コトラ（広報チーム） 
韓国の平均年収の現状と推移
最新のデータで明らかになった韓国の平均年収
2024年の調査によると、韓国の常用労働者の平均年収は4917万ウォン（約540万円）であり、前年比で2.9%増加したことが確認されています。この平均年収は、韓国労働市場におけるポジティブな成長を示しており、特にこの数値は物価上昇と相まって給与水準が全体的に上昇していることを反映しています。また、OECDのデータによれば、韓国は正社員の平均年収で629万円とされ、国際的な観点でも注目されています。
OECDによる国際比較から見る韓国の位置付け
OECDが発表した2023年のデータでは、韓国の正社員平均年収は加盟国中で21位に位置しています。この額は47,715ドル（約629万円）とされ、日本の38,515ドル（約509万円）を上回る結果となりました。この統計から、韓国がアジア地域のみならず、グローバルな視点でも競争力のある賃金水準を保っていることが伺えます。ただし、OECD内でもトップクラスの高給与国との格差は依然として存在しており、さらなる上位進出には課題が残されています。
韓国の大企業と中小企業での年収格差
最新のデータによると、大企業と中小企業の平均年収には依然として大きな差があります。300人以上の大企業の平均年収は7121万ウォン（約780万円）で、初めて7000万ウォン台を突破しました。一方、300人未満の中小企業では4427万ウォン（約490万円）と、大企業との差が2694万ウォンに上ります。この格差は2020年から大きく開き、大企業の賃金水準がさらに上昇した一方で、中小企業ではその恩恵が限られていることが背景として挙げられます。
賃金の上昇要因としての物価上昇や最低賃金引き上げ
韓国での賃金上昇の主な要因の一つには、物価上昇が挙げられます。累積物価上昇率は27.1%に達しており、それに伴って労働者の給与も見直されてきました。また、最低賃金の引き上げも賃金全体の底上げに寄与しており、現在は9620ウォン（約1,060円）という金額が制定されています。さらに、2025年までに最低賃金は1万ウォン（約1,100円）に到達する見通しであり、これが中小企業の賃金向上にも繋がる可能性があります。ただし、このような賃金上昇が持続可能であるかどうかは、経済成長や企業の負担増加とのバランスが鍵となります。
日本と韓国の年収比較：何が異なるのか？
日本と韓国の一人当たりGDPの推移
日本と韓国の一人当たりGDPの推移を見てみると、近年韓国の成長が顕著です。2023年のOECDのデータによると、韓国は一人当たりGDPで高い成長率を記録し、平均年収の増加にもつながっています。一方で日本は、長期間にわたる経済低成長と企業の賃金水準の停滞によって、GDPおよび平均年収の伸びが鈍化している状況です。このような経済成長の差が両国の年収格差の一因となっています。
日本企業の年収停滞を招いた要因
日本の平均年収が停滞している背景にはいくつかの要因があります。まず、バブル崩壊以降の長期的なデフレ経済と、それに伴う企業のコスト削減が挙げられます。また、日本企業は韓国と比較して賃金の柔軟性が低く、最低賃金の引き上げも緩やかです。その結果、日本国内の労働市場では賃金が横ばい、または低成長のまま推移してきました。一方で韓国では、最低賃金の大幅な引き上げや政府主導の賃金改革が賃金上昇に大きく寄与しています。
韓国における高収入職種と日本の違い
韓国では、テクノロジー産業や電気・ガス・蒸気供給業、そして金融・保険業といった高収入職種が平均年収の向上を牽引しています。特に電気・ガス・蒸気供給業の平均年収は8870万ウォン（約950万円）と非常に高く、業種間の最大格差が5786万ウォンにも及ぶことが特徴です。一方、日本ではこれらの分野でも平均年収が伸び悩んでおり、職種間の賃金差も韓国ほど顕著ではありません。このような違いが、同じ分野での収入格差を生んでいる要因と言えるでしょう。
為替レートと国際比較における影響
両国の平均年収を比較するとき、為替レートの影響も無視できません。OECD国際比較データによれば、韓国の平均年収は47,715ドル（約629万円）で、日本の38,515ドル（約508万円）を超えています。ただし、これはウォンと円の為替レートにも大きく依存しており、為替が変動すれば相対的な順位も変化する可能性があります。このように、為替が国際的な比較や評価に影響を与える点も考慮する必要があります。
韓国経済の成長要因
輸出主導型経済がもたらした成果
韓国の経済成長を語る上で、輸出主導型経済の成功を無視することはできません。特に、半導体、自動車、家電製品など、世界市場で高く評価される製品群の輸出が韓国の経済を大きく牽引してきました。韓国は、1990年代以降、積極的に輸出を促進する政策を取り、グローバル市場で競争力を高めるための技術開発に注力してきました。この輸出優位性が、国内産業の活性化と平均年収の向上に寄与しています。
2024年現在も依然として半導体などの先端技術分野における韓国の競争力は高く、これらの分野が労働市場に対する需要を生み出し、平均年収の上昇を支えている要因の一つと言えるでしょう。
テクノロジー産業の成功が雇用に与えた影響
