コトラ（広報チーム） 
第1章 業種別平均年収の概要
業種別年収データの収集背景
業種別の平均年収データは、各業界の給与の実態を把握し、将来的なキャリア構築に役立てるために収集されています。本調査では、60万人以上が登録する転職サービス「doda」のデータを基に、2023年9月から2024年8月までの期間にわたり、97業種の年収情報が集計されました。このような大規模データを活用することで、業界ごとの収入格差やトレンドを正確に分析することが可能となっています。
業種別年収ランキングの特徴
2024年の業種別平均年収ランキングでは、前年と同じく金融業界がトップの491万円を記録し、続いてメーカー業界（481万円）、総合商社（472万円）が高い平均年収を示しました。ランキング上位には、高い専門性や市場価値が求められる業界が並ぶ一方、サービス業や小売業といった労働集約型業種は低めの年収水準となっています。ランキングには、各業界の市場規模や成長性、雇用の構造的要因が反映されている点が特徴です。
平均年収の定義と算出方法
ここで使用される「平均年収」とは、給与としての基本給、手当、賞与を含む年間の総額を指します。このデータは、調査対象者から提供された収入情報を基に算出されており、異常値は除外して平均値を出すことで、統計的な信頼性を確保しています。なお、本調査では国税庁の「民間給与実態統計調査」の基準なども参考にしており、日本全体の平均年収（460万円）と業界平均値との比較も可能です。
業界ごとの給与格差の背景
業種ごとの給与格差は、業界全体の収益性や市場成長性、業務内容の専門性による影響を大きく受けます。例えば、金融業界やIT業界では複雑なスキルが必要とされるため高収入を得やすい傾向にあります。一方で、小売や外食産業は労働時間が長い反面、低収益構造の影響で平均年収が低くなるケースが見られます。また、男女別や年齢層別でも格差が顕著に現れ、特に総合商社では男女間で838万円もの給与差があることが報告されています。これらの背景から、業界を選ぶ際には収入面のみならず、自身のキャリアゴールや成長性を総合的に考慮することが重要です。
第2章 業種別平均年収ランキング2024年版
1位～5位（高収入業界）の特徴解説
2024年版の業種別平均年収ランキングでトップ5にランクインした業界は、金融、メーカー、総合商社、IT／通信、建設／プラント／不動産です。金融業界が491万円で1位となり、その後をメーカー（481万円）、総合商社（472万円）、IT／通信（460万円）、建設／プラント／不動産（441万円）が続きました。
金融業界が高収入なのは、金融商品の複雑化や多様化に伴い、高度な専門知識が求められるためです。また、メーカーは国内外の需要を背景に独自製品と技術力を武器に安定した収益を上げており、高い平均年収を維持しています。総合商社は世界規模での事業展開を行っており、大型案件を手掛けることが高収入に繋がっています。一方、IT／通信業界はデジタル化による需要拡大と人材不足から高い報酬が支払われています。建設／プラント／不動産業界はインフラ整備や都市再開発の増加によって、引き続き安定した需要が見込まれています。
中間層（6位～15位）のデータとその要因
ランキングの6位から15位の業界は、専門商社、インターネット／広告／メディア、サービス、小売／外食などが含まれています。この中間層の業界では、平均年収として350万円から430万円の範囲に収まるケースが多く見られます。
専門商社は取引先ごとに高度な調整力と専門知識が求められるため高めの年収水準を維持しています。一方、インターネット／広告／メディア業界は、デジタルマーケティングの成長により収益構造が向上していますが、職種やスキルレベルで大きな差が生じています。サービス業や小売／外食業界は収益性改善を目指し、効率化やデジタル化を取り入れる動きが進んでいますが、依然として労働時間や構造的課題が平均年収の押し下げ要因となっています。
最下位業界の現状と課題
