コトラ（広報チーム） 
リース業界の基礎知識：仕組みと役割
リース業界の基本構造：企業と顧客の関係
リース業界は、事業者が顧客に対して機械設備や車両、情報通信機器などをリース契約に基づいて貸し出す業界です。その基本構造は、リース会社が設備を購入して資産化し、顧客に一定期間貸し出すという流れで成り立っています。顧客はこれにより大きな初期投資を抑えることができ、月々のリース料を支払うことで資産が利用できるというメリットを享受します。企業としては、安定した収益源としてリース料が見込めるほか、リース終了後の資産処分による付加価値を生み出すことが可能です。また、顧客との契約期間中に生まれる信頼関係も、リース業界の成長を支える要因となっています。
リースの種類：オペレーティングリースとファイナンスリース
リース契約には大きく分けて「オペレーティングリース」と「ファイナンスリース」の2つの種類があります。オペレーティングリースは、リース期間終了後に資産がリース会社側に返却される方式で、短期間の使用が多いのが特徴です。これに対して、ファイナンスリースは長期間の契約が主で、リース期間終了後に顧客が資産を買い取る選択肢も設けられるケースが一般的です。この種類ごとの違いにより、リース業界のサービスはさまざまな顧客ニーズに応える柔軟性を持っています。さらに、DX推進などの現代的な需要にも適応し、両方式とも企業運営の重要な一部として活用されています。
主な収益源：リース料と付帯サービス収益
リース業界の主な収益源は、顧客からのリース料です。このリース料は、対象資産の購入価格や契約期間、利率、管理費用などに基づき算定されます。また、リース会社は付帯サービスによる収益も重要な柱としており、メンテナンスサービスや保険プランなどが挙げられます。特に情報通信機器やオートリース分野では、DXの推進が需要を押し上げていることもあり、付帯サービスを利用した収益の増加が見込まれています。このような多角的な収益構造により、リース業界は安定した成長を続けていると言えます。
レンタル業との違い：リース業界特有の特徴
リース業界の特徴を理解するためには、レンタル業との違いを押さえておくことが重要です。リースは長期的な契約を基本とし、資産利用に伴う継続的なリース料の支払いが前提です。一方でレンタルは、短期間の柔軟な契約が可能で、必要なときだけ機器やサービスを利用できるという利便性を持つ点が特徴です。リースは企業の設備投資の一環として用いられることが多く、会計上の固定資産として扱われるケースもあります。また、リース終了時には資産が戻るか、あるいは買い取るかの選択肢があるため、固定資産管理の観点からも重要な役割を果たしています。このように、リース業界は独自の仕組みと役割を持つことで、顧客の多様なニーズに応え続けているのが現状です。
現状分析：リース業界の最新動向と課題
市場規模と成長率の推移
リース業界の市場規模は経済環境や会計基準の影響を受けながら変動してきました。1991年には8.8兆円というピークを迎えたものの、その後はリーマンショックや税制改正などの要因で取扱高が減少しました。2010年には4.6兆円と最低水準に落ち込んだものの、直近では4兆3106億円（2022年度）に回復しており、DX推進や情報通信機器分野の需要増加が影響を与えています。特に情報通信機器関連が取扱高の約40%を占めることから、この分野が業界を牽引しているのが現状です。
主要産業分野でのリース活用事例
リースは多岐にわたる産業で活用されています。特に、情報通信機器やオートリースの分野では需要が増加しており、オートリースの保有台数は2025年までに約435万台に達する見込みです。また、脱炭素化に伴う再生可能エネルギー設備や電動車のリース需要も高まっています。さらに、近年の感染症リスクを受けて、サーマルカメラや遠隔監視システム、配膳ロボットなど次世代機器のリースにも注目が集まっています。これらは高額な初期投資を抑えるだけでなく、柔軟な導入が可能である点が企業に支持されています。
競争環境と低金利の影響
近年の低金利環境はリース業界にとって大きな課題です。企業が資金調達を自己資金で行いやすくなり、その結果、リース利用比率が低下しています。実際、企業のリース利用比率は2017年に30%まで下がり、現在も厳しい状況が続いています。また、大手企業間の競争や新規参入による価格競争も利益率の低下につながっています。一方で、情報通信機器やオートリースの分野では依然として需要が強く、こうした分野での差別化が競争環境での成功の鍵となるでしょう。
SDGsとリース業界：循環型経済への貢献
SDGs（持続可能な開発目標）における注目テーマである循環型経済に、リース業界は大きく貢献しています。リースは、製品の効率的活用とリユースを促進し、廃棄物の削減や資源の有効活用に寄与しています。特に、オフィス機器や電動車などは契約期間終了後に他のユーザーへ再提供される仕組みが一般的です。また、リース業界は企業の脱炭素化を支援するため、節電や再生可能エネルギー関連設備のリースも拡大させています。このように、リースは環境配慮を実現する手段として、持続可能な経済活動に欠かせない存在となっています。