韓国経済は、テクノロジー産業を中心にした産業変革を遂げてきました。世界市場をリードするサムスン電子やLGエレクトロニクスなどの大企業が次々と高成長を遂げ、それに伴い多くの高給与な雇用機会を生み出しています。特にITや通信分野では、技術革新がさらなる需要を創出し、関連するスタートアップ企業も活況を呈しています。
こうしたテクノロジー産業の成長は、専攻分野に応じた高いスキルと学歴を持つ労働者に対する需要を増加させ、結果として、平均年収を押し上げる重要な原動力となっています。さらに、技術職や研究職が多く雇用される環境が整うことで、韓国社会の中で高収入を得る個人の割合が増加しています。
政府施策による賃金改革と国民生活の改善
政府による最低賃金引き上げや労働時間短縮の取り組みも、韓国の平均年収向上に貢献しています。例としては、韓国政府が設定している最低賃金が、近年さらなる引き上げを続けている点が挙げられます。2025年には最低賃金が1万ウォンに達するとされており、これは日本と比較して非常に競争力のある基準です。
また、労働条件の改善も国民生活の底上げに寄与しています。労働時間が2011年の2057時間から2023年には1855時間へと減少し、賃金は増加率71.1％を記録するなど、従業員の生活の質を上げる施策につながっています。こうした賃金改革は、国民1人ひとりが受け取る収入を増やすだけでなく、消費者需要を高め、結果として経済全体の成長を支える役割も果たしています。
韓国企業のグローバル展開と高所得層の増加
韓国企業のグローバル市場での成功も、平均年収の向上に大きく寄与しています。サムスン、現代自動車、POSCOといった国際的企業は、世界各国での市場シェア拡大を通じて大きな収益を上げています。その成果が韓国国内の給与に反映される形で、大企業の平均年収を引き上げています。
2023年には、300人以上の企業での平均年収が7121万ウォン（約780万円）を超え、これは中小企業の平均年収をはるかに上回る数字です。これに伴い、韓国全体では高所得者層が増え、結果として国内の平均年収も向上しています。また、このようなグローバル展開により得られた資金を技術革新や新市場開拓に投資することで、雇用の創出と労働市場の安定にもつながっています。
今後の展望と課題
持続可能な年収の上昇を維持するための課題
韓国の平均年収は着実に増加しており、大企業の初めて7000万ウォンを超えた平均年収や、中小企業の前年比3.0％増加など、好調な数字が見受けられます。しかし、これを持続可能なものとするためには、多くの課題が残されています。まず、大企業と中小企業の賃金格差が大きいという問題です。2024年にはその格差が2694万ウォンに達しており、大企業の平均年収が780万円に対し、中小企業は約490万円と水準が大きく異なっています。これにより、中小企業では人材確保が困難になる一方、高コスト構造により競争力を維持するのも課題です。また、高い賃金上昇率は企業にとって負担が重くなるため、持続的な成長を確保するには、政府による賃金政策のさらなる調整が必要とされています。
物価高騰による生活コスト増加への懸念
年収が増加している一方で、物価の高騰が韓国社会における大きな課題となっています。累積物価上昇率は27.1％に達しており、これが生活コスト全体を押し上げています。例えば、最低賃金の上昇は低所得層の生活を改善する一方で、小規模事業者にとってコスト負担を増加させる結果にもつながっています。また、電気・ガス・蒸気供給業のような高収入業種がある一方、宿泊・飲食サービス業など低収入業種との格差が広がり、地域や職種による生活費の負担の違いも問題となり得ます。物価の上昇が家計の負担を増やし、経済成長による恩恵が均等に行き渡らなくなる可能性があるため、個人の購買力を高める施策が不可欠です。
少子高齢化社会の中での両国経済の未来
韓国と日本はいずれも少子高齢化社会に直面しており、これが経済の発展と平均年収の上昇に影響を与えています。労働人口の減少が進めば、経済の活力が低下し、年収の成長率が鈍化する可能性があります。韓国では労働時間が2011年の2057時間から2023年には1855時間に減少し、効率化が進んでいるものの、それを補うためには生産性の向上がさらに求められます。一方、日本では長年の経済停滞が平均年収の伸び悩みを招いており、韓国との差が拡大しています。このような高齢化に伴う社会・経済構造の変化に対応し、新しい産業を創出することが、両国の未来における課題といえるでしょう。
韓国の成功モデルが日本に与える示唆
韓国の平均年収が日本を上回り始めた背景には、輸出主導型経済政策やテクノロジー産業の成功、そして最低賃金引き上げなどの政府主導の改革が挙げられます。これらの要因は日本にとっても多くの示唆を与えています。特に、グローバル市場での競争力を高め、高収入の雇用を創出する分野へのフォーカスは、日本が参考にすべき点です。ただし、韓国の成功モデルには大企業と中小企業の大きな格差という課題も伴っているため、これをそのまま取り入れるのではなく、日本の現状に合わせた実施と調整が求められます。両国が抱える共通の課題を克服することで、経済全体の底上げを実現する可能性が広がるでしょう。