ランキング最下位には、農林水産・鉱業が含まれており、平均年収は298万円とされています。この業界は労働集約的でありながら、価格競争や自然環境のリスクが高く、収益構造が不安定であることが低年収の背景にあると考えられます。
また、労働基準の改定やICT技術の導入といった対策は進んでいるものの、現場での技術革新や若手人材の参入が限定的である点も課題と言えるでしょう。さらなる付加価値の創出や流通改革が、年収向上の鍵となることが指摘されています。
過去年収ランキングと比較した動向
2024年版の業種別平均年収ランキングは、昨年である2023年と順位に変動はありませんでした。しかし、特筆すべき点は、金融、メーカー、建設／プラント／不動産を含む7つの業界で年間平均年収が上昇していることです。景気回復の兆しやデジタル化推進による業務効率向上が、企業収益を押し上げ、従業員への還元として反映されています。
これらの上昇傾向は、特に若年層にとっても歓迎される動きであり、労働市場の競争激化やスキルアップへの投資がより重要であることを示唆しています。過去と比較して、業界間の年収格差は依然として大きいながら、一部業界では格差縮小への動きも見られます。
第3章 高収入業界に共通するポイント
金融業界が高収入の理由
金融業界が平均年収で他業種をリードしている理由は、その特有の収益構造と関連しています。金融機関は資産運用や投資銀行業務など、高度な専門性が求められる分野が多く、これが給与に反映されています。また、国内外の経済動向に直接影響を受けるため、優秀な人材を確保するために報酬水準を高める傾向があります。2024年の業種別平均年収ランキングで金融業界が491万円とトップとなったのも、こうした背景によるものです。
IT業界・コンサルティング業界の台頭
IT業界やコンサルティング業界は、その成長性と柔軟性からここ数年で注目を集めています。特にIT業界はデジタル化の進展に伴い、AIやクラウド、データ解析といった分野で需要が急増し、エンジニアなどの専門職の年収が押し上げられているのが特徴です。一方、コンサルティング業界は企業の経営課題を解決する役割を果たしており、高度な専門知識や問題解決能力が必要な職種が多いため、報酬が高い水準を保っています。2024年の業界別平均年収ランキングでも、IT／通信業は460万円と上位にランクインしています。
総合商社や外資系企業の魅力
総合商社は、グローバルな取引を通じて高い収益を上げることができるため、高収入業界の代表格とされています。特に輸出入を含む広範囲な事業領域を持つため、専門性の高い人材が求められ、高い報酬が提示されます。また、外資系企業も高い平均年収を誇る傾向があり、結果を出せば報酬に反映される「成果主義」の文化と、外貨高がそれを後押ししています。総合商社の平均年収は472万円で、業界別データでもトップ3に入る高水準を維持しています。
人材需要と年収の関係性
高収入業界に共通して見られるのは、人材需要と年収が密接に結びついている点です。たとえば、金融やITといった業界は専門スキルが必須であり、資格や実務経験が年収に直結します。また、近年はデジタルトランスフォーメーション（DX）やAI活用の拡大などの新しい課題を抱えている企業が増えており、これに対応できる人材への需要が高まっています。このような市場競争が年収の引き上げに寄与しているのです。業界別の平均年収データを見ても、需要と供給のバランスが年収に反映されていることが分かります。
第4章 今後注目するべき業種・トレンド
成長性の高い業種の特徴
成長性の高い業種に共通する特徴として、まず市場規模の拡大が挙げられます。特に技術革新やデジタル化が進む分野では、新たなビジネスモデルの構築や需要増加が促進されている点が顕著です。例えば、IT／通信業界は企業のDX（デジタルトランスフォーメーション）需要が高まり、平均年収の向上にもつながっています。また、SDGs（持続可能な開発目標）への取り組みが注目される中で、再生可能エネルギーや環境関連ビジネスにおける成長も大きく、これらの分野は今後も拡大が見込まれます。さらに、専門性の高いスキルが求められる業界ほど、平均年収が高くなる傾向にあります。
注目される新興業界とその年収
