注目のリース業界トップ企業、海外進出で見せる底力

リース業界の概要と成長の背景

リース業界とは何か

リース業界とは、企業や個人が必要な設備や物品を購入する代わりに一定期間借り受け、その期間中に定額料金を支払う仕組みを提供する事業を指します。リースには、購入費用全額を分割で返済する「ファイナンス・リース」、運用目的で一定期間のみ使用する「オペレーティング・リース」など、利用目的や契約形態に応じたさまざまな種類があります。その利便性から、リースは企業が設備投資を効率的に行うための手段として広く活用されています。

市場規模と国内外の動向

国内リース業界の市場規模は、ピーク時の1991年には8.8兆円を記録しましたが、2000年代に入り停滞しました。リーマンショックや会計基準の改正などの影響を受け、2010年代には4.6兆円規模まで縮小しました。しかし近年では、新興市場での需要と新しいビジネス分野への展開によって回復基調にあります。一方で、海外市場ではリース需要の増加が顕著で、特にASEAN地域や中国など成長著しいエリアでの市場拡大が進行中です。リース業界は国内外で異なる成長の様相を呈しており、海外進出が業界全体の成長を牽引しています。

成長を促した要因とは

リース業界の成長を促した要因として、資金調達手段の多様化と企業のコスト削減意識の高まりが挙げられます。設備投資を直接購入するより初期投資を抑えられるリースは、多くの企業にとって有効な選択肢となっています。また、経済グローバル化に伴い、海外進出先での設備投資を効率化する手段としてリースが採用される事例も増加しています。さらに、ICT機器や医療機器、環境エネルギー分野といった成長分野への対応も、業界全体の成長を後押ししています。

国内トップ企業の動向

国内のリース業界では、銀行系リース会社や総合商社を母体とする企業が大きな存在感を示しています。例えば、三井住友ファイナンス&リースやオリックスは、国内市場だけでなく海外市場での事業拡大にも注力しています。特に、ASEAN地域や欧米、中国市場での専業リース会社や金融機関との協業を通じて国際的な事業展開を加速させています。また、これらの企業は環境エネルギー分野への積極的な投資やM&A戦略を活用し、新しい市場でのシェア拡大を達成しています。こうした動向は、海外進出を軸とした業界の発展を象徴するものと言えるでしょう。

転職のご相談(無料)はこちら>

リース業界の海外進出戦略

海外展開の歴史と地域別取り組み

リース業界の海外進出は、リース事業が誕生した米国での取り組みを起点としています。日本では、1963年に設立された日本リース・インターナショナルがリースビジネスを展開し、1970年代には東南アジア市場へ進出を果たしました。その後、米国、欧州、中国と拠点を拡大していきました。特にASEAN地域は進出初期から注力してきた市場で、三井住友ファイナンス&リースをはじめとする主要企業は、シンガポールやベトナムに拠点を構えています。

地域別の取り組みとして、東南アジアでは中小企業向けリースサービスの提供が重視され、欧州では環境意識の高いマーケットを意識した持続可能なリース商品が拡大しています。また、中国ではインフラ需要を背景に、大型設備リースが市場の鍵を握る分野となっています。

主要企業の国際化成功事例

リース業界の海外進出において、各企業が行った戦略が成功の礎となっています。代表的な例として、三菱HCキャピタルはASEAN市場での物流業界への進出や、資金調達を強みとしたファイナンス・リースの提供を推進しました。また、オリックスは早期段階から国際展開を図り、特に北米では航空機リースビジネスで顕著な成果を挙げています。このような成功事例は、現地ニーズへの迅速な対応や専門分野での強みを活かした戦略が鍵となっています。

さらに、各企業は単なるリース提供にとどまらず、金融サービスの包括的な提供やM&Aを活用した市場浸透にも注力しています。これにより、現地の経済成長に寄与しながら収益拡大を実現させています。

海外リース事業のビジネスモデル

海外進出におけるリース事業のビジネスモデルは、主にファイナンス・リースとオペレーティング・リースに依存しています。ファイナンス・リースは、企業の設備投資や資金調達を支援し、比較的安定した収益モデルを提供します。一方、オペレーティング・リースは、一定期間設備を貸与することで、企業が初期投資を抑えながら設備を活用できる仕組みを提供します。

加えて、多くの企業は環境意識やデジタル化に対応した新しいリース商品にも注力しています。例えば、ICT機器や再生可能エネルギー設備のリースサービスが例として挙げられます。また、クロスボーダーリースといった国際的なニーズに応えるサービスも拡充され、市場の広がりに寄与しています。

現地協業による成功要因

リース業界が海外市場で成功を収める要因として、現地パートナー企業との協業が挙げられます。現地市場の習慣や規制を理解するためには、地域の取引先や金融機関との連携が重要です。この協業体制により、迅速な市場対応と現地顧客への適切なサービス提供が可能になります。