リース業界の稼ぎ方：成功のための秘訣
収益最適化のための戦略
リース業界における収益最適化の戦略の核心には、効率的な運営体制を維持しながら、最大限の顧客満足を提供することが挙げられます。例えば、情報通信機器やオートリース分野では成長が著しく、これらの分野へリソースを集中させることで収益基盤を強化できます。また、既存のリース契約に付帯したメンテナンスや保守サービスの提供は、追加の収益源として重要です。さらに、低金利環境が続く状況下での柔軟な金利設定や、新規顧客へのインセンティブ提供なども有効な手段です。
新規顧客を獲得するためのマーケットアプローチ
リース業界の現状を踏まえると、新規顧客獲得にはターゲット市場のニーズを的確に把握することが必要です。例えば、脱炭素化やDX推進が叫ばれる現代では、環境に配慮した設備やデジタル化関連機器のリースが新たな需要を生み出しています。また、レンタル業界と異なる長期的なコストメリットや専門的なサービスを強調し、企業の設備投資負担を軽減する提案を行うことで差別化を図れます。地方企業や中小企業、さらには新興市場での営業活動を強化することも、新規顧客の拡大に効果的です。
M&Aによる事業拡大のメリットとリスク
リース業界の企業が収益を拡大する手段として、M&A（合併・買収）は非常に有効な方法の一つです。他の企業や市場シェアを取り込むことによって、規模の経済を活かすとともに、新たな技術やサービス分野を獲得するメリットがあります。例えば、成長が見込まれる情報通信機器や電動化車両分野の企業をターゲットにした場合、これらのセクターでの存在感を一気に強化できます。しかし、M&Aにはリスクも伴います。合併後の組織統合やコスト削減計画が順調に進まない場合、経営効率が下がる可能性があるため、綿密な計画が必要です。
デジタル化・AI導入による業務効率化
デジタル化とAIの導入は、リース業界の効率化を促進する鍵です。例えば、AIを活用することで顧客データを解析し、一人ひとりのニーズに応じた最適な提案が可能になり、新たな契約の獲得や顧客満足度の向上につながります。また、リース管理業務の自動化や契約書類のデジタル化によって、業務の効率を一段と高めることができます。特に、リース取扱高の多い情報通信機器分野では、デジタル技術の導入により迅速で正確な取引を実現することで、競争力を維持できます。これらの取り組みは、低金利環境でも利益を出しやすい構造の構築に寄与します。
未来予測：リース業界の方向性と可能性
グローバル化するリース市場
リース業界は国内市場を越え、世界規模での成長が注目されています。特に新興国市場での設備投資需要が増加しており、これに伴い海外展開を積極的に進める企業が増えています。現在、リース業界の海外事業は0.5兆円から1.2兆円規模まで成長しており、さらなるグローバル化の可能性を秘めています。また、国際的な脱炭素化の流れを受け、グローバル市場で競争力を高めるためには、環境対応型製品のリース提供が重要なテーマとなっています。
電動車や再生可能エネルギー分野における需要増加
近年、電動車の普及や再生可能エネルギー市場の拡大により、関連する設備や機器のリース需要が高まっています。特に、電動車のリースはCO2削減に寄与する取り組みとして注目されており、多くの企業がオートリースに注力しています。データによれば、2025年にはオートリースの保有台数が約435万台に達すると予測されています。また、再生可能エネルギー分野では、太陽光発電システムやエネルギー貯蔵システムの導入が増えており、こうした分野でのリース契約が市場拡大を牽引する見込みです。
DX（デジタルトランスフォーメーション）による変革
リース業界におけるDX（デジタルトランスフォーメーション）の導入は、業務効率化と新たなビジネスモデルの創出を後押ししています。特に、情報通信機器のリース用途拡大は、DX推進と深いつながりがあります。2022年にはリース取扱高の約40%が情報通信機器に関連しており、この傾向は今後も続くと予想されています。さらに、AIやIoTを活用した最適なリースプランの提案や、資産管理の効率化が進むことで、顧客満足度を高める取り組みが可能となります。
次世代技術とリース業界の統合
次世代技術の発展はリース業界にとって大きなビジネスチャンスです。AIやロボット技術を活用した機器の導入が進む中、企業は高額な設備を購入する前に試験的にリースで利用する傾向があります。例えば、配膳ロボットや遠隔監視システムなどは、企業が効率的に業務を進めるための重要なリソースとなっています。また、IoT技術を活用した設備のモニタリングやメンテナンスを含む付加価値サービスが、リース業界の差別化要因として注目されています。これらの分野の成長は、リース業界にとって大きな拡張の可能性を示しています。