには、企業側が柔軟な働き方を提供し、女性のキャリア形成を支援する工夫が求められます。
また、育児や介護といったライフイベントが女性のキャリアを妨げる要因になりやすい現状を変えるには、時間や場所にとらわれない働き方や、労働生産性の向上を目指した仕組みの導入が重要です。その目標としては、女性がどのライフステージでもスムーズにキャリア形成を続けられる環境の整備が挙げられるでしょう。
結果として、大卒女性の労働市場における立場を向上させることは、社会の経済的発展にも寄与します。一人ひとりが持つ潜在能力を発揮しやすい環境が整えば、平均年収の向上にもつながり、次世代へのポジティブな影響を広げることが可能です。