さらに、現地パートナーと共同で新たなリース商品を開発することも、事業の拡大に寄与しています。例えば、東南アジアでは中小企業向けのシンプルなリース商品を展開することで、幅広いクライアント層を獲得しています。このような取り組みは、リース業界が海外進出を進める上で欠かせない成功要因の一つといえるでしょう。

転職のご相談(無料)はこちら>

注目すべき各社の最新取り組み

ICT機器や医療機器の拡充

リース業界では、特にICT機器や医療機器といった分野への注力が目立っています。ICT機器のリースは、企業がデジタル化を進める中で需要が高まっており、短期間での最新機器の導入や柔軟な資金計画を可能にしています。また、医療機器においては、高額な初期投資を避けつつ高度な医療を実現するため、多くの病院や医療施設でリースサービスが採用されています。このような取り組みは、リース業界企業の競争力を高める要因となっています。

環境・エネルギー分野へのシフト

環境問題やSDGsへの関心が高まる中、リース業界も環境・エネルギー分野に力を入れています。例えば、再生可能エネルギー関連の設備や電気自動車、蓄電池などのリースが注目されています。また、カーボンニュートラルを目指した取り組みとして、設備利用の効率化や省エネ機器の導入支援など、環境配慮型の事業展開が進んでいます。こうした分野へのシフトは、企業の持続可能な成長とともに、新たな市場創出にもつながっています。

新興市場での拡大戦略

新興市場への展開はリース業界にとって成長の鍵となっています。特に、ASEANをはじめとするアジア地域では、経済発展に伴うインフラ整備や企業設備投資の増加により、リースサービスのニーズが高まっています。中でもシンガポールやベトナムといった地域では、先進技術と現地の需要を結び付ける戦略が成功を収めています。また、現地企業との協業やカスタマイズされたサービスの提供を通じて、競争力を確立し、拡大を続けています。

M&Aを活用したグローバル展開

近年、リース業界ではM&A(企業の合併・買収)を活用したグローバル展開が進行しています。特に、海外進出を目指す企業にとって、現地市場へのリーチを迅速に進める方法としてM&Aが重視されています。例えば、大手リース企業が現地のフィンテック企業や設備リース会社を買収することで、サービス領域を広げ、既存の顧客基盤に直接アクセスするケースが増えています。これにより、グローバル市場での存在感を高めるとともに、変化する消費者ニーズへの適応力を強化しています。

転職のご相談(無料)はこちら>

リース業界の将来展望と課題

成長を持続するための施策

リース業界が成長を持続するためには、新たな市場の開拓や多様なニーズに応える柔軟なサービスの提供が必要です。特に、海外進出が鍵となる中で、地域ごとの経済環境や法規制に対応したカスタマイズ型ビジネスモデルが期待されています。さらに、環境意識の高まりによってグリーンリースなどの環境配慮型のサービスを拡充することも重要です。これに加え、顧客企業が望む柔軟な資金調達手段やリース商品へのニーズに応じた商品ポートフォリオを拡大する施策が求められています。

法規制や国際ルールの影響

リース業界は会計基準の改正や各国の法規制による影響を大きく受ける業界です。近年では、国際的な会計基準であるIFRS16の導入がリース業務の可視化を求め、それに伴いリース会社と顧客企業双方に新たな対応が必要となりました。また、各国で異なる法規制や税制を正確に理解し、それに基づき適切なリース契約を提供することが、海外進出の成功の鍵となります。これらの課題に取り組むためには、法的環境の変化を見極める専門知識やリスクマネジメントの強化が必要です。

デジタル化とリース業務の変革

デジタル技術の進化は、リース業務にも大きな変革をもたらしています。特に、IoTや人工知能(AI)を活用することで、資産管理や利用状況のリアルタイムのモニタリングが可能となり、リース効率を大幅に向上させることが可能です。また、オンラインプラットフォームの活用により、リース契約の手続きや顧客対応を迅速化することが求められています。これに加えて、データ分析を活用してユーザーの行動を予測し、よりニーズに合った商品やサービスを提供することも競争力強化の一環です。

競争激化への対応策

リース業界は国内市場の縮小に伴い、競争が激化しています。この状況下で競争優位を保つためには、差別化されたサービスや商品を展開する必要があります。たとえば、環境・エネルギー分野やICT機器のリース事業への注力、新興市場での活発な事業展開など、新たな成長分野への投資が求められています。また、M&Aを通じた事業規模の拡大や現地パートナー企業との協力を深めることで、海外進出を強化することも重要な戦略です。こうした施策により、リース業界の新たな成長機会を捉えることが可能となります。

この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)