注目を集めている新興業界として、AI（人工知能）やビッグデータ、そしてバイオテクノロジー分野が挙げられます。これらの業界では研究開発費の投入が活発化しており、関連する専門職の需要が急速に高まっています。例えば、AIエンジニアやデータサイエンティストは採用競争が激化しており、業界によっては年収が平均を大きく上回る水準になることもあります。また、経済のデジタルシフトに伴い、Eコマースやフィンテックといった領域も高収入を狙える業界として成長が期待されています。これらの分野では、職種別のスキルや経験による収入の差が顕著であり、自身のキャリア形態に応じた選択が重要になるでしょう。
コロナ禍後の市場変化が生んだチャンス
コロナ禍を経て、多くの業界で働き方やサービスの提供方法が見直されました。その中でも特にリモートワーク関連のサービスを提供する企業や、オンライン教育、医療分野のIT化が進んだ業界は成長幅が大きく、平均年収も上昇傾向が見られます。また、小売業界ではオンライン販売の拡大が新たなビジネスモデルを生み、需要の変化に対応した企業の業績が伸びてきています。一方で、飲食・観光業などの一部の業界では一度大きく落ち込んだ後、需要回復を伴う再構築が進んでいるため、これらの業種でも企業次第で新たなチャンスをつかめる状況です。
グローバル視点での年収比較
業界別の平均年収をグローバルな視点で比較すると、日本国内と他国との間で大きな差があることがわかります。特にIT／通信や金融などの国際的な競争が激しい分野では、欧米やアジア諸国との賃金格差が顕著です。例えば、アメリカではITエンジニアの平均年収が日本のそれを大きく上回り、海外市場の影響を意識したキャリア形成が必要となる場面も増えています。また、外資系企業が日本市場に進出している業界においては、グローバル基準の給与体系が導入されることが多く、結果として国内の平均年収を押し上げる要因となっています。こうした背景から、今後のトレンドとしては、日本国内でも国際的な視点やスキルを持つ人材の価値が一層高まると考えられます。
第5章 年収上昇に向けたキャリアの選択肢
高収入業界への転職成功のポイント
現在、平均年収が高い業界として注目されているのは金融業界や総合商社、IT業界などです。これらの高収入業界へ転職を目指す場合、業界特有のスキルや知識を習得し、即戦力として活躍できる能力をアピールすることが大切です。また、転職エージェントの活用や職務経歴書のブラッシュアップを通じて、自身の市場価値を高める努力も求められます。特に、2024年のデータが指し示すように、金融業界やメーカー業界は高い平均年収を維持しており、これらの業界への転職を視野に入れることが効率的な年収向上につながるでしょう。
スキルアップで狙う年収上昇
業界別の平均年収データからも明らかなように、高収入を得るためには高度な専門スキルが重要なポイントとなります。例えば、IT業界ではプログラミングスキルやクラウド技術の知識、金融業界では金融商品知識や分析力が求められます。日々の仕事を通じたスキルアップに加え、資格取得やオンライン研修、セミナー参加などを積極的に活用することで、収入アップにつなげられる可能性が広がります。
副業や専門性強化の年収への影響
近年、平均年収を補完する手段として副業が注目を集めています。特に、ITやクリエイティブ分野ではリモートワークを活かした副業の選択肢が広がっており、収入の底上げを図れるケースが多いです。また、副業を行うことは実務経験を積む機会にもなり、本業に還元することでさらなる専門性を強化できます。一方で、副業を選ぶ際には労働時間や報酬条件を慎重に見極めることも重要です。
自己投資でキャリアアップを目指す
自己投資は、長期的な年収上昇を目指す上での重要な戦略となります。例えば、キャリアに直結する資格の取得や語学、専門知識の習得は、将来の収入増加に寄与するとされています。調査データによれば、金融業界や総合商社など高収入業界で働く人々は、日々の業務の中で新しいスキルを習得することに積極的です。これに倣い、自身のキャリアパスを明確にし、そのための自己投資を計画的に行うことが大切です。